サツマイモとコウモリ

越路の里山には洞穴が多い。地元では、「よけど」と呼んでいた。「横井戸」の意味である。ちょうど防空壕のようなもので、あちことに掘られていた。この人造の洞穴は、サツマイモをはじめとする農産物を貯蔵するために使われていた。夏は涼しく、冬は暖かい。戦時中、食糧難のころに、サツマイモは救荒作物だった。しかし、薩摩芋というくらいだから、寒さに弱い。冬の寒さで芋が腐ってしまうことがよくあった。すると翌春、植付けができなくなるのである。種芋を土に埋めて発芽させた後は、その蔓を切って、挿し木にする。発芽したものを畑に植えていた。この「よけど」に貯蔵すると、腐り方が少なく、翌春まで保つことができた。何軒かの農家が共同で、使用していたようだ。

こうした「よけど」は一昔前の子どもたちの遊びの場でもあった。好奇心をそそる探検の場である。ろうそくをもって、「よけど」に入る。そうして遊んでいた。「よけど」には、コウモリが住みついていることがよくあった。それを手で捕獲して遊ぶことがあった。コウモリは夕方になると穴から出ていき、そして戻る。日中は穴の天井にぶら下がって寝ているわけである。越路にはコウモリが何種類かいて、家屋の屋根裏に住んでいるものもある。この「よけど」によくいたコウモリは何であったかは、よくわからない。ただ、集団では住みついておらず、1匹だったり、2匹だったりと少数でねぐらとしていたようである。

昔はよく子供たちは「山遊び」に行っていた。いまは、里山を歩いていても子供たちはあまり見かけない。いまでも「よけど」に入ってあそんでいる子どもたちはいるのだろうか。(2003.2.1)