「文学横浜の会」
特集
「 箱 根 駅 伝 」
2006年の見どころ
ー2006年箱根駅伝出場大学ー
一言でいえば、「駒沢大」の5連覇はあるか、でも東海大は強いということだろうか。
また、今年の新しい戦力としての佐藤(悠)選手(東海大)、佐藤(秀)選手(順天大)を代表に阿久津選手、
高橋選手、竹澤選手(いずれも早稲田大)、そして杉本選手(東海大)と、
今年も高校時代に実績を残した新人達の箱根デビューはあるか、そしてその結果に注目したい。
先ず、「駒沢大」の5連覇だが、可能だろうか?
4連覇した昨年までは絶対的なエースといわれる選手がいたのだが、今回はそうした選手がいないのが痛い。
でも層の厚さは相変わらずで、優勝候補の一角にいることには間違いないだろう。
「駒沢大」の強さはその安定した走りにあるのだが、山梨大のM・モグス選手のような大砲クラスの選手の前では、
その安定感もむなしく感じるのはぼくだけだろうか。
M・モグス選手ほどハーフマラソンの実績はなくとも、それに匹敵する選手として、サイモン選手(日大)、
伊達選手・佐藤(悠)選手(ともに東海大)、上野選手(中央大)といった大砲クラスの存在が今回の特色だが、
そうした選手でも本番で力を発揮できるかは、やってみなければ判らないのが長距離だ。
何より当日の体調がもろに成績に関わり、だから箱根駅伝が面白いのだが、今回もみどころは沢山ある。
「古豪!中央大学陸上部応援ホームページ」(http://homepage2.nifty.com/chuo84/)の
「2005年学生長距離50傑」によれば、ハーフマラソンの50位以内の選手をみると東海大が7人、
日大、日体大、亜細亜大がともに5人、駒沢大が4人、順天大、早稲田大、国士館大が3人づつランクされている。
これだけをみると東海大の選手層の厚さが目を引く。無論、実力がありながら記録のない選手や、
出場した大会によっては記録の出やすいコースもあるから、持ちタイムだけで判断する積もりはないが、
東海大のチーム力が秀でているのは明らかだ。
箱根駅伝の前哨戦といわれる「上尾ハーフ」「府中ハーフ」「横須賀シティー」、日本体大での記録会、
そして関東学連の記録会も終わり、各大学の現状も垣間見えてきた。
しかしそれらのレースに出ていない有力な選手もいるから、その成績だけではなんともいえないし、
昨今は敢えてこれらのレースには参加させない大学、あるいは出ない選手もいるという。
これらのレースを、学内選考の一環としてとらえる大学もあるようだが、
そうした位置ずけはだんだん少なくなったように思える。むしろ学内選考の線上にいる選手を競わせる大学もある。
それだけ各大学内での選手の管理が充実してきたということだ。
選手自身が故障している場合もあるだろうが、そうしたことも含めて、
チーム内の手の内を見せたくない、という大学もあるだろう。もう既に正月に向けた戦いが始まっている。
今年の箱根で5区山登りで驚異的な記録を作った順天大の今井選手が、
全日本学生駅伝や前哨戦となる各レースに参加していないのが気になる。今井選手をはじめ順天大には高校時代に活躍した選手、
つまりエリート選手を数多く抱えているが、出雲駅伝、全日本駅伝とこれまでの成績はぱっとしない。
箱根駅伝でも、名のある選手を抱えているにも関わらず優勝争いから遠ざかって久しい。
必ずしも高校時代に活躍した選手が大学でも活躍できるとはいえない一例だろうか。
選手個々の体調管理を含めて、奮起を期待したい。
その中にあって、中央大の加藤選手の全日本駅伝での区間賞には何故かほっとした。
高校時代の活躍を知るファンには懐かしい名前であり、よくぞ出てきたという思いもある。
耳にするところによると入学以来、怪我に泣かされていたとのことだが、よくぞ腐らず出てきたものだ。
府中でのレースでは、最後は全力を出し切った感じで、必死さがでていた。
加藤選手自身の「結果を残さなければ使って貰えない」と言うコメントを目にしたが、
まさにそうした思いが活躍の原動力になる。本番でも走るのをみたい選手であり、どんな走りをしてくれるのか楽しみだ。
1次エントリーの選手も発表になって、益々「箱根モード」になった。
今年は心配されていた注目選手のエントリー漏れはないようだが、
果たしてどんなコンディションなのかベールに包まれた選手もいる。エントリーはされたものの、
実際は出場できなかったと言う例も過去にあるから、万全であるとは言い難い。
選手やチームにとってはこれからがまさに勝負である。
万全の状態に調整できたチームこそ栄冠に最も近づけると言える。
