カミューは片眉を軽く上げた。
「────あいつ…確か、一年前にもやっただろう」
マイクロトフが営倉入りしたと云う。
雪解けまではまだ幾分あるこの時期、マチルダ騎士団では春の訪れと共に緊張状態に再突入する隣国関係を睨み、また養成 期間を経て正騎士に叙任される青少年達の配属をも間近にし、各部隊の再編と人事異動が行われる。
マチルダ領内の屯所からロックアックスへ召還されて数日、新たな部署での調整に追いまくられていたカミューは、職務を適当な 処で切り上げてようやく本日の遅い昼食か早目の夕食にありつこうと士官食堂にやって来たところだった。
半端な時間ではあり食堂は人影もまばらである。その一角に、カミューに向けて手を振ってみせた者がいた。
「よ、カミュー殿。此の度はご栄転、誠にオメデトウゴザイマス」
「………これはこれは。痛み入りマス」
殴る真似をしたカミューの拳を笑って受け止めた、暗褐色の髪の男を、エーリッヒという。カミューの鉄壁の外面を突破してその素 顔に触れた数少ない人間の内の一人であり、幼年学校以来の友誼は所属する団の色を赤と白に違えた今も続いている。
白の軍服の階級章を目に止めて、カミューが笑った。
「どうしてお前が士官食堂にいるのかと思ったら、出世したのか。おめでとう」
「お前ほどじゃないけどな。ありがとさん」
先日下士官から士官への低くはない階梯を上ったエーリッヒが笑い返すと、友人はやや曖昧な表情で肩を竦めてみせた。あれ、 とエーリッヒが思う間に、軽食の乗ったトレイを提げたカミューが目の前の空席に着座する。すかさず白騎士が伸ばした指は皿に
届く寸前で小気味の良い音と共に弾かれる。叩かれた手の甲を押さえて、エーリッヒは恨めし気に抗議した。
「…久しぶりに会った友人にサンドウィッチの一切れも振舞う気は無いのか、吝嗇家め」
「人様の皿に勝手に手を出してはいけませんと、家庭で躾られなかったのか?無作法の報いだ」
無情に断じておいて、カミューは食事を開始した。一見すると優雅な手付きが、その実相当な速度で食物を摂り込んでいく。万年 欠食児の集団だった幼年学校時代を思わせる勢いで、みるみるうちに皿がその姿を露にしていくのにエーリッヒが目を丸くした。
「…腹減らしてたのか、お前?」
「お陰さまで半日振りの食事だ」
「へぇ…頭の堅いお歴々との折衝も、楽じゃ無さそうだな」
「全くだ。団長が変人だから、代わりに常識人の私に文句をつけておけば間違いないと思っているんだろう、あれは」
団内の重鎮とのやり取りを思い出してか、語るカミューの声音は吐息混じりである。常識の在り方について一度こいつと議論した いと考えたエーリッヒの心中も知らずして、すぐに同期の出世頭は言を継いだ。
「ま、陰に篭るよりはずっと健全で良い。ユージィン様への不満も人事以外には無いらしいし、後は私次第だろうな」
何時もの事だと、カミューは唇の片端を持ち上げ、白刃が閃くのに似た薄い笑みを一瞬だけ浮かべた。
常と変わらぬさらりとした友人の物言いに、しかしエーリッヒの耳は僅かにけばだった響きを拾った。あれ、と再びひっかかるもの を覚え、そうして気付いた。
カミューは、どうやら苛立っているらしい。
珍しいなと思ってその顔を見直した時には既に相手は食事に没頭していて、些か物騒な感じのする微笑の名残を露とも残してい なかった。
(…今回の人事の所為か)
カミューの現在の肩書きは、赤騎士団長の首席副官──首席も何も、現赤騎士団長は一人しか副官を置いていないが──であ る。団長付きの副官は中隊長待遇。カミューがそれまでいた地位と変わらないが、事実上の栄転には違いない。一屯所の責任
者、単なる一中隊指揮官とは立場の重みが全く違うのである。
…権力の中枢にあるという点において。
実質的な権限を持たないとは云え、たかだか二十でカミューは騎士団の最高会議に臨席し、機密書類に目を通す事の出来る位 置に立った。それに対する周囲の目は、エーリッヒが想像するまでも無かった。
────『何時もの事だ』
草原の血脈故の偏見も。
繊細な容姿故の侮りも。
若さ故の先入観も。
戦の度、変事の度、事有る毎に功を立ててはカミューは地位を駆け上っていく。それと同時に必ず裏で囁かれ出す言葉の内容は、 友人が異質の存在である事を否応無くエーリッヒに知らしめ、苦々しい憤りを覚えさせる。尤も当人は頓着する風も無く飄々とし
て在るのが常であり、最前のようなささくれた様子を垣間見せた事は皆無と云って良い。虫の居所が悪い時ならば、運の無かっ た相手に、直接的な実力行使に出る事はあったが。
