「文学横浜の会」

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2003年2月2日


「イラク・北朝鮮的なもの」

 早朝、何気なく何時ものように枕元に置いてあるラジオのスイッチを入れると、 アメリカ合衆国大統領のメッセージが流れていた。何やら沈痛な声音で、 これはイラク攻撃が予想に反して早く始るのか、とぼくは早合点して、耳を傾けていると、 どうやらスペースシャトルの事故が発生して、7人の犠牲者が出た、と知った。 一国の元首ともなると、大変だなぁ、とつくづく思う。

アポロの事故としては、確か、打ち上げ間もなく爆発した、十年前の事故以来の犠牲者だと思う。 アメリカでは「テロを思い出した」と言う人もいると聞くが、事故との観測が強い。 「事故は忘れた頃に発生する」と言う事でもあるだろう。 宇宙旅行も、今の科学技術では、まだまだ危険の伴う”冒険”なのかも知れない、と改めて思う。

事故が与えたアメリカへの影響は大きいと思うが、事故原因を究明し、いずれ再開するだろう。 アメリカの悲劇だなどと言わず、ここは新しい科学技術の問題点として捉え、 前向きに原因を究明してほしい。

むしろ、イラクに圧力を賭けているアメリカの政策にどんな影響を与えるか、ぼくにはそれが心配だ。 国民が、国の威信が傷ついたと考え違いをして、そんな事のために判断を誤るような事があってはならない。 それはないと思うけどね。

 北朝鮮問題も、何やら混沌としてきた。 アメリカの偵察写真から、北朝鮮内での核燃料地域への動きを察知した、と言うのだ。 核問題が浮上して、拉致問題もどうやら袋小路に入ってしまったようだ。 ここはじっくりと向き合わなければいけない。

 イラクにしろ、北朝鮮にしろ、独裁者の国だ。 と言っても、ぼくは行ったことがないから、マスメディアの情報を介してそう思っているのだが…。 もしそうだとすれば、日本の戦前戦中に似ているらしい。 残念ながらと言うか、幸せな事に、ぼくはそんな時代は知らない。でも想像は出来る。

組織を束ねるには、何か絶対的な権力者を据えてすれば、これほど容易な事はない。 日本の場合は、幕末の混乱期に天皇を担ぎ出して、統一のシンボルとしたのだだろうし、 イラクの場合はフセインが力で権力を勝ち取り、北朝鮮の場合は独立を勝ち取った先の権力者の二代目、 と言う事だと思う。 権力者の成り立ちも時代も違うけど、国民の自由を奪った、と言う事では同じだと思う。

やっかいな事に、一度そういった権力者が出ると、権力者にまともな情報が伝わらなく傾向にある。 所謂、権力者に取り入ろうとする取り巻きが必ず現れて、相対的に、より権力者の権力が強くなる。 そして組織そのものは、長い目で見れば衰退して行く。歴史的に見ても自明な事だと思う。

これは、国だけの事ではない。組織のある処、そうした要素を含んでいるのではないか。 会社組織でも、そうした”小フセインさん”や”小キム・ジョンイルさん”がいるんじゃない? 会社でなくても、部とか課とか、そうした小権力者はきっといるよ。

だからぼくは、こんな何時リストラされるか判らない時代だから、 もしそんな目に遭っても、刑務所に送られなかっただけでよかった、 殺されなかっただけでよかった、と思う事にしてるんだ。

ぼくみたいに文句ばかり言っていたら、そんな時代に生きていたら、或いはそんな国に生まれたら、 きっと刑務所に送られていただろうし、生きられなかっただろうな。 でもやっぱり生きたいから「権力者万歳!」なんて言っているかも。 こればかりはそんな立場になってみなければ、ぼくにも解らない。

 戦争だけは、何としてでも避けてほしいと思う。

<K.K>


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