ラジカット<脳保護剤(フリ−ラジカルスカベンジャ−)>の使用経験
6月1日三菱東京製薬から脳保護剤(フリ−ラジカルスカベンジャ−)であるラジカット(エダラボン注射剤)が発売されました。この薬は世界初の脳保護剤で、脳梗塞急性期に伴う神経症候、日常生活動作障害、機能障害を改善する効果があります。早速使用してみましたので使用経験について書きます。
心房細動という不整脈を持った72歳男性が庭で仕事中倒れているのを奥さんが発見しました。
この男性は心房細動からの軽い心原性塞栓症の既往があり外来で治療中でした。しかし、お薬の服薬状況はあまりよくなかった様です。倒れてからほぼ1時間以内に私の病院に救急車で搬送されました。搬送されたときの症状は、左半身の完全麻痺、意識障害でした。心電図上心房細動を認め、
CTスキャンでは異常なしでしたので塞栓症の超急性期と考えヘパリン(抗凝固剤)の点滴、ラジカットの点滴をしながら高気圧酸素治療を行いました。すると酸素治療中に著明な症状改善が認められました。片麻痺は完全に消失、意識状態も改善しました。MRIで検査すると右の中大脳動脈領域に新しい梗塞像を確認しました。しかし運動神経は障害されておらずほとんど障害を残さずに回復しました。ちょっとうまくいきすぎた症例ですが、脳梗塞の周囲の脳浮腫の部分で次々に障害が広がっていくのを食い止めた可能性はあると思います。第1例目は非常に経過がよくうまくいきました。この薬は他の薬と作用機序が異なり、また副作用が少なく使いやすい薬と思われます。今後たくさんの症例で使用経験を増やしていきたいと思います。