俯き気味の白い秀麗な顔。軽く煮詰めた糖蜜色の睫毛が翳を落とす頬は、数ヶ月前の記憶よりも若干削げているように思われ た。それが精悍さを演出するよりも艶を増したように見せてしまう辺りが、この男の問題であり周囲の不幸なのだと七年に及ぶ付
き合いでエーリッヒは悟っている。容姿か血か、せめて一方がもう少し大人しい存在であったならカミューに対する一般的な評価 は今より随分正当であったかもしれなかった。
友人としての欲目抜きで、エーリッヒはこの男は十年後の騎士団の柱石になるだろうと、それだけの器をカミューに見ている。恐 らくカミューを取り立てた赤騎士団長はそれを希んでいるのだろうし、直接カミューの下に付いた事のある者も実感しているだろ
う。
けれど決定的にカミューは、実力以外でその器量を量られる事が多過ぎるのだ。
頭角を現していく毎に、彼を認める者は増えるだろう。それ以上に潰そうとする者も多かろう。下手な庇護は敵愾心を抱く者には 格好の中傷の種だ。その悪循環。
そして何よりの問題は、カミューの己自身に対する冷淡。
(……あいつが激発するのも、無理はないか…)
青騎士団に所属する年下の友人を思い、あれは激発じゃなくて暴発かとひとり苦笑した時、食事を終えたカミューがご馳走様と 手を合わせた。
食堂に備え付けのコーヒーを不味そうに一啜りして、ところでとカミューが口を開く。
「最近、何か面白い話はないか?」
領内の治安、警察を主要任務とする赤騎士団の性格上、務めで城を空ける事の少なくなかったカミューである。帰城した後に城 詰めである友人からロックアックスを離れていた間の何くれを聞くのは、正騎士になってから続く習慣だった。
エーリッヒが眉を顰めた。
「お前…。確かにマイクロトフの奴が勝手にやらかした事だし、お前がしおらしくしている必要は全くないけどな。良く余所事を面 白がっていられるな」
そういうところが昔から冷たいんだお前はと、愚痴か叱責かエーリッヒ自身の判断がつくより早く言葉をぶつけると、カミューが目 を丸くした。
「…何の話だ?」
「何のって…」
カミューの翠がかった琥珀の瞳が純粋な疑問に丸くなっているのを見、エーリッヒは不審気に眉根を寄せた。
「マイクロトフは国境だろう?どうかしたのか」
「………知らないのか、お前?あんなに騒がれたのにか?」
「知らないから訊いている。生憎、私は帰城してからこの二日間は赤騎士団の詰所に篭りきりで、城中の出来事なぞ耳に入れて いる暇は無かったんだ」
マイクロトフがどうしたと重ねて問われ、エーリッヒは溜息を吐いた。
「あいつ、三日前に国境から戻って来てな。中隊長に昇進したうえで第三大隊に配属替えになる予定だったらしい。辞令はまだ 下りてない筈だが…ああ、内示は受けたんだったかな。
…とにかくその日の内に上官と揉めて、営倉にぶち込まれた」
「営倉って…」
カミューは驚いたように一層目を丸くし、次いで片方の眉を上げると呆れの濃い色で呟いた。
「────あいつ…確か、一年前にもやっただろう」
本当に上司に恵まれない奴だなと、同情するのと面白がるのが半々の口調で云ってカミューはコーヒーに再び手を伸ばし、そし て何かに気付いたように動きを止めた。
エーリッヒに戻された視線が、鋭さを帯びていた。
「…私が云々と言ったな、お前」
やばいと思った内心が顔に出たらしく、それを見る眼が一際険しくなった。
「私絡みの事で、あいつは上官と事を構えたのか?」
「……………」
「どういう事だ」
「……………」
「…エーリッヒ」
硬質な声で促された小隊長は、両手を肩口の高さに上げて降参の意を示した。
「黙秘」
その動作はカミューの言葉を認めた事に他ならないが、それ以上を話す気は無いという明確な意思表示でもあった。
「マイクロトフに口止めされてる。後で怒られるからな、あいつに」
「今、此処で私が怒っても良いんだが」
「話さなくてもお前には怒られるだけだが、話せばマイクロトフの信頼を無くす。俺は、それは御免蒙る」
分るだろう?と逆に問いかければ、カミューは形の良い眉根を不機嫌に顰めて舌打ちした。
「…良いさ、他の人間に聞く」
直截な問い質し方といい、食い下がらずにあっさりと引き下がった事といい、常とはカミューの態度が明らかに違う。どこか余裕 が感じられない。そのまま座を立った友人に、云おうか云うまいか半瞬迷い、結局エーリッヒは声を掛けた。
「カミュー」
無言で振り返るのに、エーリッヒは冗談や皮肉を削ぎ落とした口調で告げた。
