第180回

発熱、上腹部の腫大で発症した54才女性

01.10.14

発熱、上腹部の腫大で発症した54才女性

糖尿病で近くの病院に通院中であった54才の女性が発熱、倦怠感、上腹部の腫大に気づき通院中の病院で診察を受けました。
糖尿病のコントロ−ルはたいへん不良でこの日も血糖値が343mg/dlと著明な高値でした。
白血球は16700と増加しており、CRPという炎症反応を示す値は32、8と異常高値でした。
これはたいへん強い炎症が体に存在する証拠です。
超音波上、肝臓に腫瘤を認めるということで私の病院に精密検査依頼がありました。
CTスキャンで精密検査をしました。CTスキャン上、肝臓に大きな腫瘍を認め、造影剤で増強されました。
正常の胆嚢が認められず、おそらく胆嚢癌が存在するものと思われました。その周囲や腹腔内には多くの嚢胞性病変があり性状から膿瘍が疑われました。腹水の貯留も認めました。
胆嚢癌があり、肝臓に浸潤し、胆汁の流れが悪くなり、胆道内感染が起こり、糖尿病がひどいために感染症がどんどんひどくなった可能性があります。糖尿病の厳重な管理(インスリン使用)、膿瘍にたいする外科的なドレナ−ジ(管を挿入して膿をだすこと)が必要です。そして全身状態、感染が落ち着けば癌に対する治療が出来るかどうか検討することになるでしょう。感染症は糖尿病患者さんはなかなか治療困難なことが多く、この患者さんも治療に苦労するでしょう。


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