裏木戸通信 137号

 

正義の味方の名の下に

 

 

 

ある日怪獣がやってきた。

怪獣は暴れて、街が壊されてゆく。

自衛隊が出動するが、全く歯が立たない。

で、その様な事態に対応する為の正義のチームが出撃する、が、彼らの攻撃も役に立たない。

と、そこへ、宇宙の彼方から、正義のヒーローが現れる。

怪獣とくんずほぐれつの死闘を制して、怪獣はやっつけられて、街には再び平和が訪れました。

めでたし、めでたし

 

 

と言うのが、某有名正義の味方番組の、大まかな流れである。

 

 

悪が暴れる

歯が立たない、既存の治安機構

正義の味方が現れる

戦う

悪がやられてみでたしめでたし

 

子供の頃大好きでした、私も。この手の番組。いや、誰だって隙であった時代があっただろう。で、ある年に成ると、色々おかしな所なんかを、突っ込むようになってくる。

例えば

 

 

怪獣にやられた家はどうなるの?

 

 

そう、怪獣が暴れて、ビルが壊れる、街が焼ける、家がつぶれる、自然が壊れる、etc、etc。

まず、人的被害だって相当な物であろうし、例え避難が上手く行って、人的被害は皆無だったとしたって、経済損失は、大変な物のはずである。

テレビには出ていないが。

 

 

「あーーーーー、まだローンが35年残っているのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

 

と、怪獣に踏み潰された家の近くで号泣しているお父さんだって居るかもしれない。

 

 

これは一体誰が保障するのだろうか?

 

 

いや、怪獣にやられたのなら、まだ救いがあるかもしれない。正義の味方にやられて、多少、鬱憤が晴れるかもしれないんだから。これが、怪獣を倒す為に戦っている正義の味方の為に壊されたら?

街中で暴れる怪獣を倒す為、同じく街中で戦う正義の味方。その足元で、踏み潰されてゆく、車や、家々。まだ、ローンが残っている、狭いながらも楽しい我が家は、平和を守る為と言う、大義名分の影で・・・・・・・

この場合、泣くに泣けないであろう。

ま、この手のことは、同じような番組で、取り上げられる事も在るし、ギャグ漫画や、エッセイ、その他諸々の分野で、手垢が付くほど取り上げられてきた事ではある。それらの中には、真面目に議論し、真面目に考えている物もあれば、ただ単におふざけで、終わっている物まで、多種多様である。

まあ、怪獣が現れるなんて現実には無いことだから真面目に考えるだけ、損な事かも知れないけれども、万が一現実に起こったら、やっぱり自然災害って事で、泣き寝入りしかないのだろうか?(正義に見方に踏み潰されても)

例えば、私の住んでいる所が、怪獣の火炎放射で、燃え上がったら?やっぱり誰かに保障して欲しい。ちんけな物が殆どとは言え、私にとってはかけがえの無い財産である。

 

 

「野良犬に咬まれた物と思って諦めてください」

 

 

なんていわれたら、ぶちきれて、私が暴れてしまうかもしれない。

いや、それ以上に、正義の味方が、怪獣を倒す為に、「ジュワ!!」とか言って、その煽りを食らって、私の部屋が壊れたら。

 

 

 

「有難うウ○ト○マン」

 

 

私の部屋は犠牲になったが、彼のお陰で、災害が広がる事は防がれ、結果、平和は守られた。と自分に言い聞かせて、笑顔でお礼が言えるだろうか??

 

 

 

無理!!

 

 

絶対無理。

 

 

俺の全財産返せこのやろう(滝涙)

 

 

と、空き缶の一つぐらい投げてしまいそうである。

あと、いわゆる、正義の組織。なんと言うのか、役に立っている所は余り見たことが無い。

怪獣、怪人に苦も無く捻られ、正義の味方頼みで、事件は解決。

「不要論」とか、「見直し論」とか出ないのか?あの世界では。

まあ、相手が遥かに進んだテクノロジーを持った、悪意ある宇宙人。とかだったら、まだ、仕方ないのかもしれないが、怪獣だった場合、「もう少し、やり方があるのでは?」と思う。

大体、帰ってきたウルトラマンあたりからの正義の組織なんか、役に立たないばかりか、毎回毎回、戦闘機を撃墜されていると言う体たらく。あの航空機が一機幾らなのかは知らないが、あんな組織を維持する為に税金使うのなんか、はっきり言って、税金の無駄遣い以外の何者でもない。私が首相だったら、装備を含めた、組織の大幅見直しか、潰すかのどっちかにするね。

まあ、これも、散々ネタにされてきた事ですが・・・・・・・・・

暴れる怪獣、壊されてゆく町々、すると向こうから、爆音も高らかに正義のチーム所属の戦闘機がやって来る。僕らの街を守る為に。果敢に攻撃をかける正義のチーム。しかし、怪獣には全然効果が無く、逆に撃墜される戦闘機。相変らず破壊を続ける怪獣。墜落した航空機もどこかに落ちて、二次被害は出しているだろうが、そんな事を気にしている場合ではない。で、そこに正義の味方が現れて・・・・・・・

最初や、二回目、三回目ぐらいなら、果敢に立ち向かう正義のチームに喝采も上がるだろうし、歯が立たなくっても、文句は余り出はしないだろうが、あの世界では、ほぼ、毎回毎回こんな感じである。これが十回目とか、15回目とかになると、喝采も上がらなくなるのではないだろうか?

暴れる怪獣、破壊される町々、で、爆音が響いて、正義のチームの戦闘機がやって来る、が、攻撃は、勿論利かない。「撃墜される前に、さっさと帰ってくれ!!」とか、「その分の金を復興経費に注いでくれ!!」と、下では、被害にあった人々が口々に叫ぶ。が、撃墜されてしまう戦闘機、脱出するパイロット。

俺が、被害者だったら、税金の無駄遣いしたパイロット憂さ晴らしにたこ殴りにするね。

が、幸いな事に、この世に怪獣は居ない、だからこのような事は起こらない。

正義という名の元で、泣く人が居る事と、税金が無駄遣いされ続けていることを除けば。

 

怪獣大行進