裏木戸通信44号

 

水上バス

 

このところ、何回か水上バスに乗った。

現在の職場の近くに、水上バスの乗り場があるというのがその理由である。

水上バスにのり、汚れきって、周りには、自然の殆ど無い、人工物ばかりの、東京湾を進む、半中年。手にはデジカメ、周りの風景を所構わず撮り続ける。其の姿は、まごう事無きお登さんである。

しかし、日ごろ見慣れた、建物や、風景を、海から見ると、また違った風に見え、これはこれで中々良い物でもあったりする。それに、なにやら、短時間であるが、浮世から離れた気分にもなれる。海の男。という気分にもなったり出来て、安上がりな精神構造をした私にとっては、中々面白い乗り物である。

東京湾にはいろいろな船が行き交う。

水上バスのような、観光汽船、個人のプレジャーボート、艀、大型の輸送船。

大型の船なぞは、間違えなく東京湾を抜け、太平洋に向かってゆくのだろう。水上バスに乗ると、その様な船の乗組員になって、太平洋を航海したくなる。大型船は、やはり、男心をくすぐる何かを感じる。いくら、航空機や、車が発達したからといっても、やはり、水運は、輸送の大切な一翼を担っていることに変わりは無い。特に、海外に物を運ぶときは、船が主力になるだろう、航空機では大型のものは運べない。やはり大型のものの輸送はいまだに船が主力である。

まあ、洋上輸送で、いまだに船が活躍していることは、別に驚くことではないかもしれない。洋上輸送が、時たま、一昔前の主役、などと思われることもあるが、それは船が、人を運ばなくなり身近に感じなくなったからではないだろうか?

今、人を運ぶ船は、水上バスのような、観光汽船だったり、豪華客船による、観光クルーズ、カーフェリーによる、車と一緒の移動、何らかの理由で、飛行場を作れない離島への移動手段ぐらいのものである。昔のように、太平洋航路、大西洋航路などで、各国の威信をかけた、大型客船による、輸送合戦などは今では古きよき時代の話である。しかし、いまは、大西洋を横断したり、太平洋を横断する定期航路は存在しない。海外、よその国へ、人を運ぶ主力は航空機である。航空機は、早い。世の中はスピードを求める。早いに越したことは無い。船で何日もだらだら進むよりも時間の節約になるし、効率的でもある。

しかし、快適かどうかは意見の分かれるところかもしれない。船の一等船室などは、超豪華である。しかし、航空機よりも遥かに高くはつくが、しかし、三等船室は安い、しかし、快適とはほど遠いいありさまである。しかし、それでも、人一人が占有できる面積は、飛行機の、エコノミークラスよりは広いのではなかろうか?少なくとも、クラスごとの快適性は、船の方が上なのではないだろうか?また、旅情は、船の方が圧倒的にあると思う。長い船旅で、人と交流したり、色々これからのたびに思いをはせたり・・・・・

飛行機が船より勝っているのは、スピードと、効率だろう。

しかし、世の中、快適さ、旅情よりも前者が優先される。

旅情に浸りのんびり船旅をしたいときはどうするか?

高い金を稼いで、豪華客船のクルーズにでも参加するしかない。

 

少々気分が乗らない今日この頃