クラス平均90点以上になる漢字練習指導法    
           ー赤ねこ漢字スキルのユースウェアー       2004. 1. 8  
                                  山川南部小学校 下川善史


 2002年度より、漢字指導に取り組んできました。その結果、クラス平均点はよくなってきました。
 しかし、一方、「できる子」と「できない子」の差が目立ってきました。
 しかも注目すべきことは、これらの「できない子」のほとんどは、生徒指導上の「気になる子」として日頃から話題になっている子なのです。
 「できる子」を伸ばすのは誰にも容易にできます。問題は、「できない子」をどのようにして伸ばすか、なのです。
 「できない子」をできるようにさせることは教師の大切な仕事です。どの子も勉強ができるようになりたいと思っているのです。
 
 そこで、「クラス平均90点以上になる漢字指導」のパート2を提案します。
 このパート2は前回提案した内容の「指書き」「なぞり書き」「うつし書き」の指導法をさらに詳しくしたものです。
 
【心得】
 この指導法を行えば、「できない子」ができるようになっていきます。クラス平均90点以上が可能になります。宿題を出さなくても実現できます。実際に、全国の教師や保護者から感謝の便りが多数届いているそうです。
 ただし、ちょっとでも「我流」が入るとダメです。ここで紹介する通り、忠実にやっていただかなくては効果は保障できません。 


◆指導のポイント
 @あかねこスキルは1週間(5日間)で1回分(練習2ページとテスト)を行う。
 A漢字指導は、毎日5分〜10分、国語の授業の最初に行う。(学習のパターン化は見通しを持
   たせ、心を安定させる。特に、ADHD児に効果的。また、授業の前半部分が重要。ADHD児は
   授業の初めにペースに乗れないと、その後、集中するのは極めて困難となる)
 B3つのステップ「指書き」「なぞり書き」「うつし書き」で指導する。(途中省略厳禁)
 C漢字テストの曜日は決めておく。
 D単元は無視。(漢字練習は独立させて指導してかまわない)


<1日目>

○右ページの右半分を練習する。
1.指書き

指示1 案内所。案外。名案。図案。の「案」を練習します。
     まずは、筆順通りに机の上に指で練習しなさい。これを「指書き」と言います。
     画数は必ず声に出します。
     声に出して言うと、指で覚えて口でも耳でも覚えますから、2倍・3倍覚え方がレベルアッ
     プします。 はじめ。    

ここで、画数を声に出している子を、必ずほめます。

 曲がるところ、はねるところ等は「サン」ではなく、「サァン」や「サァーン」などと長さに変化をつ
けて言いなさい。

以上のように、声の出し方も指導します。

2.空書き

指示2 全員、指を出しなさい。ひじを伸ばして。いっしょに空中に書きます。これを「空書き」と言
     います。 みんなで声をそろえて、さん、はい。

この時、教師は筆順のあやしい子をすばやく見抜いておきます。
 ※バリエーションとして、下記のように「変化のある繰り返し」でたくさん練習させる。
    ・クラスを半分に分けて、向かい合って
    ・先生のおなかに
    ・友達の手のひらに
筆順を確実に覚えたか、チェックするために、「目をつぶって空書き」させる方法もあります。
見ないで書けるようになったら、鉛筆をもって「なぞり書き」をさせます。

3.なぞり書き

指示3 鉛筆を持ちなさい。
     スキルの下の方に薄く書いてある漢字があります。そこを指で押さえなさい。隣とチェ
     ックします。 ここ(教師が押さえて見せる)を隣の人が押さえていたら、手をあげなさ
     い。それをなぞります。これを「なぞり書き」と言います。筆順通りに1回なぞりなさい。
     はじめ。

 この時に大切なことは、下記の2点です。
  ・声を出して書かせる
  ・「1mmもはみ出さないように」という指示を与え、しっかりと灰色の線の通りになぞることを意識させる
 特に初めのうちは、1文字書けたら教師の所へ持ってこさせ、○をつけて個別評定を行う、等の指導が大切になってきます。

