第133回

失語症、失計算の症状で発症した35歳女性

01.6.4

失語症、失計算の症状で発症した35歳女性

バセドウ病で治療中の35歳女性が1ケ月前より異常言動が始まりました。
問いかけに対して意味不明の返事をする、頼んだことは出来るのに返答しない、などの症状が出現しました。
しかし、軽い症状で日常生活には大きな障害にはなりませんでした。
自分でやるべきことはきちんと出来ていました。
1週間前より頭痛を自覚したため家族が心配し私の病院に受診しました。
CTスキャン上、左大脳半球に脳梗塞を認めました。
35歳という若い年齢での脳梗塞のためMRIをすぐ撮りました。
MRI上も同じく左大脳半球に脳梗塞像を認めました。
MRA(MRIを使用した血管撮影)では左の中大脳動脈が閉塞していました。
血管造影検査でも左の中大脳動脈の閉塞、脳血流検査で左の中大脳動脈領域の著明な血流低下を認めました。
検討会の結果典型的ではないが「もやもや病」に類似した病態が考えられるとして、落ち着いたらバイパス手術の適応という結論になりました。

1ヶ月前に起こった症状はおそらく脳梗塞に伴う失語症と思われます。
家族の会話を理解しても意味不明の言葉が出ていた可能性が高いと思われます。
話したい事がうまく言葉で話せない状態です。
また計算能力も極端に低下していました。

今後反対側である右側にも同様の所見が出現したりもやもや血管が出現する可能性があります。
そのためにもバイパス手術を行なう予定です。

MRI T2 画像

左大脳半球に脳梗塞を認める


MRA

左の中大脳動脈起始部の閉塞(↑)を認める

もどる