第161回

不眠症と睡眠薬

01.8.2

不眠症と睡眠薬

不眠・・・・・・たいへん多い症状です。
私の外来にもこの不眠症でたくさんの患者さんがみえられます。

不眠を訴える患者さんには睡眠薬がよく処方されますが、けっこうこの薬に対する誤解が多いようです。
それでこの睡眠薬に対する正しい知識を持ってもらうために今日は睡眠薬ついて簡単に解説します。

最近の睡眠薬は、以前のものとは違うのでしょうか?

不眠症の治療薬として最初に開発されたのは、バルビツ−ル酸系の睡眠薬でした。
この薬はよく眠れたのですが、大量に内服すると死亡するとか、長期服用すると習慣になりやめられなくなるといった欠点がありました。
現在はいろいろと研究された結果、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が主流になりました。
バルビツ−ル系に比べて安全性が高いのです。
現在の睡眠薬はほとんどがこのベンゾジアゼピン系です。
ですから最近の睡眠剤は昔のものとは全く違います。

のみはじめると癖になるのでしょうか?

患者さんと睡眠薬の話をするとよく習慣性についてたずねられます。
睡眠薬は一度のみはじめると癖になってやめられなくなるからと思って、服用をためらっている患者さんが多いようです。
そしてみなさんに共通しているのは、睡眠薬をのまないでぐっすり眠りたいと思っていらっしゃる様です。
しかし不眠症という病気を治すには一時期薬の力を借りるのも必要な事なのです。
病気が治れば薬は必要なくなるのです。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は依存性が少なく、通常やめられなくなるということはありません。
もちろん正しくやめるには、徐々にのむ量を減らしてゆくことが大切で、突然やめるとかえって不眠症を悪化させることもあります。自己判断ではなく主治医に相談しながら減量中止を考えることが大切です。
ただ、不眠症にはさまざまなタイプがあり、中には治らないものもあります。
このような方は無理に睡眠薬を中止する必要はありません。必要最低量をのみ続けてもほとんど問題ありません。

最近の睡眠薬の副作用は何でしょうか?

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は医師の処方通りに正しく内服すれば安全な薬ですがいくつかの副作用もあります。

「眠気、ふらつき、めまい」
のんだ翌日に出やすい症状です。これは薬の作用が翌日まで残るからです。
作用時間が長いタイプの睡眠薬や量を多くのむとこの症状は出やすくなります。

「筋弛緩作用」
筋肉を弛緩させる作用です。肩凝りがとれたりよい面もあるのですが、お年寄が夜間トイレでふらついて転倒したりする原因になります。お年寄には注意が必要です。

「健忘」
これはまれです。のんだあと数時間の記憶がなくなることがあります。
アルコ−ルといっしょにのむと発生しやすくなります。
アルコ−ルといっしょにのまないようにする注意が重要です。

毎日のんでいるとだんだん薬が効かなくなるのか?

昔の睡眠薬は長期間内服するとだんだん効かなくなりましたが、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は毎日のんでも効き目が悪くなる事はありません。

のむとボケル?

睡眠薬をのむと早くボケルとか、アルツハイマ−病になるなどと、恐れている方もいらっしゃるようですが、そのようなことは全くありません。ボケは、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬でおこる一過性の健忘とは全く違います。

睡眠薬より寝酒の方が健康的??

「寝酒」をすると眠れるので睡眠薬をのまずにすむなどという方がいらっしゃいます。
アルコ−ルは不安を抑制したり心を落ち着かせる作用があります。ですから眠りやすくなります。
しかし、適量を超える飲酒はかえってよい眠りを妨げます。また、肝臓などの臓器障害を引き起こします。
睡眠薬よりむしろ問題が多いと思ったほうがよいでしょう。
薬じゃないから安全と思うのは間違いです。


睡眠薬は正しく服用すれば安全な薬です。正しくつきあうようにしましょう。

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