「お前自身は、自分の評され方にえらく無頓着だけどな。それを大人しく傍観していられなくなる奴だっているって事は、覚えてお けよ?」
戸惑ったように、カミューが瞳を瞠く。
何事かを云おうとして口が開きかかったが、結局は一言も発せられないままに背が向けられた。
肩越しにひらりと振られた手が、エーリッヒに返された応えだった。
「ああ、漸く知ったのかい」
友人と別れ再び勤務に戻ったカミューに、赤騎士団長ユージィンはあっさりと云ってくれた。結構な評判だよと。
「…何をやらかしたのですか、あの馬鹿は」
「直接の上官になる筈だった第三大隊長に、人目も憚らず往来で手袋を叩きつけた」
「………決闘とは、また…」
頭痛を覚えた気がして、カミューはこめかみを片手で押さえた。厳罰対象である。
「決闘騒ぎなんて、何年振りかな。表沙汰になったのは私が中隊長だかの時分に、一度あったのが最後だと思うから…十年以上 経つか。律儀に営倉に放り込まれている辺り、相変わらず面白いな、君の親友は」
飽きなくて良いなあと書類片手で暢気に笑う直属の上官を、カミューは胡乱な目つきで眺め下ろした。
「…どうして教えて下さらなかったのです」
「私の口からでは、差障りが色々とあるだろう。君も仕事熱心なのは良いが、団内の話題位は把握しておくんだね」
────誰でも知っている出来事が耳に入らないほど顎でこきつかってくれたのは、何処のどちら様でしたでしょうね。
心の声が聞こえた訳でもなかろうが、赤騎士団長は手許の書類を指先で弾くと小さく笑った。
「それで?」
「…それで、とは」
平坦なカミューの反応に、ユージィンは意外そうな顔つきをした。
「何だ、怖い顔をしていたから、とうとう転属願いでも叩きつけられるかと思っていたんだが」
「毎度の事です。昇進する度にそんな事をしていたら、騎士団内に私の配属先は無くなってしまいますから」 身に付いた癖で肩を竦めかけ、眼前の男が一応上官であることを思い出してカミューは動作を留めた。
「丸くなったな、君も」
感心されているようで実は面白がられているのを如実に感じ、カミューは心中で苦虫を噛み潰す。騎士団長付き副官の職務には、 団長のおもちゃにならねばならないという規定は含まれていただろうか。
「君、マイクロトフが決闘なぞに奔った原因をちゃんと聞いたか?」
諭す口調のユージィンを見る、琥珀の瞳が訝しげな色を刷いた。
マイクロトフがカミュー絡みで揉めたといったら、理由は一つしかない。昔から自分は一部の者からとかく目の敵にされ、それを何 かにつけてあの友人は義憤に駆られていたから。…幼年学校以来の腐れ縁であるこの男は、異端のカミューを引き立ててくれた
人間の一人である。正騎士に叙されて五年、功を上げ位階を重ねる毎に陰で囁かれる誹謗を知悉している筈だった。
「何を言われるのにも慣れてはいますが、己に対する面白くもない噂を好んで耳に入れる程、私は自虐的な性格をしておりませ んので」
聞かずとも分ると暗に応えれば、騎士団長は書類からカミューへと目線を移動させた。それから目を細め、恐ろしく人の悪い笑い 方をした。
「それは初耳だな。私の情人と呼ばれる事に慣れていたとはね」
(…は?)
ジョージン。
「…………それは…普通の人間という意味の」
「それは常人」
「…………私は今まで種が実るような下手を踏んだ覚えはありませんが、ユージィン様は何年後かに生まれるかもしれない私の 娘と、ご結婚される心算がおありなのですか…?」
「それは丈人。君の娘ならさぞかし美人に育つだろうが、年頃まで待つのは随分根気がいるなぁ。大体、私には新婚の愛しい妻 がいる」
「ああ、どうやって騙くらしたのかと団内でも専らの奥方…」
「専らにしているのは君だろうが。逃避はその位にしておきたまえ。愛人、恋人、イロ、そういう事だ。従騎士の時にお手付きにな って以来の仲らしいな、私と君は」
成人前の子供に手を出した男と思われるのは心外だな、私に稚児趣味はないんだがと、ユージィンが一人ごちた。
「…十四じゃ稚児というには薹が立っているかな、どうだろうね?」
「…………何の話ですか…」
脱力しきった声とは裏腹に、カミューは自分の脳裏が沸騰しているのを感じる。目の前が怒りで赤く染まるような錯覚があった。
出世の為に上官を誑し込んで、という侮辱には慣れて久しい。何という事はないが。
囲い者だと?この、俺が。
(…それでか、マイクロトフ。お前は)
縺れる思考は、けれどカミューの中で純粋な怒りとはならない。自身で抱く蟠りが、感情の指向を単純に収束させようとしない。
