裏木戸通信 １３６号
野蛮な黒人人をさらう？？
かつての人気漫画や、名作と言われた漫画が、文庫本サイズで復刊されるようになってから久しい。
最近は、
そんな人気が有った作品だったっけ？これ
とか、
名作かよこれが
なんて感じの漫画まで文庫本サイズで発行されるようになっている。
で、その文庫本サイズのなつかしの漫画。2，3ヶ月前だが、Drスランプの文庫本サイズを書店で見かけたので、懐かしさもあって、全巻買ってしまった。
昔と変わらず面白かった。が、一部昔読んだ物とほんの少しだが変わっていた。
「クレイジーハネムーン」という、念願かなって？憧れの山吹先生と結婚したセンベイの新婚旅行の話の回である。
覚えている方もいると思うが、この話の冒頭、山吹先生はさらわれる。で、子供の頃読んだバージョンでは、山吹先生をさらうのは、腰蓑をつけた、肌の黒い小人であった。それが、文庫本版では、黒い猫形人間？見たいなのに変わっていた。
訂正された理由は、推測するしかないが、恐らく「黒人差別に繋がる」とかいう理由ではないだろうか？
ストーリー的には、全く問題が無いと思われる訂正だろうが、何となく気になった。
復刊ブームの昨今、
かつて許された表現で、時代にそぐわない（と思われる）物をどうするか？
と言うのは、案外問題になっていると言う。
オリジナルの物を残す為に、そのままにするか、それとも、時代にそぐわない表現は、過去の作品でも、復刊を期に訂正するか。作者が存命ならば、作者と相談して、作者の意思を尊重しながらやればいいが、作者が故人の場合は、頭が痛い問題だと思う。（個人的には、例え差別的表現が有っても、できる限りオリジナルの表現を残すべきだと思う。）
漫画にでて来る表現を巡る議論は、これら、復刊された漫画が、連載されていた頃の昔から色々なされている。
日本の漫画は、残酷な描写が多い。
と言うことは、私が生まれる前からなされていたと言う。
漫画内の差別的表現を始め、過度の暴力描写、読者層の年齢にそぐわない過激な性描写など。に対する議論や､規制は昔から行われていたと思うが、特に最近、描写に対する規制がうるさくなってきていると言う。
本当に五月蝿くなって来ているのかどうかは、判らないが、「そんな表現まで規制されるの？」と思う話は、時々耳にする。で、それらの規制等を行う場合、大抵言われるのが
子供への悪影響
のような気がする。
漫画が持つ子供への影響力を否定するつもりは無い。
私も、子供の頃、漫画から発生した流行り言葉を喋ったし、北斗の拳の真似事とかだってした。時代によってどんな影響を受ているのかは判らないが、少なくとも、日本で生活している限り、漫画の影響から、子供を完全に隔離する事は出来ないと思う。だから、漫画の影響力について、考える事については異論は無い。
だが、それを考える事、イコール、表現に規制をかける事、では無いと思う。
漫画は子供が成長する過程で接っして影響を受ける色々な物のうちの一つに過ぎない。
子供が一番影響を受けるのは、漫画じゃなくて親であろうし、学校の先生、友達、本、遊び、社会、環境、etc、etc。上げ連ねたら限が無い色々な物から影響を受ける。
が、何故かこれらの内で、漫画や、テレビ等の影響だけは、必要以上に叫ばれている様な気がしてならない。
（個人的な偏見かもしれないが、漫画を、悪書、下らない物とみなす人のほうが、表現規制について、五月蝿いような気がする。本当に下らない物なら、其処からは、大した影響は受けないと思うのだが・・・）
確かに、明らかに悪意のこもった差別的表現等は、規制してもいいと思うが、行き過ぎた規制は、やはりいただけない。
昔許された表現が今は許されない。
と言うが、それは、裏を返せば、昔は、残酷なシーンとか、差別的なシーンが許されていたと言う事ではないだろうか？
じゃあ、昔の子供は、切れ易かったし、その漫画を読んで育った今の大人は、差別意識の塊だったりするのだろうか？
違うでしょ。（恐らく）
大体、「切れ易い子供」とか、言われて問題に成っているのは、何だか、「規制が五月蝿くなった」と言われるようになった後の漫画を読んで育った世代のような気がするのですが。
漫画の影響力は確かに大きいかも知れないが、その影響力は、そのほかの影響力で十分フォロー可能な範囲内だと私は思う。
で、そのフォローを行うのは、漫画が子供に与える影響力を考えるのと同じく、回りの大人の責任だと思う。
それに、規制されている表現は、その殆どが、暴力描写、性描写、差別的表現にのみ集中しているような気がする。漫画の影響とか言うのなら、珍走団や、それに類する連中を美化している漫画はどうなるの？あの手の漫画は世に溢れているような気がするのだが・・・・・・・・・・・・
規制や、そのかけ方について色々な意見があるのは判るが、今の行き過ぎと言われている規制は、結局の所、大人の逃げのような気がしてならない。些細な表現に規制をかける以前に周りの大人が、やれる事は､まだまだあると思う。