第175回

声がれ、顔面のむくみで発症した74才男性

01.9.30

声がれ、顔面のむくみで発症した74才男性

74才男性が4〜5日前から声がれを自覚していました。
風邪と思っていましたが顔面のむくみが出てきましたので私の病院を受診されました。
声がれの原因を精密検査するためにまず胸部レントゲンをとりました。
レントゲン上、右の肺門に巨大な腫瘍を認めました。
すぐに胸部CTにより詳しく調べました。
CTスキャン上、右の肺野に腫瘍を認め、肺門のリンパ節が巨大に腫大していました。
レントゲンで認めた腫瘍は腫大したリンパ節であったようです。
肺癌のリンパ節転移を疑いました。
この大きな肺門リンパ節は上大静脈を強く圧排し、このため上大静脈の流れが悪くなり顔面や上半身の浮腫が出たものと判断されました。
また縦隔内を走っている反回神経も圧排され嗄声(声がれ)が出たものと判断されました。
気管支鏡の検査で組織診断上、小細胞肺癌と診断されました。
小細胞癌は化学療法(抗癌剤など)がよく効きますので、この患者さんも化学療法をすぐに開始しました。
すぐに上大静脈の圧排は軽くなり浮腫は軽減しましたが、期待したほど効果がなく、3回の治療で終了となりました。
この癌は1年ほどで再発することが多く、一回は治療効果が上がりますが再発後は治療が困難で、予後はあまり良好ではありません。
この方は近くの病院で高血圧の治療をされていたようですが、ほとんど胸部レントゲンの検査は受けていなかったようです。

胸部CTスキャン

大きなリンパ節腫大(転移)を認める

反回神経、上大静脈を圧排している


胸部CTスキャン

右肺に原発と思われる肺癌病巣を認める

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