「文学横浜の会」

 新植林を読む


2022年 春期号


「新植林68号」



「巻頭言」

 ロシアのウクライナへの侵略をみて、
「平和であっても常に有事を思い、…備えに留意して、…戦わなければならない時には全力で戦う。」と言っている。
 気持は理解するが、核戦争だけは避けたい。

随筆「悪夢」                   斎藤 剛

 今でも残る「悪夢」について書かれている。
誰にもそれに似た経験はあると思うが、それが「深層心理」のようにいつまでも悪夢として蘇るとなると事は深刻だ。 作者のそれはハイジャックの現場に直面した事だ。災難としか言いようはないが本人にしか解らない恐怖だったに違いない。

随筆「母の生い立ち(一)」               クラーク・ようこ

 母の生い立ちにふれてはいるが、父との出会いや、母の十九才年下の妹「緑ちゃん」の事が書かれています。

エッセイ「おじゃまでしょうが(マウイ島への旅)」 中條喜美子

 コロナ感染が減少した時期、息子家族、息子の嫁さんの母親を交えてのマウイ島への旅行記。
安心して読め、まるで同じように旅をしている気持ちにさせてくれる。
多民族の中、それなりの苦労・軋轢はあるのだろうが、まさに人生を楽しんでいるようで羨ましい。

小説「福島ラプソディ(終章)」          中野隆一郎

 「あとがき」に
「アメリカに在住している筆者に見えるのは、ロスアンゼルスのダウンタウンやシティホールのすぐそばで路上生活している人たちだ。 ホームレスの問題は井村宏が説くように政治の問題だ」
とある。つまり登場人物「井村宏」を介した筆者の問題提起作なのだろう。

小説「昨日の公園(一)」             若林道枝

 短い文章の中に多くの人が登場しますが「波津子」の死体がまず出てきて、どうやら「実子(みつこ)」の視点で書かれているようです。
小説となっているので、波津子(精神を病んでいたようです)の死がこれからどう展開するのでしょう。

小説「ミスター・ルウ エトセトラ」        シマダ・マサコ

 小説と言うより圭子の新居を持つに至ったアメリカでの内在する人種差別の過去が書かれているように読んだ。
 圭子が一部「裕子」なっていたのは作者のミスだろう。

ノンフィクション「私見・環境と人間(十一)」   清水克子

 前夫の「死」について書いている。
親世代のお別れから、身近な人との別れへ、世の習いとは言え誰しもが必ず通る道。

フィクション「シニア楽園 第一章(三)」     柳田煕彦

 シニアの皆さん、年齢に関係なく盛んです。
どんな展開になるのか想像できませんが、同じようなシニア世代として、登場人物が生き生きとしているのがなんとも羨ましい。

文芸誌 in USA 新植林
第68号・2022年 春期
e-mail:shinshokurin@aol.com
homepage: http://www.shinshokurin.com
定価:7ドル+TAX


<金田>


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