第2回目にご紹介するベゴニアは、黄花を咲かせる根茎性ベゴニア、ミクロスペルマ(=フィキコーラ)です。

ミクロスペルマ(B.microsperma Warb.=B.ficicola Irmscher)

1.歴史

   1954年ドイツの植物学者イルムッシャー(Edger Irmscher)がアフリカ・ナイジェリアでゴムの木に着生しているのを発見したものが植物界で出回り、一般的に栽培されるようになりました。種名のフィキコーラは、フィカス属(ゴムの木)に着生するという意味で名付けられました。

   一方、ミクロスペルマのほうは、同じくドイツの植物学者であるヴァルブルク(Warburg)がアフリカ・カメルーンで発見し、別の文献に1895年発表したものです。ところが、一般の目に触れなかったためか、フィキコーラのほうが流布してしまって、ミクロスペルマはしばらく忘れられていました。ところが最近アメリカのベゴニア栽培家であるミラー(Don Miller)が文献を調べていてこの事実に気づき発表したのです。植物の命名規則によると、先に名前を公表したものに優先権があり、ミクロスペルマのほうが60年ほど前に発表されていたため、その様によばれるよう改められました。とはいってもどちらの名前も同じ種類を指すものですから、永年使ってきたフィキコーラの名前も捨て難く、いまだにフィキコーラとよぶ人も多いようです。

   日本では、日本ベゴニア協会の植村理事が1968年イギリス・エジンバラ植物園に留学中の宮内庁庭園課 平馬 正氏から、エクゾチカ(B.exotica)などと共に送られたものを、大船植物園の木崎技師に依頼して挿し芽増殖したものに始まります。 

2.形状

   種名の表すように(microsperma=小型の種)小型の根茎性種で、根茎は直径7-8mm前後とごく細く、よく枝分かれして地上を匍匐します。節間は詰まって短く、葉柄が混み合って葉を茂らせます。

   葉は楕円形〜長卵円形で先が尖り、その先端が下向きになる傾向があります。葉の大きさは10-12cm x 6.8-7.8cmで、条件により長めのものと丸みがかったものとができます。葉の表面は非常に特徴的で、縮緬状の凹凸が全体にあり、凸部にはやや硬い白毛が3-5mmの長さで生えています。全体に薄い若竹色で、葉柄の付け根から淡白緑色の葉脈が5-7本四方に伸びています。一方、裏面は薄い黄緑色、白毛が疎生します。幼葉は黄味がかった薄い緑で成長に従い、薄い若竹色に変わっていきます。葉柄は基部で直径5mm、先端部で3mm程度、長さは5-19cm、淡緑色、まれに白色の毛を疎生し、蓮の葉状に葉身の中心より幾分下に偏って付いています。

   花は先端に近い葉腋から次々と花梗を伸ばしてその先端に花を付けます。多くの根茎性種が冬咲きなのに、本種は条件さえ良ければ休み無く花を咲かせます。花梗は基部で直径3.5mm、先端部で同2.5mm前後の円柱形で7-14cm前後に伸びます。花梗は先端で2叉に分かれ、2個の雄花とその中間に1個の雌花を付けます。雄花は大きいもので18 x 18mmの円形に近い2弁とその中央の葯束からなり、、葯は茶筅状に一方に向いてついています.花弁は質が厚く濃い黄色で、外側は橙色を帯びます。雌花は13 x 13mm前後の円形に近い2弁と子房によって形成されます。花弁の質は厚く、内側は鮮黄色、上方外側は橙色を帯びています。子房は下位で、18 x 5mm前後の丸みのあるペン先状で、4個の稜角を持つ四角形、4室を持ち、淡黄緑色。柱頭は4つに分かれ、その先端は馬蹄形状に丸く拡がり、緑がかった黄色。自家受粉で種子はよく実ります。

3.栽培と増殖

   強すぎる光線と空気の乾燥を嫌いますので、テラリウムなど透明な容器に入れて明るい室内の窓際で栽培すれば、手間もかからず楽しめます。ベゴニア一般に言えることですが、過度の高温や低温には弱いので、エアコンのある人が住んでいて快適な部屋(温度が15-25℃,湿度が50-70%)で明るい窓際にインテリアとして置いておけば、次々と黄色の花を咲かせて楽しませてくれます。

   増殖は、種子を取って実生繁殖をするほか、葉片を水苔、ピートモス、バーミキュライト、パーライトなどに挿しておけば1月ぐらいで根が出て芽も動き出しますので、その際小さなポットに植え替えてやれば増やすことができます。勿論根茎を上記の用土に置いておくだけで根と芽を出させる事ができます。

(日本ベゴニア協会「ニュースレター」参照)