「文学横浜の会」
エッセー
2000年6月
「仕事について」 最近、たてつづけに二つのドキュメンタリー番組を観た。一つは沖縄が舞台で、 障害者が仕事を求めて苦悩する様を描いており、 もう一つは大企業の社内リストラで苦悩する中高年を描いていた。 東京オリンピックの開催された年、沖縄では風疹が流行って、その影響と思われる 多数の聴覚障害者や聾唖障害者が生まれた。甲子園への地方予選に障害者チームとして 出場する程の数だったと言う。 その人達が今まさに三十代半ばを過ぎ、それぞれの人生を歩んでいる様を映像は丁寧に描いていた。 困難な状況にも係らず、南国育ちらしく、明るく前向きに人生を送っているように思われ、 声援を送りたくなった。 と同時に沖縄に残った障害者には(多分、本土でも)、仕事を見つける事さえ困難な事実もある。 どんな仕事でもしたいと言う本人の意欲にも係らず、時給700円の仕事でさえ、中々就けないのが現実だ。 それでも彼等或いは彼女等は、仕事をしたいと、本来の明るさを失わないで頑張っている。 一方の中高年のリストラを扱った番組では、大企業のサラリーマンが関連企業にリストラされる と言う、企業の生き残りを掛けた、働く者にとっては厳しい現実を追っていた。 確かに、長年馴れ親しんだ職場を離れ、関連企業とは言え、別会社への移籍となれば辛い事だろう。 内示を受けて移籍するかそれとも退職するか、まず決断を迫られる。 移籍したくとも通勤事情で単身赴任を余儀なくされ、やむなく退職を決断せざるを得ない人もいる。 移籍しても新しい仕事に適応出来るか心細いし、潔く退職しても次の仕事がすぐ見つかる保証はない。 いずれにしても厳しい現実である事に変りはない。 沖縄の障害者が、例えば時給700円でもいいから 仕事がしたい、と言う切実な番組を観た後では、何か複雑な思いがした。 何故なら、大企業でリストラされても一応仕事は保証されている。 それに時給700円よりは遥かに高給だろう。 無論、うちの会社のリストラはそんなに甘いものじゃない、と言う声もあるかも知れない。 いずれにしろ、これが今の日本の一面である事は確かだ。 (K.K) |
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