俯いた視界に、知らず握り締めていた拳が映る。情動の不安定をうつして戦慄いているのを見、気息を整えようとして呼吸を深く した、その時微かに苦笑を浮かべたユージィンと目が合った。
静かな視線に晒されて、一瞬のうちに頭が冷える。
自失した数瞬、己はこの青灰色の瞳にどう映り込んでいたのか。
…ひとつ空気を深く吸い、動揺した表情を隠す為に、カミューは目を伏せて頭を下げた。
「己の不徳の為ユージィン様にまで下賎な噂の及びました事、誠に申し訳なく…」
殊更に神妙な態度を取ると、相手がちらと微笑する気配がした。
「謝罪の必要は無いよ。そもそも君を登用したのは私だ、その為に誹謗を受けたのだから、却って私の方が謝らなくてはならない な」
「……ユージィン様…」
この上官には余り似つかわしくない殊勝な言葉に、思わずカミューは目線を上向けた。そこで青年団長のにんまり、という擬態語 のままの笑顔と出会って目を丸くする。
「…と、お互い心にも無い事を言うのは止めにしておこう。地位も名誉も甲斐性もある好男子と、騎士団一の器量良しの組み合わ せでは多少口さがない事を云われても止むを得ん」
もはや何を云う気も起こらず無言でげんなりとした顔を作ったカミューを見て、ユージィンはくつくつと喉を鳴らした。三十も半ばに
は足りない少壮である赤騎士団長は瀟洒な外見を有し、実際自分で云うだけの評価を一般にされている辺り、始末が悪かった。 ユージィンは書類を傍らに放り出すと、机上に肘をついて組んだ指の上に顎を乗せた。その格好で、直立不動のカミューを仰い
だ。
「まあ、ともかく。私は、君を今の地位につけた事は悔やまないよ、誰が何を云おうとね。…君も、ロックアックスに戻ってからずっ
と釈然としない様子でいるのは、噂の所為ではあるまい?」
「………!」
「功無くしての栄転が気に喰わないのだろう、カミュー?」
凝然として見返した視線の先で、赤騎士団長は緩やかに笑んだ。心裏を見透かされていたのだと悟り、カミューは諦めの溜息と 共に開き直る事を決めた。
「………不遜を承知で申し上げれば、私にはユージィン様の意図を理解しかねます。大人しく城に篭っているのが性に合わない と、ご存知でいながら何故私をお傍に上げられました?私は周囲と摩擦の多い人間です。無用な火種を抱える事だと承知してい
ながら何故、副官などに任じられたのですか」
「その理由を、君は昔からの誼の所為だと思ったか?」
ユージィンの静かな反問は、急所に押し当てられた冷たい刃の感触がして、カミューは知らず息を呑んだ。
「私はね。青騎士団の第三隊長の言を聞いた時に何が面白くなかったと云って、情人だという部下を無能のように云われるのが 一番不満だったよ。容姿だけの無能者に誑し込まれるような男に、私が見えるかとね」
気の無い口調で告げた団長は、だがと続ける言葉と共にカミューを見据える視線を勁くした。
「卿の考えは、それと同義だ。親しい間柄だという、唯それだけの理由で副官の地位を与えるような人間だと、そう私を見做した のならば侮辱だな。そういう情に流れる性質ではないよ、私は」
普段と異なる二人称で、ユージィンはカミューを呼んだ。紛れもない勘気に、何も云えずに頭を下げて唇を噛む。
…自分が忌々しくなるのは、こういう時だ。
先刻、エーリッヒに云われた時と同じに。
「悪い癖だな、カミュー」
頭上を掠める上官の声を、カミューは無言のまま聞く。
「己を侮る人間に後で自分の器量を容赦なく突きつけて、そうして己を認めさせるのは当然と思っているのに、正当に評価されると変に裏読みをしようとする。
人一倍の自負がありながら、器量を認められる事に素直でない辺りがどうも偏ってるというか臍が 曲がっているというか…。
略奪は当然でも施しは屈辱だというグラスランドの馬賊のようだな。君の妙なところだ」
最後は笑い含みの何時もの口調でそう云って、ユージィンは頭を上げるように促した。
「この場合は施しじゃなくて、先行投資だけれどね。面倒だから云ってしまうが、今回の異動では最初から私は君を幕僚にする気 でいた。副官にしたのは、偶々君の前任者が胃を壊して休職扱いになったからだ。
君は確かに現場向きだと思うがね。戦場からの叩き上げでも地位を重ねれば辿り着くところはどのみち一緒だ、今から慣れてお くのも悪くないだろう?」
赤騎士団長は一旦そこで言葉を切った。そして、軽い調子で片目を瞑ってみせる。
「早く出世して、煩い周囲を尽く黙らせて、そうして早い所私を助けてくれるようになると良いな、とね。 将来性を買ったのと、期待を込めての人事だよ。これで文句はあるまい?」
