おっさんのつぶやき4

聴診器

我々医師の商売道具に聴診器というものがある。
そうそう、みなさんも御存知と思いますが、
お医者さんが首からえらそうにかけているあのなが〜いひもみたいな道具です。
あれを首からかけていると何となくお医者さんという感じがしますよね。
みなさんはあれで何が聞こえるのだろう、何がわかるのだろう、
と考えたことありませんか。
私も子供のころは大変興味がありました。
でも誰に聞いても何が聞こえるのか具体的に教えてくれる大人はいませんでした。
「きっと心臓の音がするのよ」「肺の音がするんじゃない」
「あれで癌がわかるんだよ」「胃潰瘍がわかるんじゃない」
「盲腸の時もあれ使っていたから盲腸がわかるんじゃないかな」
「胃潰瘍の音ってどんな音だろ〜」
いろんなことをみんな言っていましたが結局誰も明確に説明出来ませんでした。
(私の親戚知人に一人も医者はいませんでしたから)
結局、この疑問は私が医者になってはじめて解決しました。
聴診器を持っていると何となくえらそうに見えますし、
患者さんにとっても聴診器をあててもらわないと、
ちゃんと診察してもらってないような感じになるようです。(特に内科は)
この聴診器とはいったいどんなものかと言いますと、
結局単なる拡声器みたいなものなのです。
先端の丸いものには膜がついていてこれをからだのあちこちにあてると、
体のいろんな音がよく聞こえるだけなのです。
聴診器をはめてこの膜を指でビンとはじいてみると、
ビン!!と聞こえるだけです。
変なことすると耳がつぶれそうになります。
左の胸にあてると心臓の音がよく聞こえます。ドクッ、ドクッ、ドクッ、ドクッ!!
循環器科のドクタ−は細かい心臓の弁の動く音を判断して心臓病の状態を確認します。
呼吸器のドクタ−は喘息や気管支炎、肺炎の音を聞き分けます。
でも結局詳しく知るためには心臓のエコ−やレントゲン、
CTスキャンを撮らなければなりません。
医療機器が発達してなかったころにはたいへん大事な診断機器だったはずですが、
現代のように高度医療診断機器が発達している世の中で、
この聴診器の役割は変わりつつあります。
私にとってはこの聴診器はひとつのアクセサリ−、
患者さんとのコミュニケ−ションの道具になっています。
(こんなこと言うと循環器科や呼吸器のドクタ−に叱られますけど・・・)
もちろん心電図や心臓エコ−、レントゲン、CTスキャン等の検査をするかどうかの判断のためには大変重要なアクセサリ−(いやいや、診断機器)です。
高度医療機器がない状況下(僻地、飛行機の中など)では
もちろんとっても大切な診断機器です。
私も聴診器が単なるアクセサリ−にならないように、
日々の診療で努力しようと考えますが、やっぱり私はだめです。
ついつい高度医療機器に頼ってしまうだめな医者です。
私の診療を受ける患者さんは、ドクタ−Yの聴診器はアクセサリ−と思って下さい。
「最終的にちゃんと診断がつけばいいじゃない。」と毎日自分に言いわけしています。

でも、患者さんはよくいわれるんですよね〜 聴診器あてたあとに
「やっぱり私は癌ですか?」  そんなこと聴診器で分かるもんか!!
患者さんにとっては直接体に触れることもあり、
やっぱり大事なありがたい診断機器のように感じるのでしょうね。

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