さて、今年の予選会も様々なドラマを呼んだ。
特色と言えば、東洋大が圧倒的な強さで1位通過したことと、
國學院大の2年ぶりの出場、またも持ちポイントで泣いた拓殖大だ。
それにM・モグス選手(山梨大)の強さは同じ学生とは思えない、次元の違う強さだ。
山梨大はM・モグス選手なしには予選通過はなかったかも知れない。
そして今年もまた、新しいエースの誕生を思わせる新人が出てきた。早稲田大の1年生・竹澤選手だ。
上尾ハーフでも東海大の伊達選手に先着した実力は本物とみたい。このまま大きく育ってほしい。
<予想>
毎回のことながら、これは全く個人的な楽しみである。
・優勝に最も近いチーム
<東海大、駒沢大、>
・東海大
その点では中井選手の復活は大きいが、誰が山を走るかを含めて山をどう乗りきるかがキーポイントとなる。
恐らく、山を無難に乗り切れば優勝に最も近いし、
1年次の中井選手のような活躍があれば、他を大きく引き離して勝負がついてしまうかも知れない。
それほどに選手層は厚い。
・駒沢大
・対抗としては、日大、中央大、それに日体大、順天大
・日大
・中央大
それにはまず1区の出だしに注目したい。最近のレースでも、出雲路を除けば出遅れの感はいなめない。
1区の出遅れでも上位に顔を出すのは、実力があるからと思いたいが、優勝を狙うには、1区での出遅れは許されない。
伝統校故のプレッシャーがあるのだろうが、それをはね除けてこそ栄冠はある。1区を無難に乗り切れば面白い。
・日体大
・順天大
・波乱を起こすとすれば
<亜細亜大、東洋大>
・亜細亜大
・東洋大
・上位を窺うのは
<中央学院大、法政大、神奈川大、早稲田大>
・神奈川大
・早稲田大
・中央学院大
・法政大
・先ずはシード権
<明治大、専修大、大東大、國學院大、山梨大、城西大、国士舘大>
山梨大にとってはまさに「神様仏様」なのだろうが、
M・モグス選手が何区を走るのかを含めてどんな記録を出すのか注目したい。
明治大は本番までに主力選手がどこまで調子を取り戻せるかが課題だ。
何れにしても、何度も言うようだが箱根駅伝は調整力の勝負とも言える。長距離の持ちタイムなど、
調子が悪ければ1分〜3分の違いなど無いに等しい。と言うことはどのチームにも上位に食い込めるチャンスがあると言うことだ。
勝負は既に始まっている。
選手諸君には楽しんでレースに取り組んでほしい。
廻りがどんなに熱くなっても、長い人生駅伝の、所詮は1区間なのだから。
<振り返って>
波乱の多いレースだった。まさに、これぞ箱根駅伝という展開だった。
今回に限って言えば「これはいけるぞ!」と思った大学が区間毎に何校かあり、観ている方では大いに堪能できた。
反対に監督・関係者には心臓に悪い展開だったのではないか。
箱根駅伝は優勝候補であっても、一つ間違えばシード落ちもあり、どのチームにも優勝の可能性がある。
それを目の当たりに見せてくれた大会でもあった。そして出雲駅伝や全日本駅伝と言ったレース結果も、事前の競技会の結果も、
この駅伝に限って言えば参考にしかならないことを改めて思い知らされた。大学間の実力差も年々なくなってきている。
それは今回復路での時差スタートを除いて襷が繋がったことでも、区間賞が分散したことでも明らかだ。
<往路>
振り返ってみると、1区での日体大・鷲見選手の飛び出しで始まったことが波乱の始まりだったように思える。
12月の記録会で1万メートルの自己記録に近い28分台を出した実績ある選手の飛び出しに、
このまま続くのかと不安をおぼえつつその勇気に<凄い!>と思いながら観ていた。しかしながら、案の定と言うべきか、
15キロ過ぎには後続の集団に吸い込まれ、後退してしまった。残り3キロ過ぎ辺りから中央大・奥田選手、
中学大・木原選手、駒沢大・藤山選手の区間賞争いになり、中学大・木原選手(1年)が中学大初の区間賞を取る。
優勝候補ともくされていた東海大・杉本選手はトップと約1分遅れの15位と遅れる。
2区は留学生のスピード競争に注目が集まった。
山梨大・モグス選手、日大・サイモン選手の力が学生長距離界では秀でており、どんな記録を出すのかに関心が集まった。
特にモグス選手は1年生でありながらハーフマラソン1時間1分台の記録をもつ飛び抜けた実力者だ。
序盤は軽快に飛ばした二人だが、2区のコースはそんなに甘いものではない。
15キロ過ぎにサイモン選手がまさかのブレーキを起こしてスピードダウン。
途中、区間記録を大幅に上回るペースで走っていたモグス選手だが、坂にきてペースダウン。