カミューは滅多に無い経験をしていた。表情を選びかねたのである。性根が複雑骨折している筈の相手からの率直な激励に、気 恥ずかしさとこそばゆさと、何より困惑する気持ちが大きかった。
間を持たせる為に軽く咳払いし、視線を微妙に逸らせて口を開いた。
「………それにしても、異動の理由を軽く口になさった事といい、私に好き放題の口を叩かせていらっしゃる事といい、狎れている と思われても仕方ないのではありませんか」
「部下の個性は尊重する主義でね。大体、私に向かって皮肉のひとつも云わない君など、気色悪くて仕方ないじゃないか」
「…被虐趣味をお持ちだったとは、存じ上げませんでした」
その調子だと、ユージィンは可笑しげに笑った。
「…さて。人事に納得がいったところで、今日の執務は終了だな」
「こちらの案件は、どうなさいます?」
副官の顔に戻って、カミューは最前の上官が放り出した書類を示す。
「差し戻しの上、要再検討。それは明日で良いから、君は久しぶりに仲良しの友人の顔でも見て来ると良い」
尤も鉄格子越しだが。
そう云う団長を、カミューは軽く眉を顰めて見遣った。
「…そういう公私を混同した発言を不用意になさるのも、周りの誤解を招く一因だという気がしますが」
「部下の精神状態の安定を図るのも、上役の勤めだろう?」
「オヤサシイ上司を持って、幸せな事です」
「面と向かって褒めないでくれ、照れるだろう」
「嫌味のつもりだったんですが」
「分りにくかったな、今のは」
「…前任者が胃痛になった訳は、良く分りました」
「君も暴飲暴食には気をつけるんだね。…ま、それは良いからマイクロトフには顔を見せておきなさい。明日は査問会だから、ま た暫くは会えなくなるぞ。向こうも心配しているだろう」
とぼけた表情を穏和な微笑に改めたユージィンに、カミューは溜息を洩らした。
「心配しているのはこちらの方です、全く馬鹿な真似を…」
「君がそれを馬鹿な真似と思っている限りは、彼はまた同じ事をやると思うがね」
思いもかけない事を云われて、カミューは上官の端整な顔を見直した。
見返す青灰色の瞳が不思議に真摯な光を湛えているのに、カミューは僅かにたじろいだ。憎まれ口を叩く気が失せる。
「…………会って来れば宜しいのでしょう、会って来れば」
「カミュー」
扉の前で一礼し、退室しようとした所で呼び止められる。振り向けば、青灰の瞳は矢張り常に無く真面目な色で、けれど同時に穏 やかに暖かかった。ゆるりとした微笑を、赤騎士団長は浮かべた。
「得難い友を持ったね、君は」
酷く、優しい声だった。
「……云われずとも、承知の上です」
何だか今日はやられっぱなしなので一矢を報いてやろうと、カミューは人の悪い三日月の形の笑みを唇に刻もうとし、結果それを 失敗した。
耳朶が熱を持ったのは、言葉が自身にとって洒落ではないからだろう。…その位の自覚はあるのだった。
もう一度深々と頭を下げて、踵を返した。扉を閉める寸前に目にした上官は酷く愉しげな顔をしていて、カミューは臍を噛んだ。
赤くなったのに、しっかり気付かれたらしかった。
騎士団内の司法は、基本的に所属する団の裡で処理される。直属の上司による諭旨から団長決裁の退団処分まで懲戒にも大 小様々あるが、古くからの不文律として他団の介入は認めない。重大な禁を犯した場合のみ、白騎士団長の直属ながらその制
約を受けない審問官と各団の司法責任者による査問会が開かれるが、たかだか上官に突っかかった位でそれに出頭を命ぜら れるのは異例だった。
単なる反抗ではなく、決闘という手段が問題とされたのかもしれない。
(全く…あの馬鹿…)
どちらにしても一旦は、ロックアックス城の別棟の地下にある営倉へと放り込まれておかれるのが常である。真っ当に騎士として の日々を過ごしていれば、一般的にはまず縁の無い建物の内部へとカミューは足を踏み入れた。
通常任務を一時解かれて法務についている騎士は、三色の枠外の地位にある事、また何事にも染まらぬ意を示す漆黒の肩布 を纏う。その姿で手持ち無沙汰そうにしていた張り番の騎士と言葉を数語交し、カミューは営倉へ通じる扉に手を掛けた。
やや力 を篭めて押し開けば軋んだ音と共に流れ出した湿った風に頬を撫でられ、眉をほんの僅かに顰める。外から覗えた感情の変化
はそれだけで、青年は懲罰房へと続く扉の裡の人となった。
澱んだ空気と落とされた照明が、空間の印象をいかにも陰鬱に演出する。団則を破った騎士が沙汰を待つ間、或いは罰則その ものとして放り込まれておかれる其処は、あながち虚仮脅しでもなく犯則者の騎士たる矜持を傷付け、或いは己の惨めさを突き
