豪雨
「ガポガポする」
「さっさと脱がないか」
「中で靴下がぴたーってなってる」
「ほら、タオル」
「ありがとうございます。うわぁ、裾なんかほら、ポタポタと」
「そこで絞るなよ」
「絞らないですってば、やだなぁ。あ、ほら髪も濡れてますよー」
「うわ、こらっ。俺よりきみだろう!」
「んじゃ拭いてください。はいっ!」
「………」(むっつりしながらも拭いてあげる)
「んふふふふ〜」
2006/06/15
シャンプー
「……どーしようかと思ったんですけどね。評判良いし」
「何の話だ」
「TSUBAKIです」
「椿? あいつがどうした」
「シャンプーですよ」
「椿のか?」
「いえ、そうじゃなくてシャンプーのTSUBAKIです」
「は?」
「……CM、見ないですもんねぇ…」
「なんなんだ」
「まぁ、だからこれまでどおりASIENCEにしておきました。髪質に合ってるみたいだし」
「はあ?」
「アジアンビューティーですよ」
「……わけが分からん」
「俺もわかんなくなってきそうです」
2006/06/28
TSUBAKIです
ネイル
「あれ、右足引きずってないですか?」
「……分かるか」
「もしかして、怪我した?」
「あぁ、足の親指の爪がな」
「うん?」
「割れた」
「痛あー!」
「痛いのは俺だ」
「分かってるけど、うわ、イッター!」
「そんな耳を塞ぐほどか?」
「いやいや、なんかこう、そういう話ってゾクッときますね。あ、それじゃあちょっと洗ってきてくださいよ。靴下脱げます?」
「ああ…?」
「ちょーっと待ってて下さいね」
数分後
「なんだそれは」
「ネイル」
「は?」
「色、爪の色に近いから気にならないですよ」
「いやそれは見れば分かるが、何故」
「ネイルを馬鹿にしちゃいけませんよ。綺麗に塗ると、爪の保護にもなるんだよねこれが。だから割れたところに塗ってあげます」
「塗れるのか」
「もっちろん!」
「……技、か」
「はい!」
「なら頼む」
「はーい。って……うわぁ痛いなぁこれ」
「だから痛いのは俺だ」
「ですよねー」
2006/07/04
新しいサンダルを履くと、きちんとネイルしたくなるもんで。
思いやり
「……おからだ、おだいじに、またあうひまで、げんきで」
一句一句小さく呟きながら手紙をしたためている、その背中を見て思わず口元に笑みが浮かんだ。
時折こうして手紙を書く姿を見ることがある。
筆不精の身にしてみれば、それはマメに映るし、そうした気配りが彼の広く隔たりのない人付き合いの輪を繋いでいるのだろう。
「まる……と、にせんなな、ねん……ご、がつ」
そろそろ書き終えるらしい。
ならこの後ポストまで短い散歩に出掛けるのかもしれない。フットワークの軽い彼なら「ちょっと」の一言でさっさと出て行きかねない。それではちょっと久々の休日、できれば四六時中傍にいたいという自分の欲求が満たされない。
それならそれで、身軽な彼にたまには自分が寄り添うのも良いかもしれない。
ふっと笑んだ口元をそのままに、立ち上がる。
寝室にある財布だけを手に取ってちらりと見れば案の定。切手を貼った絵葉書をひらりと閃かせた彼は、そのまま真っ直ぐ玄関へと向かうところだった。
「おい」
「へ?」
「それ、出しに行くんだろう。ついでに買い物に付き合ってくれないか」
振り返った彼は、きょとんとしていた。だが直ぐにその顔にじわじわと笑みが広がっていく。返事は決まったようなものだ。そのまま彼の横を通り過ぎ、一足先に靴に足を突っ込んだ。
「はいっ」
後ろから元気な声が追いかけてきた。
2007/05/15
