第16回

けいれんで運ばれた17歳男性

00.6.22

診療日記
00.6.22

今日は、数年前17歳でけいれん発作をおこし、救急車で運ばれた男性K君についてお話します・・・・この時が私との初めての出会いでした。

母親の話によると、
K君は幼児期、父親によって異常を発見されました。
異常というのは幼児でありながら陰毛が生えてきたということです。
一緒にお風呂に入れていた父親に発見されました。
両親はびくりして小児科の病院につれていきました。
結局、ある大学病院の小児科を紹介され、
脳下垂体ホルモンの異常を指摘されました。
下垂体ホルモンのうち成長ホルモンの異常を指摘され、
巨人症になるとか小人症になるとかいろいろといわれたようです。
(両親もあまり医師の説明を理解されていませんでしたので詳細は不明です)
しばらく、この大学病院に通院しましたが、結局、低身長となりました。
もうこれ以上身長は伸びないといわれ、通院をやめたということでした。
その後、低身長のまま17歳をむかえました。

ある日、犬の散歩中、路上で倒れているのを発見され私の病院に救急車で運ばれました。
救急車の中でも激しいけいれんがおこり、
病院に着いてからも長時間けいれんが続きました。
重積発作と言ってけいれんが薬でもなかなかとれず、長時間持続する状態でした。

けいれんの原因をいろいろ調べてみましたら、
MRI で視床下部というところに「こぶ」を発見しました。
視床下部といいうのは下垂体の真上にあり、
下垂体のあるホルモンを制御しているところです。
この「こぶ」は視床下部過誤腫という病気でした。
視床下部過誤腫と言う病気は、「思春期早発症」という病態を起こし、
「てんかん」の原因となるのです。
幼児期に陰毛が生えてきたのはこの思春期早発症と言う病態のためだったのでしょう。
すべて、下垂体ホルモン異常のために起こることです。
また、激しいけいれんの原因にもなると言われています。
今回私の病院に運ばれたのはこのけいれん発作のためでした。
遺伝的な真性てんかんではなく視床下部のこぶがけいれんを引き起こすのです。

てんかん発作の引き金になるのはいつも喫煙後や犬の散歩等の過呼吸状態の時のようでしたので、喫煙や過度の運動をやめるように指導しました。
しかし、その後も何度も喫煙後にけいれん発作を起こし救急車で運ばれました。
けいれん発作の度にけがをして痛いめにあっても懲りずに喫煙していました。
しかし、この K君も少しずつ私の説得に耳を傾けてくれるようになり、とうとう喫煙を止めて、けいれんをおさえる薬を内服してくれるようになりました。現在は大学生となり、アルバイトをして元気にすごしているようです。
まじめに内服してくれても、つい最近風邪による発熱がきっかけでけいれんを起こし救急車で運ばれました。
まじめに生活の節制をしていてもやはり時々は発作を起こすようです。
たいへんきのどくな病気ですが、命を落とすものではないので頑張って欲しいと思います。

下垂体の上の視床下部に過誤腫を認める

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