「文学横浜の会」
新植林を読む
2020年 7月22日
「新植林64号」
「巻頭言」
新型コロナの世界的感染を取り上げ「歴史的な大事件のただ中にいる」と言い、
「非常時にこそ。国の本質や資質がよく見えるのかも知れない」とも言う。
そうかも知れない。
随筆「喜寿の米大陸横断貧乏旅行(前半)」 入江健二
「家族と車でアメリカ大陸を横断したい」との夢を、喜寿を迎えて計画を練り、
予定では11日間のアメリカ大陸横断旅行記。
その前半部。
まずは飛行機を乗り継いでニューヨーク・バッファローへ。そこからレンタカーで旅行は始まる。
私には知らない地名や旅先が出てきて、アメリカの広さ多様性を感じさせてくれます。
旅の途中で作者が全共闘運動の下りを思い出す部分がありました。
私もその当時は学生でしたので懐かしく、
日本では今「三島由紀夫と全共闘」というドキュメント映画が上映されていて、
旅行記の景観とは全く異なる風景なのに、何故か印象に残った。
ノンフィクション「八十才 ホームレス(五)」 柳田煕彦
台風の直撃によって私の舟を含めてホームレスの建物も流され、
洪水で流されてしまったのか、長年付き合いのあった多田さんも行方不明になってしまった。
私は舟をかりてホームレスの生活を続けるが、コロナ感染が言われだし、東京オリンピックもどうなるか分からなくなり、
私はもう日本へは来れないかもとの想いを抱きながら、アメリカに戻る事にした。
作中「人間は、楽しく生きるためには人と比べない。そうして、
どうしたら楽しく毎日が送れるのか工夫していけば、楽しみは増える。」
とあるが、作者の思いはそんなところにあるのだろうか。
小説「福島ラプソディ(七)」 中野隆一郎
カウンセリングを受け、由美は、夫・健二に対する不倫の疑いがとれる。
その後、健二と由美は、
健二の仕事で知りあった小川大輔とその婚約者絵里から、ホームレスを福島の青葉町へ移住させる「福島支援隊」の話を聞く。
健二と由美は二人の活動に同調している様子だ。
ここまでが第一部。
エッセイ「おじゃまでしょうが(動物園)」 中條喜美子
幼い頃から動物好きで、時間があれば動物園に行き動物と出会うのが楽しみだった。
子供が生まれてからも子供を連れて動物園に出掛けていた作者だが、檻の中の二羽のワシを目にして心が痛み、
我が家の庭に来る野鳥を見るにつけ、檻の中のワシの悲しみを思い、
もう動物園に行っても楽しむことはできないだろう、と思う。
小説「戦争花嫁」 シマダ・マサコ
戦後、ダンス・パーティーで知り合った米兵と結婚してアメリカに渡ったケイだが、
夫の浮気から離婚し、一人娘を抱えて、日本人経営の小さな安ホテルのマネージャーの仕事につく。
仕事中、ケイは脳梗塞で倒れるが娘の機転で一命は救われるが、その間、ホテルは中国人の経営になりケイは職を失った。
娘の住むロサンジェルスに引っ越したが、そのケイからリノへ行こうと誘われる。
ノンフィクション「私見・環境と人間(七)」 清水克子
アメリカに来て、食品業に携わるようになり、
最初に、LAのレドンドビーチ通りに小さな雑貨屋を購入した。
店を売って、大学で勉強しようと思っていたが、前夫が新しい店を見つけてきた。
アマゾンなどのネットビジネスの台頭で、
高いレントを払って商売するのは時代遅れになるかも知れない。
しかし、アメリカの保健所の権力が強い限り、食品業に関してはレントを払って商売をせざるを得ないだろう、
とも言っている。
異国で何かを行うことは言葉は無論、習慣やしきたり・制度、それに多民族ゆえのの慣習の違い等、大変だ。
随筆「在米半世紀の回想録(第二十五稿)」 井川齋
今回は井川家の斎島神社宮司に関わる祖父・米丸の代からの人間模様を、作者の想像を含めて細かく記述している。
井川家の唯一の跡取りとしての作者の思い、責任感、こだわりが随所に散見される。
作者が家を出て米国に渡ったのも、祖父・米丸の影響が少なからずあった、と思われた。
小説「インディアン サマー(二十六)」 杉田廣海
勝訴はしたが賠償金額は納得できなかった。
が兎も角、裁判は勝訴で終わって背負っていた重い荷をやっと降ろせた安堵もあった。
裁判の過程て感じていたことだが「何時ホームレスになるか知れない」との恐れから、
いざという時に泊まる事もできる「30フィートのセールボート」を購入した。
その舟を介して羅府新報社の大山さんと親しくなり、また大山さんを介して山川さんとも出会う。
文芸誌 in USA 新植林 <金田>
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