第103回

子宮内膜症について

01.1.8

子宮内膜症について

1.子宮内膜症とはなにか?

子宮内膜は、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の影響を受け、健康な女性の場合、約28日の周期で、増殖と剥離、排出を繰り返しています。排出が、すなわち月経です。
月経が終わると、子宮内膜がしだいに厚くなる増殖期に入ります。
そのうちに卵胞が成熟して排卵が起こると、卵巣には黄体という組織が作られ、プロゲステロンを分泌します。このホルモンの作用で、内膜から分泌物が出るので、この時期を分泌期といいます。
内膜が厚くなったり、分泌物が出るのは、すべて受精卵を迎え入れる準備です。妊娠が成立しなかった場合、内膜の一部がはがれて出血し、膣から体外へ排出されます。
子宮内膜症とは,本来,子宮内腔にしか存在しないはずの子宮内膜や子宮内膜様の組織が,子宮以外の場所(卵巣・ダクラス窩・S状結腸・直腸・仙骨子宮靱帯・腟・外陰部・膀胱・腹壁・へそなど)にできる病気です。
子宮以外の場所にできた子宮内膜も,本来の子宮の周期と同じような変化が起こります。つまり,月経期になると子宮以外の場所にできた子宮内膜も剥離・出血しますが,血液や内膜を体外に出すことが出来ず,体内に溜まります。結果,チョコレート嚢胞(血液の古くなったものがチョコレ−トの様にみえる)が出来たり,諸臓器との癒着が起こります。子宮内膜症の80%位の人にチョコレート嚢胞が見られます。
生殖年齢の女性の少なくとも5%に,子宮内膜症があると言われています。妊娠したことのない女性に多いことも知られています。
原因は不明ですが,月経時に剥がれ落ちた子宮内膜の一部が,卵管を逆走して卵巣や腹部臓器に達して増殖するという説が最も有力視されています。その他に生まれつきという説もあります。

2.どんな症状がでるのでしょうか?

子宮内膜症は全く症状のない人もいますが,子宮内膜症の症状は内膜症のある場所,大きさ,癒着の程度などにより異なります。共通してみられる症状は激しい月経痛で,初経後数年間はそうでもなかったのに,ある時期から強くなり,だんだん強くなるという特徴があります。
月経痛以外に月経困難症,過多月経,不正出血,性交痛,月経時以外の腹痛・腰痛などもみられます。さらに進行すると不妊なども起こります。
部位による症状の違いは以下のようです。
〔卵巣内〕チョコレート嚢胞によりお腹がはった感じや下腹部痛がみられます。チョコレート嚢胞が破けると激しい腹痛がみられます。
〔卵巣表面〕強い月経痛がみられます。
〔卵管内〕不妊や激しい痛みがみられます。
〔ダグラス窩〕内膜症が仙骨子宮靱帯からダクラス窩にかけてあると癒着が起こり,性交痛がみられます。
〔直腸〕月経時に排便痛があり,進行すると排便障害を起こします。
〔小腸〕軽症では漠然とした下腹部痛がみられます。酷くなると通過障害や腸閉塞まで起こり,下血や血便がみられるまでにもなります。
〔膀胱〕血尿がみられます。

<よくみられる症状>
1.月経痛(下腹部痛・腰痛・排便痛など)
2.月経時以外の下腹部痛
3.性交痛
4.不妊

3.診断はどのようにするのでしょうか?。

 年齢や症状,内診と直腸診,超音波断層法検査,CT検査,MRI検査,腹腔鏡検査などを駆使して診断します。なかでも確定診断と進行状況を診断するには,腹腔鏡検査が不可欠です。腹腔鏡検査は腹部の3〜4箇所に小さな穴をあけ,直接お腹の中を観察する検査です。
 

4.治療はどうするのでしょうか?。

薬物療法(ホルモン療法)と外科的治療法があります。年齢・妊娠希望の有無・自覚症状の程度・病気の広がりなどで治療方法が異なります。
症状が軽く,妊娠を希望しない人には非ステロイド性抗炎症剤で痛みをとる対症療法が行われます。
ホルモン療法としてはGnRH誘導体やエチスナロン誘導体(タナゾール)が用いられます。両者とも女性ホルモンの分泌を抑制し,人工的に閉経状態を作り治療する方法です。両者共に骨粗鬆症・男性化・肝機能の異常などの副作用があり,慎重に投与され,長期服用は好ましくありません。服薬を中止すると再発することもあります。
外科的治療法は薬物療法が効果がない人や重い人に行われます。具体的には単純子宮全摘術・卵巣摘出術・卵巣嚢胞核出術などがあります。よく専門医と相談して治療法を決めることが大切です。

5.子宮内膜症らしい症状がみられたら

子宮筋腫,卵巣嚢腫,子宮腺筋腫などが鑑別を必要とする疾患の代表です。月経異常などがみられたら産婦人科の医師を訪ね,しっかり原因をみつけて貰うことが大切です。早期発見は早期に苦痛から開放してくれます。


参考:医師会雑誌

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