第24回

両側腎梗塞を起こした81才女性

00.7.1

診療日記
00.7.2

両側腎梗塞を起こした81才女性

81才の女性が突然激しい左側腹部痛が発症し、
近くの医院で処置を受けましたが症状が改善せず、私に紹介されました。
何の前兆症状もなく突然発症した腹痛で、最初は尿管結石を疑いました。
検尿をしますと、潜血反応があり、症状と総合的に考えると
やはり尿管結石を疑う所見でした。
本人、家族にはおそらく尿管結石であろうと説明しました。
しかし、レントゲンやCTスキャンの検査で、明らかな結石が確認できませんでした。
時々、レントゲンに写らない(レントゲン陰性)結石を経験しますので、
この患者さんもそうであろうと思い込んでいました。
症状は徐々に軽快しましたので、そろそろ退院を考えていました。
ところが、ちょうど入院してから20日後、今度は右則腹部
激しい痛みが突然発症しました。
検尿上今回も潜血反応を認めましたので、前回の症状とほぼ同じでした。
しかし、短期間のうちに左右両則に尿管結石を繰り返すのは非常にめずらしく、
この時点で、尿管結石ではないのではないかと疑いました。
血液検査では、白血球、腎機能が悪化しており、
LDHという値が著明に上昇していました。
尿管結石では、このような異常が起こることはほとんどありません。
症状から、両則の腎梗塞を疑い、 C病院の腎臓科に紹介しました。
MRI の検査にて両則腎梗塞が確認されました。
特に、右の腎動脈は主幹部から閉塞していました。
詳しく調べると、脾臓にも比較的新しい梗塞が認められました。
この患者さんは、短期間のうちに両則の腎臓と脾臓に梗塞を起こしたことになります。
この患者さんの腹部大動脈は動脈硬化性の変化が強く
動脈硬化性の血栓症が疑われました。
脳梗塞や心筋梗塞はよく話を聞くと思いますが、
全身の動脈硬化に伴う腹部臓器の梗塞もけっこうあるのです。
後遺症が残ったり、一命を落としたりしないことが多く、案外診断されていなかったり、別の診断をされていたりすることが多いのではないでしょうか。
この患者さんは無事退院され、血栓を予防する内服で再発を防いでいく予定です。

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