雪に適応した植物

越路町をはじめとする新潟の山々には、多雪環境に適応した植物がいろいろと見られる。太平洋側と日本海側とでは、系統的に非常に近い2種あるいは2亜種の植物が対になってそれぞれ分布している例が多い。たとえば、ヤブツバキとユキツバキがそうである。前者が表日本型、後者が裏日本型の植物である。ヤブツバキは高木になるが、ユキツバキは地面を這うようにして生育し、せいぜい1−2m程度の高さにしかならない。

針葉樹のカヤとイヌガヤも同じように、新潟では低木化する。それぞれ、チャボガヤとハイイヌガヤという名前の植物になる。かつて正月用の飾りに使ったというユズリハ。これは、太平洋側では高木になるが、日本海側ではエゾユズリハという低木である。日本海側のものをそのまま太平洋側に持ってきても、樹高が高くなるというものでもないらしい。今から20年も前に、京都の植物園を訪れたときに、ユズリハの高木が植栽されていた。その前に小さなエゾユズリハが植えられていたのが印象的だった。

アオキは新潟ではヒメアオキとなる。これらの植物はすべて冬も葉を落とさない針葉樹か常緑広葉樹である。低木化あるいは匍匐化するのは、低温や多雪という環境に対する適応だと思われる。寒い冬も雪のなかでは案外、暖かいようである。こうした適応を通じて本来分布していないような地域にまで、生息域を広げていったのだろう。

樹木のほかにも、草花でも特有の種がある。新潟では低地の里山にふつうにみられるオオバキスミレやオオイワカガミの近縁種は太平洋側ではいずれも高山にしか分布していない。このほかにも「日本海側要素」と呼ばれる、日本海側にしか分布していない植物も多くある。いずれにしても、植物が種の繁栄のために分布域を少しでも広げようとする能力には驚きである。(2001.1.6)

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