ネタバレ感想 : 未読の方はお戻り下さい
黄金の羊毛亭 > シリーズ感想リスト作家別索引 > スペシャルX > 斬首人の復讐

斬首人の復讐/M.スレイド

Primal Scream/M.Slade

1998年発表 夏来健次訳 文春文庫ス8-3(文藝春秋)

 「Headhunter」と題された第一部で〈ヘッドハンター〉の正体が、そして「Decapitator」と題された第二部で〈刎刑吏{デキャピテイター}〉の正体が、それぞれ明らかにされたことを考えると、「Headshrinker」と題された第三部では〈ヘッドシュリンカー〉の正体が明らかになることが予想できるでしょう。
 もちろん、作中の〈首細工師{ヘッドシュリンカー}〉は〈ヘッドハンター〉に他ならないのですが、“ヘッドシュリンカー”という言葉に“精神科医”の意味もあること(121頁参照)や、「傀儡術師」という章題(241頁の伏線?を参照)から、あの人物が黒幕であることを見抜くのはさほど難しくないと思います。
 あとは、第二部終盤、ディクラークが夕食のダブルブッキングをしているのも、読者にとっての伏線といえるかもしれません(事件解決の後、ディクラークはジル・マクベスと夕食を共にしたのでしょうか)。
 真相がわかった時点で驚かされたのは、序盤から登場するスパーキィと“母親”の会話が、『ヘッドハンター』でみられたような脳内での会話ではなく、現実に行われたものだった(と思われる)ことです。『ヘッドハンター』を読んでいたせいですっかり騙されてしまいました。

 〈刎刑吏{デキャピテイター}〉の正体については、伏線が不足のために唐突に感じられてしまいます。〈狂い狩人〉になること(中略)それこそが冒険{アクション}ってものだろう”(44頁)という台詞は、気になってはいたのですが……。もっとも、〈ヘッドハンター〉事件が決着したせいで個人的にはかなりどうでもよくなっていた、というのが本音です。

 〈ヘッドハンター〉の正体が明らかになる経緯については、『ヘッドハンター』『髑髏島の惨劇』を読んだ時点でこのように予想していたのですが、〈ヘッドハンター〉事件の捜査だということをエルヴァイラ・フランクレンが知らされていなかったことを失念していました。また、ディクラークがアルモア・フラッドの話題に興味を示さなかったのは予想外でした。
 基本的には『ヘッドハンター』の繰り返しにならざるを得ないので、真相が解き明かされる過程に目新しさがないのは残念ですが、こちらにはあらかじめ真相がわかっているために、予期せぬどんでん返しに遭遇するディクラークの心理を冷静に眺めることができるのが面白いと思います。

 最後に。実は本書で最も意外だったのは、あのジンク・チャンドラーが最後まで災難といえるほどの災難に遭わずじまいだったことでした(笑)。

2005.09.02読了

黄金の羊毛亭 > シリーズ感想リスト作家別索引 > スペシャルX > 斬首人の復讐