シャワーコーヒー  

T子がシャワーから出てきて、キッチンをうろついている。
彼女はいつも勝手にシャワーをつかう。後始末もしない。
髪をタオルで巻いて、おもむろに電気ポットに手をのばそうとするのを見て、
「コーヒーなら、コーヒーポットで沸かした方がいいよ」とわたしが言う。

聞こえたのか聞こえなかったのか、T子は電気ポットの取っ手をつかんで持ち上げた。
「わたしのお湯使ったでしょう」と電気ポットが軽くなっていることを非難した。

「コーヒーは沸かしたてで入れた方がおいしい」とわたしが言うと、
T子は「わたしのお湯、何に使ったの」と電気ポットを突き出してくる。

わたしをそれに答えず、ポットを受け取ると、
挽いたコーヒー豆の上に、そのままのお湯を注ぎ始める。

ポットの口から出るお湯はシャワーとなっている。
やわらかく降る雨のようになって、挽かれたコーヒーに注がれ、いい感じに抽出されそうだ。

T子はすでに居なかった。

わたしはそのコーヒーをゆっくりと味わう。
コーヒーはおいしくはなかった。苦味がいつもより強く出ている。
いい感じに抽出できたように見えただけで、実際はそうではなかった。


※沸かしたてでない「ぬるいお湯」を使うと、普通は酸味と苦みもあまり出ないはず。
なのに、苦いと感じるのはちょっと変。やさしい感じの味わいではなかったということだろう。
※わたしはT子に怒りを感じているが、ふだんは何も言わないでいる。
※自分の思い通りに何でもしたがるT子。自分から何もしない。誰かがするのを待っている。
※この夢も5秒ほどの間にみた夢だ。夢はたいてい圧縮されている。
10倍速の夢のビデオを見せられたあと、通常のスピードで再生しながらを思い出している。
身体を動かさないようにして、夢を振り返り、文章に変換しながら思い出す。
夢のタイトル「シャワーコーヒー」が浮かんだとき、そっと目をあける。
描き起こした「映像と字幕」を記憶できたことを確認すると目を閉じる。
ふたたび眠ることもあるし、すぐに起きてコンピュータに向かうこともある。
今日は後者だ。



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