症例5 肺吸虫症

35才の女性が生ガニ入りキムチを食べた後、頭痛、悪寒、気分不良、皮下硬結を認め入院となりました。項部硬直(首が硬くなり曲がらなくなること)を認め、脳髄膜炎が疑われました。

血液検査では白血球が増加し、好酸球という特殊な白血球(アレルギーや寄生虫の病気で増加する)が特に増えていました。腰から脳脊髄液をとって調べますと、やはり好酸球が著明に増加していました。

胸のレントゲン写真では右肺に気胸(肺が破れること)と胸水を認めました。寄生虫の病気ではないかと検査をすすめていましたら、皮下の硬結が毎日少しづつ移動するのに気づきました。硬結部位を切開してみると、約1ミリ大の寄生虫を発見しました。

熊本大学医学部寄生虫学教室でウェステルマン肺吸虫であることが判明しました。右の写真が切開して取り出した約1ミリ大の肺吸中です。おそらくキムチに入れた生ガニのなかに川ガニが含まれており肺吸虫の幼虫を食べ感染したものと思われます。肺吸虫の幼虫は小腸壁を経て主に肺に至りここで成虫になる様です。この肺吸虫は時々頭蓋内にも進入して髄膜炎等を起こすようです。

おもしろいのは、皮下に進入した寄生虫が毎日おなかやむねの皮膚の下を移動していくことです。すべて摘出するのは困難で、ビルトリシドというお薬を飲んでもらえば治ることが多いようです。この患者さんもこのお薬を飲んでいただき完治いたしました。淡水産のカニは寄生虫が多く注意が必要です。