兼題 葛切 巣立鳥 森林浴 席題 梅雨の月 |
東人 夜は山の霊気をまとひ森林浴 葦切のそのあとさきの渡舟かな 樹に移る風を選びて巣立鳥 灯の青き湾を見下ろし梅雨の月 葛切や盆にかすかな霧吹かれ 美子 犇めきて零れ落つかに巣立つなり 酢の甕に蚊のくる頃と婆の声 くずきりに女文字なる箸袋 両生の記憶森林浴の中 巣の縁に腰細き鳥巣立つらし 武甲 葛きりや明治の気骨通す店 梅雨の月核廃絶の声細し 切り株を囲み語らふ森林浴 車中より詰襟消えて更衣 親鳥の機嫌うかがふ巣立ちかな 正 レントゲンの幽かな翳や梅雨の月 葛切りや古りし看板初代の字 研修所今はひつそり巣立鳥 森林浴乙女の肌の仄白く 青芒天下を分けし古戦場 |
利孟 葛切の盆に短き朱塗り箸 森林浴だんだん抜ける脳の棘 梅雨の月運行表示のバス動く 風を生むことを覚えて鷹巣立つ 焼肉の手に浸む匂ひ走り梅雨 千恵子 騒ぎたつ声ほど翔べず巣立鳥 鮎食はす宿に人待ち独り酌む 榾燃やす縄文住居梅雨の月 けぶるやう葛切り盛られ外は雨 地図を手に森林浴に日もすがら 希覯子 巣立鳥陶榻に降りまろびけり 森林浴月光浴と重ねけり 葛練の父祖三代の紺のれん 揺れ枝に身を任す術巣立鳥 出没は神出鬼没梅雨の月 健一 梅雨の月音なき空の峰深し 葛切りや昔の味の三軒目 巣立鳥たてる羽音に旅ごころ 森林浴帽子いろいろ弾む声 水草に下りて留まらぬ夏の蝶 |
笙 伸び上がり開ける口、口燕の子 華やいで森林浴のふたり連れ 一度二度試すしぐさの巣立鳥 子に上着着せて見送る梅雨入りかな 葛切のほのかに甘き通り抜け 白美 巣立鳥名刺の隅の顔写真 葛切が仕上げの京の料理かな 藤の花ちぎりて散らし花畳紙 倒木のしたに黄の花森林浴 花びらの数を競ひて濃紫陽花 箏円 幕間に葛きり届く桟敷席 桜桃忌陽射したゆたふ上水路 またひとつ樹の名覚えし森林浴 板塀にうぶ毛残して巣立鳥 人の輪にためらひつ居る梅雨曇 隆 森林浴違へし道を逆らはず 置き忘るノートにありぬ五月の詩 葛切や物干台に吹かれをり 曲がり出づブリキの煙突巣立ち鳥 梅雨の月思はぬ人とゆき会ひぬ |