第51回

けいれん発作で発症した巨大脳動静脈奇形

00.8.22

診療日記51

けいれん発作で発症した巨大脳動静脈奇形

48歳の女性Fさんは、5年前43歳の時けいれん発作で発症しました。
CT、MRIの検査で右の頭頂葉にたいへん大きな
脳動静脈奇形があるのが発見されました。
この動静脈奇形のため異常脳波がでてけいれんが起きたのです。
幸いくも膜下出血や脳出血は起きていませんでした。
このためけいれん止めの内服薬でけいれんはコントロ−ル出来ました。
しかし、問題はこの動静脈奇形をどのように治療するかが問題となりました。
このままにすればもちろん出血して、くも膜下出血や脳出血になる可能性がありました。
この動静脈奇形はたいへん大きくシャント量(直接動脈から静脈に流れる血液の量)
が多いため、くも膜下出血が発症すれば死亡する確率がかなり高かったのです。
しかしあまりにも大きくガンマナイフの治療の対象ではありませんでした。
手術しか方法がないのですが、残念ながら動静脈奇形が頭頂葉にあり
手術のために片麻痺(左半身麻痺)出す可能性がかなり高かったのです。
手術をして麻痺がでても命を守るか、手術をせずに(死亡するかもしれないが)
麻痺がでない人生を歩むか選択しなければなりませんでした。
結局、Fさんは子供がまだ中学生と高校生でしたので、
この時期に半身麻痺になるわけにはいかないということで、
手術をしないことにしました。
あれから5年、幸いまだ出血せずにすんでいます。
再度MRIの検査をしましたが動静脈奇形は大きさ形態ともに変化を認めません。
もうすぐ子供さんが成人してしまうということです。
そのとき手術を受けるかどうかを考えますとおっしゃってました。
メスを入れることで麻痺がでる確率が高い手術を受けるかどうか
決断しなければならないFさんの気持ちを考えると複雑な気持ちです。
しかし、最後は自分で決めなければなりません。

MRI の T1 強調画像


MRI の T2 強調画像


MRI の T2 強調画像

右の頭頂葉の動静脈奇形がはっきりとわかる


MRAngio(血管撮影)

著明な動静脈奇形の異常血流が確認される

巨大な脳動静脈奇形である

診療日記ホ−ムへ