2025 年 11 月 02 日(日曜日)

「五十音図とローマ字」ほか

岩瀨順一

歴史的かなづかい
 
現代かなづかい (?)
  
   
 
現代かなづかい
 
日本式ローマ字
aiueo
kakikukekokyakyukyo
sasisusesosyasyusyo
tatitutetotyatyutyo
naninunenonyanyunyo
hahihuhehohyahyuhyo
mamimumemomyamyumyo
yaiyueyo
rarirureroryaryuryo
waiueo
 
gagigugegogyagyugyo
zazizuzezozyazyuzyo
dadidudedodyadyudyo
babibubebobyabyubyo
papipupepopyapyupyo
音韻の表・新日本式ローマ字
aiueoyayuyo
kakikukekokyakyukyo
sasisusesosyasyusyo
ta teto
cicu cyacyucyo
naninunenonyanyunyo
hahihuhehohyahyuhyo
mamimumemomyamyumyo
rarirureroryaryuryo
wa
 
gagigugegogyagyugyo
zazizuzezozyazyuzyo
da dedo
babibubebobyabyubyo
papipupepopyapyupyo

ローマ字で日本語を書き表わすとき、短いオトは「子音 + 母音」の形で書くから、 縦横にオトを並べた表が現れる。そのような表として、五十音図と音韻の表を考えてみよう。

五十音図

現代かなづかいによる五十音図を自前で作ってみよう。

五段動詞「書く」を考える。 「書ない」「書ます」「書」「書とき」「書ば」「書う」 でカ行が決まる。

「話す」でサ行、「立つ」でタ行、「死ぬ」でナ行、「読む」でマ行、「乗る」でラ行、「思う」でワ行が決まる。

注意:「思う」だから、ワ行オ段は「を」ではなく「お」でなければならない。

「継ぐ」でガ行、「飛ぶ」でバ行がきまる。

残りは、ア行、ハ行、ヤ行、ザ行、ダ行、パ行である。

ア行は不明。

ハ行は、「り - まちり」「と - たびと」「た - おとした」 「た - はなした」「し - ながれし」を用いてバ行から決まる。 (連濁)

ヤ行も不明。「もす - もる」を「こす - こる」と比べると 「や」「え」は言えそうだ。 「はい - おはう」から「よ」が言えるか。

ザ行は、「る - おやる」「る - ぶたる」「り - ためしり」 「い - うわい」「り - いぬり」を用いてサ行から決まる。

ダ行は、「かい - こかい」「 - はな」「る - ゆうる」 「り - ひり」「り - やまり」を用いてタ行から決まる。

パ行は、「る - ひっる」「る - まっるま」「す - つっす」 「り - かわっり」「うりだす - おっりだす」を用いてハ行から決まる。

日本式ローマ字

五十音図にならって決めたローマ字が「日本式」である。 五十音図が動詞の活用・連濁を元に作ったものだから、動詞の活用・連濁が規則的になるのは当然である。

tatanai, tatimasu, tatu, tatu toki, tateba, tatô.

ただし、五十音図に重複して現れる文字があるから、完全に規則的にはならない。

omowanai, omoimasu, omou, omou toki, omoeba, omoô.

moyasu - moeru(kogasu - kogeru を参照。)

もしも「え」を ye と書くと決めれば moyasu - moyeru となり、 もしも「え」を we と書くと決めれば omowanai, omoweba となって規則的になるが、 賛同は得られまい。

zi と di, zu と du, zya と dya, zyu と dyu, zyo と dyo は標準語ではそれぞれ同じオトなので、書き分けを学ぶ必要がある。 zyosi(助詞)と dyosi(女子)、kazu(数)と kadu(下図)のように。 現代かなづかいに従うやり方もあるが、四つがなの問題が起こる。