それでも1時間7分台の区間賞は見事だ。もし前半のペース配分さえ間違えなければ区間記録を書き換える可能性は大いにある。
次回が楽しみだ。
3区は東海大・佐藤(悠)選手と、中央大・上野選手の新旧スーパー1年生の走りに注目した。
二人は佐久長聖高校の出身でもある。
しかし上野選手は11月末に故障したとかで、出場も危ぶまれていたそうだ。襷を貰った位置にもよるが、
明らかに佐藤(悠)選手の方に勢いがあった。チームを11位から4位まで上げる区間新記録の区間賞だった。
上野選手は区間3位。モグス選手が奪ったトップを山梨大が守る。
4区は今回短くなったコースで、スピード勝負。中央大・小林選手が前を行く山梨大を捕らえてトップにたつ。
しかし後1キロを切ってのアクシデントを思わせる小林選手の挙動画面にドキリとさせられた。
5区は今回特に注目された区間だ。4区が短くなった分だけ長くなり、
山登りという差のつきやすいコースが、更にタイム差がつきやすい。順天大・今井選手、東海大・伊達選手、日大・下重選手等、
チームによってはエースクラスを投入した大学もある。その中でも今井選手と伊達選手に注目した。
今井選手は前回の5区でとてつもない記録を作った選手だが、昨年の夏から12月にかけて一度も競技会にでていないのだ。
故障しているとの噂もあったが5区にエントリーされて、さてどうか? との疑問符が残った。
幾ら山に適正があると言っても故障あけでは、との心配だった。そして伊達選手の走りにも注目した。
ハーフマラソンを62分台で走る学生長距離界の実力者である。結果は今井選手の走りは、凄い、の一言に尽きる。
反対に伊達選手は体調が不良だったようでまさかの区間18位のブレーキ。山は本当に難しい。
これからは山への適正ある選手を如何に見いだすかに、往路の勝負が掛かってくるのではないか。 <復路>
6区;順天大を追って、30秒差で駒沢大がスタート。この時点ではいつ前を行く順天大を駒沢大が捉えるかが焦点だった。
5連覇を狙う駒沢大には30秒差は、所謂、想定内の時間差だった。しかし山梨大に抜かれて3位に後退、
トップ順天大とは1分14秒差。まだ射程圏内ではあるが、順位を下げたことで駒沢大の首脳部は動揺したのではないか。
この時点では4位中央大までは約2分で、6位の日大までは3分14秒、まれにみる混戦模様だった。
区間賞は専修大・辰巳選手。
7区;駒沢大は焦りがあったのか、この区間は17位とまたしても順位を一つ下げる。
振り返ってみると、レース中には気づかなかったが、駒沢大はこの時点で昨年までのような流れではないのが判る。
この流れを変えられるようなエース級がいなかったという事か。順天大に約2分53秒遅れて中央が2位に上がるも、
5秒差で山梨大、44秒差で駒沢大が続き、更に28秒離れて亜細亜大が5位につける。
区間賞は法政大・柳沼選手。
8区;この区間はなんと言っても順天大の大ブレーキにつきる。首位を走っていたいた選手が、所謂、
脱水症状をおこしてチームは4位に後退。襷が繋がっただけでも順天大にとっては不幸中の幸いだった。
その間隙をついて駒沢大が初めてトップに立つ。いよいよ本命が出てきたと誰もが思った。
区間賞は中学大・杉本選手。
9区;亜細亜大の山下選手の劇走に尽きるだろう。駒沢大との差、約1分12秒を詰めて逆転。
さらに42秒の差をつける。亜細亜大優勝の大立役者だ。でもこの時点ではまだ10区で駒沢大が逆転するのでは、
との思いもあった。箱根駅伝では42秒の差は大きな差ではない。
この時点でシード権争いは、東洋大、日体大それに早稲田大のうちの1校がシードを失うとの流れだった。
10区;トップを走る選手には目に見えぬ力が働くのだろうか。それとも追いかける方に焦りをもたらすのか。
どちらもあるだろうし、選手の体調も大きく作用するだろう。駒沢大の選手が一時は10秒差にまで詰めたものの、
それから崩れて力つき、順位を5位にまで落としてしまった。入りが速すぎたのか、、、。
シード争いは早稲田大が後退して、代わりに城西大が東洋大と日体大に割り込んできた。3校のうち1校がシードを取れない、
と言う展開だったが後ろから追ってきた城西大がわずかに遅れる。
でも区間賞は城西大の高岡選手。
結果:亜細亜大、山梨大、日大、順天大、駒沢大、東海大、法政大、中央大、日体大、東洋大
以上シード権。
以下:城西大、大東大、早稲田大、國學院大、専修大、神奈川大、中央学大、明大、国士舘大
(K.K)
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