思いやりは日々の心の糧
シャンプー
夜。椿が美味い酒が手に入ったからとわざわざ電車に乗って押しかけてきた。これは今夜は泊まるつもりかと、既に五代の手料理をつまみ食いしながらちゃっかり食卓に座っていた男を見て、帰宅したばかりの一条は半眼で睨んだ。
「あ、一条さん。おかえりなさい」
「ただいま五代」
「お風呂沸いてますよー」
「ありがとう。流石に汗だくだ」
「暑いですもんねー。あ、料理はまだまだ時間がかかるんでゆっくり入ってきてください」
「分かった」
そして一条はそのまま風呂場に直行する。
「おーい、こら。客に一言くらい挨拶してけ馬鹿も〜ん」
何か声が聞こえたが構うものか。
一条は汗を吸ったシャツを脱ぐと洗濯機の中に放り込み、まずは冷たいシャワーで汗と埃を洗い流した。それからお湯に切り替えて全身を温めると、全身を洗った。それからついでに髪も洗おうとシャンプーのボトルに手を伸ばした。ところが。
その頃、リビングでは五代が次々と運んでくる料理に必ず手を伸ばして味見と称したつまみ食いを繰り返す椿が、それでも律儀に一升瓶の酒だけは全員揃うまで開封せずに待っていた。
その時だ。ガチャ、と風呂場の方から扉の開く音がした。
「ん? 早いな」
呟く椿に五代が振り向く。「あれ?」と首を傾げた彼は、菜箸を手に持ったまま台所を離れるとひょいと廊下を風呂場のほうを覗き込んだ。と。
「五代、椿は」
「え?」
「椿が切れてる」
「あ、そうでした。切れちゃうんでしたっけ。でも洗面台の下を見れば大丈夫ですよー」
「……分かった」
そんなやりとりが聞こえた。そして五代が台所に戻ってくる。椿は―――意味不明な会話に指先に生春巻きを持ったまま固まっていた。
「俺、なんかしたか……?」
事の真相が分かるのはその十数分後。単にそれがシャンプーの名前だったと分かってからだ。
2007/08/23
ミニカー
「おお、一条」
「なんだ」
「これ、あいつのカルテな」
「……なんだこれは」
「トミカのミニカー。ホンダのシビック。先月の新車だぞ」
「………」
「五代が言ってたぞ。新車売り場で一瞬視線が固まるんだってな? あとこいつはオマケだ。面白くてつい買ってしまった。パトカーセドリックバージョン、な、よく出来てるよなぁ」
「…………」
「最近の玩具はすごいぞ。おまえは忙しくて玩具売り場なんぞに行く暇もないだろうがな、はっはっは」
「……………」
「あ、おい。こら黙って出てくな、おーい。………ちゃっかり持って帰りやがるんだからなぁ」
2007/12/12
おもちゃ売り場トミカのミニカーコーナーがすごい充実ぶり
美味し○ぼ
5「うわっ、吃驚した!」
1「どうした。何があった!」
5「あ、すみません、いやー驚いたなぁー」
1「何を読んでいるんだ?」
5「いえいえ。いやぁまさか山岡さんと栗田さんが結婚してたなんて知らなくて」
1「知り合いか?」
5「いえ、違うんですけど。ほら、俺、よく海外とか行ってるでしょ。学生の頃まではだからよく知ってたんですけど。いつの間に結婚したんだろ」
1「知り合いじゃないのか?」
5「っていうかですね、双子がいるんですって! 知ってましたか? 男の子と女の子の双子が! しかもその後に女の子がもうひとり。いやー栗田さんすごいなー。って、あ、そうか、もう栗田さんじゃなくて山岡さんなんですねぇ」
1「有名な人なのかそれは」
5「そりゃあ、有名ですよ。でもそうかー、海原雄山もおじいちゃんなのかー。いやいや吃驚ですよー」
1「……誰なんだ………」
2008/02/08
きっと全国的に有名