訓令式ローマ字

日本式ローマ字において、 di du dya dyu dyo は zi zu zya zyu zyo と同じ発音だから zi zu zya zyu zyo と書く、と決めたもの。

zi zu zya zyu zyo を見て「ジ ズ ジャ ジュ ジョ」と決めつけてはいけない。

間違った批判:di, du を「ディ」「ドゥ」に使えるよう、日本式を変えたものである。

音韻の表

服部四郎「新版 音韻論と正書法―新日本式つづり方の提唱―」(1979 年、大修館書店)による。

五十音図はいったん忘れて、オトをよく聞く。 ただし、度がすぎると、カキクケコの子音はみな違う、 カの母音とマの母音は違う、となって、どうしようもなくなる。

比例式を用いる。○ : △ : □ = ● : ▲ : ■ のようなものを使う。

サ行

概略的な発音記号をもちいる。比例式

が成り立ち、右辺(ナ行)は /na/, /ni/, /nu/, /ne/, /no/ と解釈されるので、 左辺(サ行)も同じ /s/ をもちいて /sa/, /si/, /su/, /se/, /so/ となる。

ザ行

なのでザ行は /za/, /zi/, /zu/, /ze/, /zo/ となる。

ここまで、シを si と書くと決めただけで、あとは推論で進んできたことに注意されたい。

チとツ

なので右辺も同じ子音字(たとえば /c/)をもちいて書けるが、 外来語を除く日本語で使われるオトは [ʧi] と [ʦu] のみ。 チは /ci/, ツは /cu/ となる。

「タテト」が /ta/ /te/ /to/,「ダデド」が /da/ /de/ /do/ であることはよかろう。

訓令式と異なるのはチツを /ci/ /cu/ とする点のみである。 これを /ti/ /tu/ と解釈すれば訓令式と同じになる。

小泉保「日本語の正書法」(1978 年、大修館書店)では、 /c/ は /i/, /u/ の前にしかこず、/t/ は /a/, /e/, /o/ の前にしかこないことから、 /c/ = /t/ とみなし、結果として、 訓令式と同じものを音韻の表として挙げている。

/c/ ≠ /t/ の証明

/c/ = /t/ としないほうがよいことを、背理法で示す。 もしも /c/ = /t/ と仮定すると、タチツテトが /ta/ /ti/ /tu/ /te/ /to/ となる。 発音記号で書けばこれらは [ta] [ʧi] [ʦu] [te] [to] である。

なので右辺も同じ子音字 /d/ をもちいて /da/ /di/ /du/ /de/ /do/ となるが、 [ʤi] は /zi/, [ʣu] は /zu/ であったから /d/ = /z/ となる。 しかし /da/ と /za/ はダとザで異なるオトである。これは矛盾。 なぜ矛盾にいたったかというと、/c/ = /t/ と仮定したためである。 よって /c/ ≠ /t/ である。

タ行に二つの子音字が使われるので tatanai, tacimasu, tacu, tacu toki, tateba, tatô となるが、日本式、訓令式でもワ行五段活用動詞は同様であることに注意。

ここまでが、タ行に関する問題である。

残った問題、フを fu でなく hu とすることは、孤立した問題である。

新日本式ローマ字

音韻の表をそのまま、つづり字とするものである。 (ただし、音韻表記では y の代わりに j を使うのが普通である。)

タ行五段活用動詞で子音字が変わるが、 ヘボン式の tasu, tashimasu, ... とは異なり、違和感がない。

五十音図と音韻の表の比較

別々の原理から始めたので、違っていて不思議はない。 しかし、よく似ている。 サ行がどちらでも sa si su se so になるのは心強い。

どちらが“正しい”かという議論には意味がないが、 五十音図は縦横が完全に規則的ではないことに注意。

日本語のローマ字書きについて考える人は、 五十音図によくなじんでいる。 辞書をよく引く、辞書の付録の動詞の活用表に気を配る、など。 だから「タチツテト」を「カキクケコ」「サシスセソ」と同様に、 一まとまりと思いやすい。

