裏木戸通信46号
観覧車
葛西臨海公園前に大観覧車が現れた。
なんでも日本一のでかさだそうである。
しかし、この観覧車、ある意味実に不自然である。
なぜか?
だって、観覧車だけなんだもん。
葛西臨海公園駅前は、その名の通り、臨海公園のまん前にある。
駅の前は、いきなり、緑の芝生がまぶしい公園になっている。
したがって駅前に何も無い。
駅からしばらく歩くと水族館がある。休日などは、家族ずれや、カップルなどで結構にぎわう。その証拠になるかどうかは輪から似が、平日は、快速が通過してしまうこの駅も、休日には、快速がしっかりと停車する。
しかし、それでも、この観覧車には、えも言えない違和感を感じる。
元々、観覧車は、遊園地にあるものでしょ?
いや、こういう固定観念を持っては確かにいけませんがね、でも、葛西臨海公園は、舞浜駅の隣に有るんですよ。
そう、あの日本最強のデートスポット、
東京ディズニーランドが隣にあるんですよ。
誰だって思うはずです。
何故ディズニーランド内に作らないの?
日本最強のデートスポットに、日本最大の観覧車。
これならわかる。ディズニーランドの最強度がさらに上がること請け合いである。
夜、日本最大の観覧車に乗るバカップル、東京ディズニーランドの美しい夜景を見ながら、愛を語り合う、限られた時間ながら二人っきりの甘い時間。
ロマンティックである、なにやらいいじゃないですか。こっちの方が、絶対客が入るでしょ。
さらにである。葛西臨海公園から、ものの10分も行けば、同じように強力なデートズポット、お台場があるのである。しかもここのビーナスフォートには、観覧車まであるのである。
お台場に観覧車はわかる。元々デートスポットなんだし、夜景も綺麗である。
しかし、葛西臨海公園は違う。
昼間は、確かに、芝生の緑が眩しいが、
それしかない!!
そう、それしかないのだ。
最大の観覧車に乗るカップル。見えるのは、緑の芝生、さらに、遠くに、スモッグにかすんで、何と無くディズニーランドが見える、お台場も見える。
「こんな物に乗らずにあっちに行けばよかった・・・・」
今までの甘い雰囲気も一気に吹っ飛んでしまうであろう。せっかく楽しかったデートが、一気に最悪のものになってしまう。
夜間に乗ったら、その最悪さにターボがかかること請け合いである。
葛西臨海公園は、街灯が少なく、結構暗いのである。
目の下に広がる暗い空間、その先に見える夢の国、ディズニーランドの夜景。さらに、その反対側には、幻想的な夜景を見せるお台場。
「遠くの夜景が綺麗だね」
そういう彼氏にポツリとつぶやく彼女
「あっちの方が楽しそう」
恋人を喜ばせ様と、この日本最大の観覧車に乗せた、彼氏の面目は、丸つぶれである。
おそらく、数年後には、
「ここでデートしたカップルは、破局する。」
と言う、井の頭公園もはだしで逃げ出すデートスポットになること請け合いである。
「こんなところに、観覧車を作らなければ、静かなデートスポットのままだったのに・・・・・」
数年後、水族館の関係者はぼやくだろう。
しかし、あえて言いたい。
ここに日本最大の観覧車を作った方、貴方は間違いなくあなたは漢です。
この罪深き、デートスポットだらけの京葉線沿線に、あえて、逆デートスポットを作った貴殿の勇気と慧眼に敬意を表します。