裏木戸通信12号
秘 境
何処か遠くに逃げたい。
いや、行きたい。
北海道だって近すぎる。
少なくとも、この日本から出たい。
アラスカ、シベリア、グリーンランド、南米のアマゾン、アフリカの密林奥深く。
とにかく遠くに行きたい。
しかし金がない。そう、この浮世に生きている限り何処か遠くに行くにも金がいる。遠くに以降と思えば思うほど、それに比例して、お金もかかる。
大体、何処へ行っても人間がいる。そう、誰もいないような、文字どうり人類未踏の辺境に行きたいのにである。しかし、今のことろ人類未踏の辺境など存在しない。必ず誰かが足を踏み入れている。誰も行った所がない島、いまだ探検されていない秘境などこの世には存在しないのである。
大航海時代などなら、現地人以外、誰も見たことろがない絶景や、秘境、未開の地、暗黒の所が多数存在した。
人類未踏の地、このフレーズに心引かれる。誰も行った所がない土地で、大冒険。
映画や、漫画、ゲームならいくらでもある。しかし、現実ではそんな事はない。
色々小うるさい規制やら、団体やら、法律やら、条約などが目白押し。
とてもじゃないが、遺跡や、墓場に入って、秘宝を盗み、美女を守り、現地の人間を右に左に切って捨てる等と言う事はできない。やったら、強盗殺人で捕まってしまうのが関の山である。
ならば宇宙ならどうか?
大宇宙なら、人類未踏の場所が腐るほどある。
しかし、これを実行に移すととんでもない金がかかる。
しかも、とんでもなく金をかけて、いける所はせいぜい火星ぐらいである。
SFであるように、宇宙狭しと冒険と探検を繰り広げると言う事は、事実上不可能だし、大体できるようになったとしても、少なくとも私は、白骨になっているだろう。そう、残念ながら、現在の人々がいける遠くは、限りがあるのである。少なくとも地球上のどこかでしかない。
大体誰かが行けると言う事は、他の人も、同じようにいけるということである。
やはり現実からは逃れられないのである。