タ行の ta ci cu te to は、 訓令式のダ行が da zi zu de do であるのと平行なので、 慣れれば変ではない。

ヘボン式と新日本式の比較

英語の近似音を用いるヘボン式論者と五十音図に従う日本式・訓令式論者との間では、 議論がかみ合わない。

新日本式はオトをよく聞いて決めるものなので、ヘボン式に対抗できる。

日本語式ローマ字(=日本式、訓令式、新日本式)とヘボン式との対立点は、 「サ行とザ行」「チ ツ チャ チュ チョ」「フ」の三つに分かれることがわかる。 対策が立てられる。

発音にもっとも忠実なつづり方は新日本式であり、ヘボン式ではない。 シは [ɕi] であって [si] でも [ʃi] でもない。 チは [ʨi], ジは [ʥi] と書かれる。

かなりの日本語を話す外国人にも、シとチを英語の shi, chi で発音している人がある。

新日本式ローマ字は「ジズ/ヂヅ」の問題を解決する

日本式
ssikazikaz
sukizuki
ttikadikad
tukiduki
tokidoki
訓令式
ssikazikaz
sukizuki
ttikazika
tukizuki
tokidokid
新日本式
ssikazikaz
sukizuki
ccikazika
cukizuki
ttokidokid

しかし、この問題を解決するようにつづり字を決めたわけではない。

カナに対するローマ字の優位

ローマ字は表に従ってつづり字を決めるから、 「カ ka」「キ ki」「マ ma」は思い出せて「ミ」が思い出せない場合、mi とつづることが推測できる。 カナでは、「か」「き」「ま」「み」の間に何ら関連がない。 「あ」「め」、「め」「ぬ」は形は似ているが、読み方は関係ない。

ローマ字は文字の数が「表の縦の大きさ」+「表の横の大きさ」で済む。約 20 である。 カナは表の中の要素の数だけ、すなわち「表の縦の大きさ」×「表の横の大きさ」だけ文字がいる。 濁音半濁音を「゛」「゜」つきの文字で表すから約 50 で済んでいるが。

旧約聖書の言語であるヘブライ語は、アルファベットは אבגדהוזחטיךכלםמןנסעףפץצקרשת の 22 + 5 字だけだが、敬遠する人が多い。 カナも、初めての人にはこれと同じように見えるはずである。

日本語のイ段は yi かも知れない

イ段の子音は拗音の子音と似ている。 だから、シは syi, などとつづるのがよいかもしれないが、 「西日 nisibi」が nyisyibyi となり、長すぎる。 「yi に当たるものを i と書いている」と考えればよいのではないか。

本来の i は ï などと書けばよい。

新日本式による五十音図

新日本式ローマ字による五十音図
aiueo
kakikukekokyakyukyo
sasisusesosyasyusyo
tacicutetocyacyucyo
naninunenonyanyunyo
hahihuhehohyahyuhyo
mamimumemomyamyumyo
yaiyueyo
rarirureroryaryuryo
waiueo
 
gagigugegogyagyugyo
zazizuzezozyazyuzyo
dazizudedozyazyuzyo
babibubebobyabyubyo
papipupepopyapyupyo

新日本式における特殊音の書き方

日本式、訓令式では、ティ、トゥは t'i, t'u のように書くのが一つの方法である。 日本式でのディ、ドゥは d'i, d'u とする。

新日本式では、t, c, d と母音字の組み合わせで使われていないものを使って、これらが自然に表せる。 次の表の上の三行を見られたい。 この ti は英語の tea などとは異なり、日本語化したオトである。

ティ tiトゥ tuテャ tyaテュ tyuテョ tyo
ツァ caツェ ceツォ co
ディ diドゥ duデャ dyaデュ dyuデョ dyo
ファ faフィ fiフェ feフォ foフャ fyaフュ fyuフョ fyo
ヴァ vaヴィ viヴ vuヴェ fvヴォ voヴャ vyaヴュ vyuヴョ vyo

下の二行は f, v との組み合わせで、特殊である。

イェ、キェ、シェ、チェ、ニェ、ヒェ、ミェ、リェ、ギェ、ジェ、ビェ、ピェは ye, kye, sye, cye, nye, hye, mye, rye, gye, zye, bye, pye と書く。 テェは tye か?

