DDW-JAPAN の教育講演
(膵臓癌の早期診断 九州大学臨床腫瘍外科 田中雅夫先生)を聞いて
DDW-JAPAN 2002(横浜)に出席し、田中先生の講演を聴いてきましたので報告します
膵臓癌の早期診断
九州大学
臨床腫瘍外科 田中雅夫先生
【講演のポイント】
膵臓癌は一万の人に一人の発病率である。
非常に少ないが患者数は増加している。
胃癌、乳癌、大腸癌、などのほとんどの癌は治癒率が改善している。
膵臓癌はこの20年間すべての癌の最低レベルで全く向上していない。
原因は後腹膜臓器で画像診断で発見しにくい、きわめて早い時期に周囲への浸潤転移がおこるなどがあげられる。
現在のところ膵臓癌を治癒させるには切除術しか方法がない。
結局、早期発見しかない。
膵臓癌を早期に発見するためのポイントがいくつかある。
1.上腹部痛後、血清アミラーゼが上昇し急性膵炎と考えられた症例
これは膵臓癌のための膵管の狭窄閉塞が原因のことがある。
明らかな原因がなくて膵炎がおこった場合膵臓癌を疑うこと
2.アルコール歴も家族歴もなく55歳以降に発症した糖尿病の症例
急に発症した糖尿病の患者は膵癌を疑うこと
しかしこれらの患者さんに注意して画像診断をしても発見されるものは進行癌が多い。
最近、CTや超音波で小さな膵嚢胞を認め精査した症例に、ERCPで採取した膵液の細胞診が陽性で、さらに精査すると嚢胞と違う場所に上皮内癌が発見された例が出始めている。
膵管内乳頭粘液腫瘍(intraductal papillary -mucinous tumor)はそれ自体が癌化するが別の場所に膵癌が合併していることが多いことが認識された。
現段階で早期膵癌を診断できる唯一の契機といえる嚢胞性病変のIPMTへの注意をはらうべきである。
以上の内容でした。膵臓癌は私もなかなか早期で発見できず何とかならないものかと思っていました。今回の講演を聞いて、やはり早期発見の困難さを再認識しました。そして発見するためには上記 1. 2. を徹底的に精密検査することが必要であり、CTや超音波でたまたま発見した小さな嚢胞に関しては別の場所に膵臓癌が合併している可能性をかんがえてERCPなどの検査を積極的に行わなければならないと思いました。