裏木戸通信6号
徳政令
デパートのそごうの900億にのぼる債権の放棄が決まったそうだ。政府の御意向による借金の合法的な踏み倒し。借金の合法的な踏み倒しを決めた理由は「影響が大きいから。」だそうだ。
しかし、どう考えたって、銀行が潰れるほうが影響は大きいと思うのだが・・・・・・
拓銀が潰れたおかげで北海道の経済はかなりの打撃を受けたと言う、はっきり言って、そごうが潰れたって、拓銀などの銀行倒産に比べれば遥かに打撃は少ないはずだ。変わりのデパートなぞいくらでもあるのである。
大体日本の産業を支えてきた中小企業はばんばん潰れて行っているのである。産業の空洞化はどんどん深刻化していく。そっちの方は救われず、そごうなどというどうでもいいデパート救済される。しかも借金を踏み倒して。この踏み倒された分の付けはいずれ国民に来るのであろう。
政府の意向で合法的に借金を踏み倒す。実はこの様な政策は昔からとられていたのである。
「徳政令」
と言い、平たく言えば、ありとあらゆる貸し借りを帳消しにしてしまうと言う法律である。
この法律が施行されたのは、借金に苦しむ武士を救うためである。特に鎌倉末から、室町初期にかけて、頻繁に出され、「近ごろ都にはやるもの・・・・」と落書きされたほどである。(歴史の教科書などでご存知の方も多いでしょう)
ある歴史小説にこんな話が出ていた。
室町初期のあるとき、都で宿屋を営む夫婦が、近じか徳政令が出るという話を聞き、宿泊客から、金目のものを上手く言いくるめて借り上げた。数日して徳政令が出ると、宿屋の主人は宿泊客を集め、「徳政令が公布されたので、皆から借りたものは天下の法により返すことは出来なくなった。」と言った。宿泊客は激怒して、やどの主人に詰め寄ったが、「文句があるならお上に言えば良い。」の一点張りで取り合おうともしなかった。
すると宿泊客の中の知恵のある男が「なるほど、天下の法とあらば、致し方ない。貸した物はあなたの物になったと諦めよう。」宿の主人は我が意を得たりとほくそえんだが、次の男の言葉を聞いて驚き慌てふためいた「この宿は我らが借りたものゆえ、我等の物である。よって早々に出て行ってもらいたい。」宿の主人は抗議をしたが、知恵のある男は「文句があるのならば、お上に言えば良い」といって取り合わず、宿の主人の態度にはらを立てていた宿泊客たちに袋叩きにされ追い出された。
宿の主人は途方にくれ、役所に届け出たが、宿の主人のあまりにも意地汚い態度に腹を立てた役人は、宿泊客の意見を聞き入れ、結局その宿屋の夫婦は宿屋を取り上げられ路頭に迷い、野垂れ死にしたと言う。
そごうの今回の措置もいわば徳政令である。しかし昔と違うところが一点だけある。帳消しになったのはあくまでもそごうの借金である。
そごうへの借金、つまりローンなどの残高は帳消しにはなっていないのである。
自分の借金は帳消しで、自分が貸している物はそのまま。
なんだか釈然としない。
どうせやるならそごうへの借金も帳消しにして欲しかった。