鉄ちゃん・ミステリー・ルポルタージュ

 

第四章・それでも走る各駅停車

 

しかし、鉄道だけは違う。乗り物、つまり車両だけ買っても自由に動かすことはできない。

確かに線路はある。特に日本は充実している。しかし、走行料を払って、自由に自分の車両を動かすと言うことはできない。もちろん走行料さえ払えば自由に走ることができる、サーキットのような線路など、この世には存在しない。

そう、もし、鉄道を個人所有しようとすると、車両のほかに、それを走らせる、線路が必要なのである。

だからと言って、線路が短くては行けない。万が一、個人専用の鉄道を作ったとしても線路の長さがたった100メートルぐらいだと、スピードも出ないし、走らせられる距離も短くて、あっという間に飽きてしまうだろう。

乗り物である以上、スピードだって出したいし、もっと遠くまで行きたくなるし、長い間動かしていたくもなるだろう。線路をオーバルにすると言う手も有る。しかし、同じと所をぐるぐる回るだけでは、やはり、すぐ飽きてしまう可能性が高い。

また、乗り物である以上、海岸沿いや高原、山岳地帯など、いろいろな所を走ってみたくもなる。

自動車や、バスなどは、道路さえあれば、何処までも走れるし、海岸沿いや、高原、山岳地帯なども走ることができる。

航空機は広い大空を自由に飛べるし、船は広い海洋を何処までも自由に航行できる。

しかし鉄道の線路は違う、全て鉄道会社のものであり、ダイヤに沿ってきっちりと走らなければならない。完全に個人の楽しみの為に走るなどと言うことは、絶対に許されないのである。

つまり、自由に走れる線路は自分でひくしかないのである。

動かしたと言う実感、満足を得るには少なくともキロメートル単位の線路の長さが必要である。また色々な所を走りたいと思ったら、引かなければならない線路の距離もそれに比例して、増えていく。

これが新幹線やTGVのような高速鉄道になればもっとすごい、少なくとも100キロ以上の長さの線路と、車両が必要になる。しかも、鉄道と言うからには、ホームなども用意しなければならない、また、線路を引く土地を購入し、騒音問題なども解決しなければならない。

さらに鉄道と言うからには、操車場や、駅、都市部だったら複線化、田舎だったら、信号所、等等、いろいろな施設も作らなければならない。当然そこで働く人も、雇わなければならない。(外注は不可能だろう。たぶん・・・)

これを実現するには、気の遠くなるような金、おそらく、兆単位の金額が必要となる。

どんな大金持ちだって、この様なものを個人の楽しみのためだけにつくることはできない。

事実、古今東西、どのような金持ちでも完全に個人の楽しみの為に鉄道を引いた人間はいない。(ごく短いものならいるかもしれないが・・・)

そう、言い方を変えれば、鉄道こそは、この世で唯一私有することのできない乗り物なのである。

手に入らないからこそあこがれる。

誰だって、映画スターや、絶世の美女にあこがれる。

これも、手には要らないものだからに他ならない。

そう、鉄道こそこの世で最も高貴で、贅沢な乗り物なのである。

 

銚子電鉄と江ノ島電鉄