4.うつし書き

指示4 今度はそのすぐ下に練習します。一画目だけありますから、それをなぞって二画目から
     後を自分で書きます。これを「うつし書き」と言います。はじめ。

この時も画数を声に出しながら、お手本とそっくりになるように丁寧に書かせます。

指示5 では、最後、一番下の何も書いてない所に書きます。
     ここは、何も見ないで書きます。上の方を見えないように筆箱かノートでかくして書きなさ
     い。 忘れた人は見て書いていいです。はじめ。

 これで一文字目の漢字指導が終了です。
 初めて指導する場合、これくらい丁寧に指導しなくてはなりません。時間も当然かかります。この最初の指導を少しでも手抜きすると、1年間苦労します。
 教師のこれだけの丁寧な指導があるからこそ、クラス平均90点は実現できるのです。
 右半分の残りを同じように練習させます。


<2日目>
○右ページの左半分を練習する。
 1日目と同じ要領で5分間で行う。


<3日目>
○左ページを練習する。
 10分なら10分をルール化するのがユースウェア。時間が来たら途中でも止めさせることが重要です。

1.読み仮名を書く

指示1 (今日練習するページを開けさせて)これと同じテストをこの次にします。
     @の漢字からIの漢字の読み仮名を書きなさい。
     わからないときには、下の「漢字の読み方」を見ていいです。時間は1分です。

全員書いたら、指書きの復習をします。

2.指書き

指示2 @の漢字から指書きを1回ずつしていきます。書き順を忘れた人は、前のページを見な
     がらしなさい。

3.なぞり書き

指示3 一番上のうすく書いてある漢字を「なぞり書き」します。時間は3分です。
     ・・・・・・・「1分経過」・・・・「2分経過。残り1分」・・・・「残り30秒」・・・
     ・・・・「時間です。止め」
     なぞり書きが終わった人は手をあげなさい。よくできました。
     まだの人、手をあげなさい。はい、急いで書きなさい。書き終わっている人は、なぞり書
     きがはみ出していないか、自分でチェックしなさい。

 以上のように時間を告げて下さい。見通しを持つことができ、緊張感も生まれます。
 教師は期間巡視しながら、はみ出さないように書いている子を見つけて、「○君は、はみ出さないように書けているね。とっても丁寧!」というようにほめて下さい。他の子も丁寧に書こうとします。
 極端に遅い子がいる場合は、初めは5分、次回は4分・・・・、というような段階を作った指導を行います。クラスの実態に合わせた調整が必要です。

4.うつし書き

指示4 二段目の四角に「うつし書き」をします。時間は3分です。はじめ。(指示3と同様、時間
     経過を言う)止め。

 書き終わったかどうかを確認し、終わった子をほめます。終わっていない子には書かせ、終わった子は書き間違いがないかチェックさせます。
 これで、3日目の練習は終わりです。子ども達には、テストの予告を必ずしておきます。

指示5 明日は漢字テストです。今日練習したのと同じ漢字をテストします。
     一番下の四角がまだ空いていますね。これは明日のテストの前にもう一度念のために
     練習するので、そのために空けておきます。



<4日目>
1.テスト前の練習(朝の時間にしてもいいと思います)
 昨日残しておいたところをやります。

指示1 テスト前の最後の練習です。上の方を隠してやります。読み仮名は一番下を見れば載
     っています。どうしても分からない漢字は、ちょこっとだけ見てやって構いません。
     時間は3分。用意、はじめ。

2.テスト本番
 テスト時間は、3分あれば十分です。名前を丁寧に書かせ、テストをします。

3.採点
 採点は子どもにさせます。
 「正しい見方」を学ばせるのが目的だから、絶対的に子ども同士で付けさせた方がよいのです。
 ただし、1年生には少し無理な点もあるかもしれません。様子を見て判断してください。