付け、結果として内省を促す効果があった。無論、例外はどこにでもいるが。
カミュー自身も数年前に一度、私闘の廉で喰らい込んだ経験を持つ。私の闘争は、例え剣を抜かずとも厳しく禁じられる騎士団 では、城中で乱闘騒ぎを起こした挙句の営倉入りなど表向きは大変な不名誉だが、所詮は武張った人間の集団である。建前と
は別に、経緯の如何では陰で武辺を称えられるような風潮もあるのだった。
カミューが禁則を侵したのは騎士に叙されて間もなくの頃だ。
数人を相手に立ち回りをする事になった原因は、現在とは比べ物 にならない女顔の所為だったか草原の血だったか。
既に自身でも覚えていない。
一対多数の喧嘩を制したその結果はといえば、見事に己の矜持を保ったものと見なされたらしく、処分後のカミューに対する周 囲の評価は裏では前よりも上向いた。殊に若い者や、決闘の風習が残っていた頃に近い世代の昔気質の騎士の間では。
尤も、喧嘩っ早さとは裏腹の鉄壁の外面を自負していたカミューである。公衆の面前で殴り合いを演じる羽目になった不本意さを 思い、暫く憮然とした気分は払拭できなかったが。
『でも、良かったな。カミュー』
少年の時分の親友の笑顔が、眼前に蘇る。仏頂面をしていたカミューに、あの時マイクロトフは屈託無く笑ってみせた。謹慎が解 けた事に対してではない。赤騎士団内でのカミューの株が上がった事を聞き及んだらしく、怪我の功名という奴だなと云って酷く
嬉しげにしていた。
─────何時も、マイクロトフはそうだ。
他人の事を、我が事のようにして喜び、或いは怒る。
一体何人分の感情量があるやらと、マイクロトフのそれこそを自分は、呆れたり苛立ったり感心したり面白いと思ったりするのだ が。
それにしても、とカミューは考えた。
他人事ならば如何様にも出来るが、自分絡みとなるとどんな顔をしてあの男に会ったら良いのか、少々判断に迷うところだった。
怒れば良いのか、呆れるべきか。
v マイクロトフが留置されている筈の独房を睨みつけ、本日何度目かの忌々しげな溜息をカミューは吐いた。
(…馬ァ鹿)
石壁にぶつかって反響する足音に、人の訪いを予測していたのだろう。マイクロトフは鉄格子の向こうで直立不動の姿勢を取っ ていたが、こちらの姿を認めると群青の瞳を丸くした。
カミュー、と些か呆気にとられて己の名を呟いた顔が、奇妙に暢気で何だ か気に触った。
「…久し振りだな。結構、元気そうだ」
挨拶ひとつでカミューの機嫌状態が芳しからぬ事を悟ったらしく、マイクロトフは決まりの悪そうな表情をした。カミューは溜息をひ
とつ吐いて、やれやれという顔をつくってみせた。
「喧嘩するなら表沙汰にならないように、表沙汰になっても罰せられないようにしろって、ずっと云っているだろう。お前に学習能 力は無いのか、マイクロトフ」
上官に楯突いた挙句の営倉入りなんて間抜け過ぎだと、呆れと揶揄とを半々にして笑うと、友人は憮然となった。
「悪かったな、間抜けで」
「…という会話を、確か一年前にしたよな」
声の温度が下がったのを感知して、マイクロトフの表情が強張った。まずいと思った内心も露に、云うべき言葉を探している彼に 向けてカミューは軽く鼻を鳴らし、その場にどかりと腰を下ろした。行儀悪く片膝を立てた上に頬杖して、突っ立っているマイクロト
フを無言で見上げる。
「…エーリッヒが話したのか?」
「ユージィン様に聞いた」
赤騎士団長の名に、マイクロトフは精悍な印象の眉を少しだけ絞った。それから困ったような口調で、再び口を開く。
「カミュー…、その、…」
「阿呆」
言い差したマイクロトフを一言で遮って、琥珀の視線をきつくする。マイクロトフは酷く居心地悪そうにして、珍しく真直ぐに目を合
わせてこようとしなかった。
むっつりとした目線の先で、青騎士の軍服の階級章が外されている事をカミューは知る。佩剣と共に没収されたのだろう。騎士の エンブレムを取り上げられず、また手枷などを嵌められていないのがまだしもだった。
ふ、とまた一つ吐息を零す。
数ヶ月振りにマイクロトフの顔を見て。
相手に口を差し挟ませずに云いたい事を勝手にぶつけて。
一方的に悪態を吐いて。
…そうして常の自分の調子を取り戻してしまえば、見えてくるものがある。
この親友は直情なうえに単純だが、自制心は大層強い。目上に対する敬意も、上官への忠誠心も篤い。
上司がどんな人物であ ろうと、己のみの事ならば忍の一字で堪え切って、構えて事を起こすような真似をする訳も無かった。
