草木を使ったあそび

草木がどのような食べものとして扱われていたかは、すでに「食べものとしての草と木」で述べた。草木は食べものだけでなく、子どもたちの遊びの対象でもあった。全国各地でいろいろな遊びがあるらしいが、越路ではそれほど種類は多くないかもしれない。

ヨシの葉をとって、それで笹舟を作るのは全国どこでもみられる遊びである。越路でもよくやった。ススキの花穂の茎の真ん中あたりを縦に4つに割いて、それに短い2本の茎を交差させて、水車代わりに使って遊んだ。冬になるとミズキの枝をとってきて、枝と芽になる枝の二又の部分をひっぱりあって、どちらが勝つか競った。また、オオバコの茎を交差させ、どちらが勝つか遊んだ。これは岩田ではズコズコと称した。スギナはツクシの栄養葉と呼ばれるが、スギナを上下に引っ張って、分離させ、それを再度、継ぎ戻す。どこでつないだか、わからないようにして、人に当てさせた。

最近は少なくなったが、越路で「おもて」と称する家の前の土の庭や道には、ハンミョウの幼虫の潜む穴があいている。幼虫はそこで、ほかの虫を捕食する。幼虫はなぜか、コウコウムシと呼んでいた。この幼虫をつかまえるために、スズメノカタビラの花茎をとって、穴に入れる。やがて、幼虫がその茎に食いつきはじめ、地上に出ている花穂が微妙にゆれ始める。それをゆっくりと上に引き出すと、幼虫がそこにかみついているという具合だ。

ほんとうはぜったいやってはいけない遊びもあった。土手の上にはチカラシバなどのイネ科植物が生える。そのなかに20から30センチメートル幅の道ができている。そこを人が通っていくわけだが、小道の両側に生えているチカラシバを結んで、歩いてくる人を困らせようというのである。ときに、転ぶことがあるため、おすすめできない遊びである。

越路でタマツバキと呼んでいるマサキやツバキの葉をとって、それを折りたたんで、それを口で吹いた。いわば、草笛である。ブーというような音がした。スズメノエンドやカラスノエンドウの実をとって、そこからさらに種子を取り去り、それを吹いて、音を出したり、スズメノヒエの茎を抜いて、吹いて音を出した。スズメノヒエのこのことから、ピッピグサと呼んでいた。

自然とのつきあい方は、地域がちがうと微妙にちがう傾向がある。同じ越路町内でも集落がちがえば、異なる。集落、集落で植物の呼び名が微妙に違うのもその例である。草木を使った遊びもたぶんそうだと思う。とうぜん、浦や塚山などでは、岩田と異なった遊び方をしているものと思う。(2001.8.21)

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