指示2 お隣と交換しなさい。お隣のいないところは、前後と交換します。
     今からテストの採点をします。赤鉛筆を用意しなさい。
     採点は、厳しくやります。「まぁ、いいか」と、甘く○を付けてあげると、間違ったまま覚え
     てしまいます。それで中学校、高校へ行って困ることもあります。そうならないように、お
     友達のためを思って、厳しく付けてあげなさい。

 ここで、採点基準によって隣同士で意見が食い違い、騒がしくなってきます。そこで、1回、止めさせます。そして、次のように言ってルールを示してやります。

指示3 採点していて、お隣同士、意見が違うことがありますね。そういう時は、どうしても変だな
     と思ったら、2人そろって先生の所にいらっしゃい。先生が判断してあげます。

 質問に来た子には、次のように端的に採点基準を示します。

説明1 手へんは、はねます。・・・画数が変わってしまうから×です。・・・ 

 簡単なことは、みんなの前で言って構いません。こうすることによって、子どもは自分で判断することができるようになります。

 また、○を付けるときには「隣の子のスキルです。失礼になってはいけません。丁寧にかっこよく○を付けてあげなさい」と一言つけ加えておきます。いい加減で、へんてこな○を付ける子がしばしばいます。それを防ぐ指示も用意しておかなくてはいけません。

 点数を付けたら相手に返してあげます。返されたら自分のテストで合っていた問題番号に赤ねこシールを貼らせます。
 「シールがはがしづらい」という声があるそうですが、これは当然です。
 何のためのシールかと言えば、この「貼る」という時間を利用して、間違えた子が練習する時間を確保できるようにしてあるのです。
 簡単にはがしてしまっては、その時間を作り出すことができません。
 
 採点の時間も、当然1人1人違ってきます。そこで、「間違っていたところ、書けなかったところは、裏に練習していなさい。」と指示します。「空白禁止の原則」の適用です。
 同じように、「満点を取った子でも、『合っていたけど、ちょっと自信ないな』という字があるでしょ。それを練習していなさい。」と添えれば、全員に作業指示を出すことになります。 

4.点数発表
 さて、採点が終わりました。

指示4 点数を出席番号順に発表してもらいます。名前を呼ばれたら返事をして、「何点です」と
     言って下さい。点数を言うのいやだなあって言う人がいるかもしれません。100点取っ
     た人でも言いたくない人もいるよね。そういう人は、先生のところに持ってきて、点数を
     見せて下さい。
     では、いきます。1番、○○君。・・・・

 指示4は、100点の人でもというところがミソです。これを添えないと、「ああ、あいつは点数が悪いから言えないんだ」と周りが思います。これも「できない子」への配慮なのです。
 皆の前で点数を言わせることによって、次回から全体の得点が急上昇します。
 「100点」「100点」「100点」・・・・と発表の声が続けば、教室全体に緊張感が生じ、「次は自分も100点取らないと」という励みになるのです。

 点数を言わせている間に、まちがえた漢字をテスト用紙の裏側に練習させておきます。時間にして1分〜2分です。これももちろん、「空白禁止」「全員参加」の原則に則っています。
 「100点の子も、ちょっと自信のないものをやっておきなさい。」と言えば完璧です。

 担任は、名簿を用意しておいて、点数をどんどん記入していきます。これで、点数記入まで一気に終わります。


<5日目>

○2回目のテスト
1.前日、間違えたところだけを再テストする
  間違えたところだけを再テストするから、子どもはがんばるのです。合っていたにもかかわらず、再度やらせるようなことをすれば、いっぺんに子どもは漢字が嫌いになってしまいます。

2.1分経ったら全員に止めさせる
  もちろん、それ以前に2人そろって終わってしまったら、採点に入って構いません。 

3.お互いに点数を入れて返す
  返されたら、シールを貼って、最終的な点数を報告をします。

 

 以上、あかねこ漢字スキルの指導法でした。この方法でぜひ「できない子」の漢字の力をしっかりつけてやって下さい。