────カミューの名誉に関わる事だったから、傷付けられたのが他人だったからこそ、マイクロトフは激昂したのだと。
(…それを一年前に考えようともしなかった俺も大概、馬鹿だ…)
暫しの沈黙の後に、マイクロトフは床の上に胡座になった。俯き加減のまま口を開く。存外、静かな声だった。
「怒っているか、カミュー?」
「俺が怒るような事をしたという、自覚はある訳だな」
応えにこくんと素直に頷かれ、カミューは軽く舌打ちした。
「…お前はどうして直ぐにそう、むきになるんだ。大した事を云われている訳じゃないだろう。多少の事は受け流せよ、子供でもあ るまいし」
諭しながら、我ながら分別くさい事をと思う。案の定、マイクロトフは是としなかった。
「俺は、大した事じゃないとも多少の事だとも思わん」
「謗られている俺自身が、気にしないと云っているんだ。大体、お前は騎士団長になるんだろうが。細かい事で一々騒ぎを起こし て遠回りする事もあるまい?それに、上に立つ人間としての器量だって疑われるぞ」
「…お前の中傷を黙って拝聴していれば、器の大きさを示す事になるのか」
マイクロトフの低い声が、僅かに怒りを含んだ。視線が上向き、ひたとカミューに当てられる。深い群青の瞳は枉げる事を撥ね付 ける勁さで光っていた。
「そうじゃなくて…」
言い澱んで、カミューはくしゃりと自分の髪を掻き回した。
────説教をしに来た訳ではないのだ。けれど、何を云いたいのかも良く分らない。
マイクロトフが、自分の為に揉め事を起こした。…それを知って、怒ったのも呆れたのも苛立ったのも確かなのだけど。
視線を落として、座り込んだ石の床目を数える。自分の足元から追っていって、マイクロトフのつま先まで辿り着いた処で、考え が纏まらぬままカミューは口を開いた。
「………俺が嫌なんだよ、マイクロトフ。
お前が俺の事で誰かと揉める度、俺はお前に庇われている気分になる。俺はお前に庇護される対象で在りたいとはこればかりも 思わない。
だから、今回みたいな事は嫌なんだよ。
それにな。
陰で何を囁かれようと、俺が痛くも痒くも無いのは本当なんだ。…だけどお前があんまり怒ると、下らない事じゃない、本当に怒る べき事を云われているような気持ちになる。
それも嫌だし。
端から見ればやっぱりお前は些細な事で揉めたように思われるだろう?
……お前が、そんな事で周りに器を量られるのも、俺は嫌なんだよ」
訥々とした語り口。…ああ、らしくない事を云っているなと思う。
エーリッヒやユージィンが、妙な事を云うから。
「…カミュー、お前。心得違いだぞ、それは」
ぼそりと聞こえたマイクロトフの声に、カミューは落とした目線を上向けた。
マイクロトフは怒ったように、或いは戸惑ったように眉間に浅く皺を刻んで、真直ぐに此方を見据えていた
「庇われているような気分になるから嫌だって云ったって、カミューがお前自身を庇おうとしないんだから、誰かが反駁しなくてどう
するんだ。云われ放題にされているなんて、負け犬ではあるまいし。
大体、実際に怒るべき事を云われているんだぞ、お前は?ちっとも下らない事じゃないだろう。武勲を偸んだように云われて、器 量を頭から疑われて、それを怒るのが嫌だなんてどういう了見をしているんだ、一体。
それに。
俺の器を量られるのが嫌だと云ったな。
では、お前を云々する言葉を聞かされる俺が、それを嫌だと思って何故いけない?」
─────『お前自身は、自分の評され方にえらく無頓着だけどな。それを大人しく傍観していられなくなる奴だっているって事 は、覚えておけよ?』
─────『君がそれを馬鹿な真似と思っている限りは、彼はまた同じ事をやると思うがね』
言い募るうちに感情が激してきたらしく、マイクロトフの頬に薄く赤みが差した。
「勝手を云うな、カミュー!」
マイクロトフが右手で掴んだ鉄格子が、がしゃんと鳴った。
呆気にとられて親友の言葉を聞いていたカミューは、その金属音でしばらく振りに瞳を瞬かせた。同時にマイクロトフが、我に返っ たらしく格子から手を離した。
交錯した視線はどちらも困惑気味だった。
恐る恐るという風情で、マイクロトフが口を開いた。
「…その…カミュー……」
「悪かった」
疵を窺うようにこちらを見ていたマイクロトフが、カミューの言葉に瞠目する。
「…考えなしだった。すまない」
そういえば、何故マイクロトフが自分の為に怒るのか考えた事が無かった。
…当たり前に怒るのが、マイクロトフだったので。
真向かったマイクロトフの強い視線から、幾分圧力が弱まった。カミューの見つめる先で、友人はほんの少し困ったような表情を して目を伏せた。
