第62回

ダイエット(間違った減量法)

00.9.7

ダイエット

間違った減量法

最近、色々なメディアでたくさんのダイエット情報が氾濫している。
私も診療の中でダイエットを勧める事が多いが、
情報の氾濫で間違った減量法を行なっている人が多いのが気になる。
日本肥満学会(本当にある学会です)では、
この間違った減量法について注意を呼びかけている。

間違った減量法とは、

1.極端な食品に偏ったダイエット
  1)リンゴダイエット
  2)キャベツダイエット
  3)ゆで卵ダイエット
  4)パイナップルダイエット

2.誤った薬物の使用による減量
  1)利尿剤
  2)下剤
  3)甲状腺ホルモン

3.水分を減らしただけの減量
  1)サウナ
  2)利尿剤、下剤の乱用

このような方法は間違った減量法と考えるべきである。

誤った減量法として「リンゴダイエット」「パイナップルダイエット」
「ゆで卵ダイエット」など手軽で比較的安価な一品目のみを食する
ダイエット法がブ−ムになったことがある。
そのようなダイエット法を実践し、あるいは自己流にアレンジすることによって
体重は減少したが、重篤な障害を生じた症例が報告されている。(日本肥満学会記録)

症例1
17歳の女性がリンゴダイエットを自己流にアレンジし、
リンゴ・菓子パンのみの食事を長期にわたって続け、
その結果、ビタミンB1欠乏性多発性末梢神経障害を呈し、
著明な両下肢の筋力低下による歩行困難や、
知覚異常を来した症例があった。
本例は、入院後正しい食事療法とビタミンB1多量投与により
症状改善と減量に成功した。(第15回日本肥満学会記録)

症例2
19歳の男性が自己流キャベツダイエットを長期間行ない、
種々のビタミン欠乏による神経障害(筋力低下、感覚障害)、
口内炎、皮疹等の症状を呈した症例が報告されている。
入院後食事療法で安全に減量し得たと共に症状の改善をみている。
(第10回日本肥満学会記録)

このように、極端に偏ったダイエット食によって
先進国では最近ほとんど見られることのなかった
栄養障害による病態を来すことがある。
人間の体内で生合成ができないが、生命にとって不可欠な物質
(いくつかのタンパク・ビタミン・ミネラル)の長期欠乏を来す
ような減量法により重篤な障害を生じることがある。
ダイエットは正しい栄養学の知識や情報をもとにして実行すべきである。

では薬物による減量は可能であろうか。

「一日数粒だけで・・・」とか「一日スプ−ン数杯で・・・」などの
甘い宣伝文句で売り出されている数多くのダイエット食品が存在するが、
実際にはそれのみで減量しうるものはない。
コレステロ−ル低下作用、腸管からの糖質吸収抑制作用等の効果を有するものの、
それのみで宣伝どおり体脂肪を燃焼させたり体重を減少させるという作用はない。
したがって、減量のための一助となっても減量法とはなりえない。

誤った薬剤の使用による減量では、利尿剤や下剤の乱用、
甲状腺ホルモンの入ったものなどがある。
サウナに入って体重が減少するのも、発汗により体の水分が減っただけで、
体脂肪の減少にはならずダイエットにはならない。
つまり、手軽に入手できるやせ薬など現在のところ存在しないのである。

減量法は正しい知識・情報・指導のもとに食事療法・運動療法が行われるべきである。
豊かな情報社会である現代の大きな落とし穴にこの危険なダイエットの甘いわながある。

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