<冬(二)>
たか
「闘うて鷹のゑぐりし深雪なり」村越化石
たきび
「車窓擦過の坂の一つの焚火怒る」金子兜太
たけうま
「竹馬やいろはにほへとちりぢりに」久保田万太郎
たんじつ
「短日やにはかに落ちし波の音」久保田万太郎
たんばい
「探梅や枝のさきなる梅の花」高野素十
だいこん
「流れ行く大根の葉の早さかな」高浜虚子
ちどり
「山川の高波にとぶ千鳥かな」西山泊雲
ちゃのはな
「茶の花や働くこゑのちらばりて」大野林火
つめたし
「つめたさに箒捨けり松の下」太祇
つらら
「朝日かげさすや氷柱の水車」鬼貫
としのいち
「年の市線香買ひに出でばやな」芭蕉
としのくれ
「年くれぬ笠着て草鞋はきながら」芭蕉
としのよ
「故友なきこと除夜時かけて肯ふも」石田波郷
としわすれ
「紙ひとり燃ゆ忘年の山平」飯田龍太
なまこ
「憂きことを海月に語る海鼠かな」召波
なんてんのみ
「南天の実に惨たりし日を憶ふ」沢木欣一
ねぎ
「夢の世に葱を作りて寂しさよ」永田耕衣
はつゆき
「うしろより初雪降れり夜の町」前田普羅
はるちかし
「春近し時計の下に眠るかな」細見綾子
ばしょうき
「時雨忌の人居る窓のあかりかな」前田普羅
ひばち
「山川と古りたるものに火桶かな」吉田冬葉
ふぐ
「潮吐きて秤くるはす河豚のあり」清家信博
ふとん
「我が骨のゆるぶ音する蒲団かな」松瀬青々
ふゆくさ
「冬草やはしごかけ置く岡の家」乙二
ふゆこだち
「冬木立ランプ点して雑貨店」川端茅舎
ふゆごもり
「人間の海鼠となりて冬篭」寺田寅彦
ふゆざれ
「冬ざれのくちびるを吸ふ別れかな」日野草城
ふゆた
「家康公逃げ廻りたる冬田打つ」富安風生
ふゆな
「門川や冬菜洗へば用なささう」阿波野青畝
ふゆのあめ
「冬の雨崎のかたちの中に降る」篠原梵
ふゆのつき
「背高き法師にあひぬ冬の月」梅室
ふゆのはえ
「文字の上意味の上をば冬の蝿」中村草田男
ふゆのやま
「冬山やどこまでのぼる郵便夫」渡辺水巴
ふゆのよ
「冬の夜や海ねむらねば眠られず」鈴木真砂女
ふゆばれ
「冬晴れや朝かと思ふ昼寝ざめ」日野草城
ぶそんき
「謝春星まつるに花圃の花もなし」水原秋桜子
ぶり
「鰤糶るや鰤に隠るる台秤」片町一男
まんりょう
「座について庭の万両憑きにけり」阿波野青畝
みずかる
「昼の月でてゐて水の涸れにけり」久保田万太郎
みずとり
「水鳥を吹きあつめたり山おろし」蕉村
みぞれ
「筆とらず読まず机に霙きく」上村占魚
やぶこうじ
「薮柑子夢のなかにも陽が差して」桜井博道
ゆき
「雪の水車ごつとんことりもうやむか」大野林火
ゆくとし
「行く年や庇の上におく薪」一茶
ろ
「炉の番のこの子なかなか法器かな」川野静雲
わたむし
「綿虫やむらさき澄める仔牛の眼」水原秋桜子
<前 ◇
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