「俺の言い分も勝手だな。だけどカミューは、もうちょっと自分の事に構いつけた方が良い…と、思う」
「……ああ」
「逐一相手にするのは疲れるだろうが、誹謗に慣れるなんて間違いだ」
「…そうだな」
カミューが素直に首肯すると、マイクロトフは眉間の皺を解いて、引き結んでいた唇を仄かに綻ばせた。既に出来上がった体躯を 有する親友は、そういう顔をすると少年の匂いが濃くなる。年端のいかない子供に道理を説かれているような気がして、カミュー
は微苦笑を零した。
「……なあ、マイクロトフ。お前が一年前に此処に放り込まれた時も原因を秘密にしていたのは、俺がさっきみたいな事を云うと考 えたからか?」
マイクロトフの頷きに、カミューは苦笑を深くした。
自分は自分で思うほど、己の事もこの親友の事も解っていないらしかった。エーリッヒやユージィンの方が遥かに物を見ている。
(…まあ、でも……)
────解らないから、こいつと付き合うのは面白いのだろう。
「第三大隊長だったな、確か…」
マイクロトフが訝しげな表情になった。カミューの貌に剣呑な笑みが、瞳には好戦的な光があるのを見て、焦ったように腰を浮か した。
「…おい?何を考えている、カミュー…!?」
「俺がユージィン様と出来ているとか何とか、愉快な想像をしてくれた礼をしなくてはな」
「ば、馬鹿!俺が云ったのはそういう意味じゃないっ!!」
慌てて立ち上がり、鉄格子を掴み締め必死の形相になったマイクロトフに、カミューは素っ気無く肩を竦めてみせた。
「別にお前みたいに殺そうとする訳じゃない。精々が肋骨の二三本を折って、口の中がざくざくになるだけだ。暫くの間は喋るたび にあちこち痛んで、舌禍という単語を思い知るだろうよ」
「俺は殺そうとなんてしてないぞ!ダンスニーを喉元に突きつけて、謝罪させた上で前言を翻させれば充分だったんだ!!とに かく駄目だからな!お前は手は出すなよ、良いなカミュー!!」
(…仮にも上官に対して最初から勝つ気しか無い辺り、こいつも天然で嫌な部下だよな…)
くつくつと喉の奥で笑うと、マイクロトフが胡乱な目付きでこちらを睨めつけた。
「…からかったな、カミュー」
そういう訳でもないんだがと応えると、どういう事かとマイクロトフは小首を傾げた。その親友に向けて、カミューは不敵な笑みを 浮かべた。
「見てろよ、マイクロトフ。五年後には、お前の所の大隊長も俺の所の頭の硬い幹部達も、揃って俺に頭を下げさせてやるから な」
好戦的な瞳で宣戦布告すれば、カミューを眺め下ろしていたマイクロトフは暫く無言で、それから小さく笑った。
「…そうか」
「だからお前も、これ以上の寄り道はするな。二度も降格すれば充分だ。十五年後には、俺は団長位にいるつもりでいるから、お 前も倣えよ?」
群青の目を丸くしたマイクロトフが、再び首を傾げた。俺もなのか、と呟く彼に当然だろうとカミューは頷く。
「俺は、お前以外の人間と肩を並べる気はないからな」
それにどうせ上に立つなら、早かろうが遅かろうが一緒だろう、同僚は気心が知れている方がやりやすいしなと、付加した言葉は、 本当に付け足しでしかなく。
「…一つ聞いていいか、カミュー?何故、十五年後なんだ?」
十年も副長でいる気かと訊いてくるマイクロトフを、カミューは斜めに見遣った。
「上がつかえているだろう。ユージィン様は今三十半ばだから、十五年もすれば勇退だ。絶対に戦死しそうに無いからな、あの人 は。その間は待つさ」
マイクロトフが、笑った。
「…了解した」
立ち上がったカミューが、マイクロトフを差し招いた。近くまで来いと、指で示されるままに鉄格子のぎりぎりまでマイクロトフはにじ
り寄る。
不意にカミューの秀麗な貌が近付けられた。既に見慣れた角度で寄ってくる顔を瞬きもならず見ているうちに、やわらかく唇が触 れ合わされた。
「…武運を」
出陣の時と同じ言葉を吐いて、カミューが離れる。不思議そうな表情をしたマイクロトフに対して、カミューは悪戯っ子のような 眼で笑った。
「明日は査問会だろう。爺共に負けるなよ」
「……目上に対してそういう言い方は感心しないぞ、カミュー」
「過去の判例を捲る事しか能の無い石頭なぞ、爺で充分だ」
もう一度晴々と笑って、カミューは独房を後にした。
end
オリキャラだらけですみません。
自己設定満載ですみません。
書きかけの子騎士話と被っててすみません。
リクからずれててすみません………。
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