第10回
突然の痴呆様症状にて発症した70才女性
00.5.22

5月22日診療日記

本日は、意識障害にて入院しているKさんについて書きます。


Kさんは突然の意識障害が出現しました。突然と言っても、幻覚様の症状が出現し、家の中をウロウロし始めました。まるで、痴呆が発症したかのような印象でした。3日間は家の中でお様子を見ましたが、4日目には外に出ると言って出て行こうとするため家族に連れられて外来に受診されました。

幻覚をおさえる薬を出して様子を見ることにしましたが、その日の昼食後、嘔吐に引き続きケイレンが起こり呼吸が停止した様な状態(家族にはそう見えたようです)になり、救急車にて搬送されました。搬送されたときは、強い不穏状態で暴れているような状態でした。

CT、MRI 検査上異常所見は見つかりませんでした。血液検査では、血漿浸透圧、血清ナトリウムの値が著明に低い状態でした。症状の原因はこの血漿浸透圧の低下、低ナトリウム血症が原因と思われました。その後意識は昏睡状態となり、40度近い発熱も認めました。

いろいろ検査した結果、この病態はADH不適合分泌症候群(SIADH)という状態と判明しました。血清ナトリウムの補正治療を行ない翌日少しずつ意識は回復しました。


このSIADHという病気は何でしょうか?


ADHというホルモンは脳下垂体の後葉というところから分泌されています。尿が出るのを抑制するホルモンですが、このホルモンが出過ぎると低浸透圧血症と低ナトリウム血症となります。尿が出なくなり体の中に水分が蓄積し、いわゆる水中毒状態になってしまうのです。


まだ、Kさんが何故SIADHを起こしたのか本当の原因はわかっていません。悪性の病気も十分可能性があります。今後、しらべていく必要があります。

もどります!