第172回

右視力の低下を感じ眼科を受診した35才男性

01.9.22

35才男性が右視力の低下を感じ眼科を受診しました。しかし、眼科的には視力低下の原因は不明でした。
この患者さんは以前から鼻閉があるということでしたので、視力低下を起こすような副鼻腔炎がないか確認するために、この眼科から耳鼻咽喉科へ紹介となりました。この耳鼻咽喉科から精密検査目的で私の病院に検査依頼がありました。CTスキャン上、右の副鼻腔(上顎洞)に腫瘤を認めました。しかしこの腫瘤は上顎洞の外から上顎洞を圧排しているように見えました。悪性疾患が否定できず、耳鼻咽喉科で手術を行うことになりました。結局手術の結果は上顎洞の癌ではなく、三叉神経の第2枝から発症した三叉神経鞘腫という良性の腫瘍でした。三叉神経の第2枝は切断せざるを得ませんでしたが、無事腫瘍の摘出が出来ました。三叉神経は顔面の知覚神経ですので右顔面の感覚が一部障害されました。しかし、眼の症状は改善しています。癌ではなかったので今後の予後も良好と考えられます。

CTスキャン

右の上顎洞の後方に腫瘍を認める

上顎洞を後方から圧排している


同じくCTスキャン

眼球レベル

右眼窩後方に腫瘍を認める

視神経の通路でもある

症状の原因と思われる

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