「文学横浜の会」

 新植林を読む


2014年12月10日


「新植林53号」



「巻頭言」
日本の漫画文化について言っておられるよいに思う。
子供の頃よく親に「マンガばかり見ているんじゃありません」と言われていた事が懐かしい。

随筆「いのちの周辺(上)」   野本一平

 毎回、教えられる事も多い作者の随筆。
10年程前に作者は結腸ガンの手術をしたとかで、それ以来、「死に方学」を考えているようだ。 ガンの手術した方の様々な生き様に触れて、「人間にはいろいろなタイプの人がいる」と言い、 「一人だけの幸せも、一人だけの不幸も、ほんとうはないのではないか」書いてる。

随筆「砂漠のブランコ(二)」      ケリー・晴代

 引っ越し先のニューメキシコでの馴れない生活が始まる。
自然環境の違いは無論、生活に必要な銀行口座の開設に始まり、子供の学校での様々な日本との違いに作者は戸惑う。 日本における共通の文化・慣習を前提とした社会生活に親しんでいた作者にはさぞストレスが溜まるでしょうね。 アメリカは人種のるつぼと聞いてはいますが、実体験するとなると、慣れるまでは大変だなぁ、と思いました。

創作「従兄」         シマダ・マサコ

 毎回独特な味わいの作風の作品を拝見していますが、今回は母親が姉妹のアランと従兄の物語か。
従兄は母親に捨てられた、とアランは母に聞く。 叔母とか伯母とか、人間関係がはっき理解できないかった部分もあったが、不思議な読後感だ。 語り手は親族だと思うが…。

エッセイ「おじゃまでしょうが(わが町わがテニス)」      中條喜美子

 私も30年近く、近所のテニスクラブに所属していましたが、クラブの環境は雲泥の差です。 大体、アメリカは国土が広いし、読んでいると羨ましい限りです。
それに大きなテニス大会が行われるテニスクラブやゴルフ場が近くにあるなんて最高ですね。 テニス大会が行われるメインコートと言わないまでも、サブコートにでも立ちたいものです。

小説「でけそこない(その十二〜十四)」    入江健二

 (その十二)お父さんが渡米した後の家族について書かれています。 近所付き合いの不得手なお母さんはさぞ心細かったでしょうし、それは子供達にも伝染します。 二郎もユーウツになり、級友からも「ノイローゼの猿」などと言われてしまいますが、なんとか立ち直ります。
 (その十三)帰国した直後の家族の事が書かれています。 お父さんはクエーカー教徒の男女平等を見てきた筈なのに、家にいては日本の習慣に戻って、お母さんはやはり忙しい。 この頃、二郎は反抗期でした。
 (その十四)大学受験を考えるようになった十七歳前後の二郎。厭世観とか虚無感などの言葉を理解するようになり、 人生とか生きる意味などを考えるようになる。

随筆「在米半世紀の回想録(その十七)」   井川齋

 副題にある「三つの岐路ー十七才の秋」とある、まさにその三つについて書かれています。 振り返ると、誰しもそうした岐路はあると思いますが、その時はそうは思えないのものです。

作者の三つの岐路とは@大学院の選択、A陸軍省への就職、Bトッテン教授からの誘いを断った事。 Bの選択が現在につながっているのだと思うのだが、この先はどうなるのか?

ノンフィクション「幻のマルコポーロ、パーク」  柳田煕彦

 毎回、アメリカで生活した方ならではの面白い話を書いています。今回はどんな話かと興味を持って読みました。
今回も面白かったと同時に、人種と言う事を考えさせられた。日本に居ては実感できない事でしょう。 全ての人がそうではないとしても、黒人と白人だけではなく人種問題はまだまだ続くのでしょうね。

ノンフィクション「ある国際結婚(その十二)」 清水克子

 私は学生時代の教授が言った「結婚するなら、味が合う人とするのが大事だ」との言葉を思い出す。 と同時に「外国人と結婚するには、タフでならなければいけない」とも思う。
韓国人の夫は日本に居る時は日本語を話し日本語を学ぶのに必死だったが、 アメリカに来てからは韓国人の友人もでき、どうやら韓国食品も豊富な韓国人社会の方が居心地がいいようだ。 私は、夕食も休日も息子と二人の日が多くなる。

小説「インディアン サマー(十五)」 杉田廣海

 小池智子の運転する車が黒人の車と衝突し、私たちは韓国人と間違われて険悪な空気になる。 背景に日の出の勢いの韓国系社会と黒人社会との争いがあったのだ。
私は沈着冷静に韓国人ではないと思わせて、なんとかその場は逃れた。 沈着冷静になれたのも小池智子を守ろうとの思いがあったからだ。 小池智子は車が破損してうかない表情をしている。 亭主に事故の説明をしなければならない困難を思い、私は自分の車ニッサン・マキシムを彼女にやると言う。

文芸誌 in USA 新植林
第53号・2014年12月 秋期
e-mail:shinshokurin@aol.com
homepage: http://www.shinshokurin.com
定価:7ドル+TAX


<金田>


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