ウィ、ウェ、ウォは wi, we, wo と書く。

クァ、クィ、クェ、クォは kwa, kwi, kwe, kwo と書く。 グァ、グィ、グェ、グォは gwa, gwi, gwe, gwo と書く。 ただし、このカナ表記はうまくないと思う。 クヮ、ク、ク、クなどとするか?

スィは sï, ツィは cï, ズィは zï がよいと思う。 スュは sÿu か。

以上で、1991 年の内閣告示「外来語の表記」にある特殊音、 朝日新聞が通常使用する特殊音、はすべてカバーできている。 しかし、そうするために ci cu cya cyu cyo というつづり字を採用したのではない。

日本語のすべてのオト(撥音と促音、長音を除く)

aiueoyayuyeyowawiwewoï
 
a

i

u

e

o

ya

yu
イェ
ye

yo

wa
ウィ
wi
ウェ
we
ウォ
wo
k
ka

ki

ku

ke

ko
キャ
kya
キュ
kyu
キェ
kye
キョ
kyo
クヮ
kwa

kwi

kwe

kwo
s
sa

si

su

se

so
シャ
sya
シュ
syu
シェ
sye
ショ
syo
スヮ
swa

swi

swe

swo
スィ
t
ta
ティ
ti
トゥ
tu

te

to
テャ
tya
テュ
tyu
テェ
tye
テョ
tyo
トヮ
twa

twi

twe

two
cツァ
ca

ci

cu
ツェ
ce
ツォ
co
チャ
cya
チュ
cyu
チェ
cye
チョ
cyo
ツヮ
cwa

cwi

cwe

cwo
ツィ
n
na

ni

nu

ne

no
ニャ
nya
ニュ
nyu
ニェ
nye
ニョ
nyo
ヌヮ
nwa

nwi

nwe

nwo
h
ha

hi

hu

he

ho
ヒャ
hya
ヒュ
hyu
ヒェ
hye
ヒョ
hyo
フヮ
hwa

hwi

hwe

hwo
m
ma

mi

mu

me

mo
ミャ
mya
ミュ
myu
ミェ
mye
ミョ
myo
ムヮ
mwa

mwi

mwe

mwo
r
ra

ri

ru

re

ro
リャ
rya
リュ
ryu
リェ
rye
リョ
ryo
ルヮ
rwa

rwi

rwe

rwo
g
ga

gi

gu

ge

go
ギャ
gya
ギュ
gyu
ギェ
gye
ギョ
gyo
グヮ
gwa

gwi

gwe

gwo
z
za

zi

zu

ze

zo
ジャ
zya
ジュ
zyu
ジェ
zye
ジョ
zyo
ズヮ
zwa

zwi

zwe

zwo
ズィ
d
da
ディ
di
ドゥ
du

de

do
デャ
dya
デュ
dyu
デェ
dye
デョ
dyo
ドヮ
dwa

dwi

dwe

dwo
b
ba

bi

bu

be

bo
ビャ
bya
ビュ
byu
ビェ
bye
ビョ
byo
ブヮ
bwa

bwi

bwe

bwo
p
pa

pi

pu

pe

po
ピャ
pya
ピュ
pyu
ピェ
pye
ピョ
pyo
プヮ
pwa

pwi

pwe

pwo
fファ
fa
フィ
fi

fu
フェ
fe
フォ
fo
フャ
fya
フュ
fyu

fye
フョ
fyo
フヮ
fwa

fwi

fwe

fwo
vヴァ
va
ヴィ
vi

vu
ヴェ
ve
ヴォ
vo
ヴャ
vya
ヴュ
vyu

vye
ヴョ
vyo
ヴヮ
vwa

vwi

vwe

vwo

岩瀨順一