第115回原宿句会
平成11年1月11日 新幸橋ビル

   
兼題 寒九 七福神詣 水餅


  東人
雪掻きをせねば背が伸び雪女郎
琵琶の音に包まる裸形福詣り
水餅や水になじまぬ餅の肌
床上げて寒九の水を飲みにけり
人招くさまに一揺れ寒牡丹

  正
「塞翁が馬」を座右に去年今年
神父乗る七福詣のバスツアー
ちんちんと寒九の水の茶釜かな
湯豆腐や曇り眼鏡の世紀末
水餅や浮かぶ瀬もあり時もあり

  希覯子
一卓が食卓文机賀状書く
福詣三福神は都電沿ひ
閼伽桶に寒九の水を満たしけり
文字盤は葉牡丹二色花時計
かまど神水餅の甕みそなはす

  健一
初暦知らぬ景色のめくり合ひ
冬日和絵筆にのせる日曜日
水餅の肩を寄せ合ふ瓶の底
七福神詣での印の右左
杉の香や寒九の枝の打ち下ろし

  箏円
水餅や祖母ため置きし包装紙
電線の鳩に寒九の風止まず
はけ水の波紋ゆるりと春隣
一団にボランティア居る福詣
古社に神鈴響く若の水

  千恵子
武家屋敷前に由来記風花す
水換へる度にほとびて甕の餅
福詣一つ残して暮れにけり
寒九かな橋真ん中に佇つ鴉
雪の橋行く人もなく歳の暮

  利孟
着膨れの触れて届かぬ小銭かな
銭湯の煙動かぬ寒九かな
宝舟加へ八社の福詣で
水餅や鉈で小割にする点け木
人の目を盗みて朝の嫁が君

  美子
磨り減りし神様の顔福詣
水餅の瓶定位置に伏せしまま
仕付け解く形見の結城松の内
太き罅木碑に入りて年明ける
誰そ訪ひし寒九の墓の白ぶかし

  武甲
寒波来るサーカス小屋の荷駄の列
手で探る目覚まし時計寒の内
冬耕や携帯ラジオの流行歌
七福神詣りて印す母の古希
水餅や父の手艶の残る杵

  笙
中天に阻むものなき寒の月
水餅をチーズであやす昼の膳
七福神願ひの筋がからみ合ふ
宿酔や寒九の水のありがたき
大福茶満たす遺愛の筒茶碗

  白美
文字盤のガラスを拭きて冬うらら
道迷ひ迷ひて元へ福詣で
雑草の生ひし小坪に寒九の雨
水餅をあげて賑ひとりもどす
水餅や給料日まであと十日

  法弘
蒟蒻の茹だる匂ひや寒九寺
水餅の水のきしきし鳴る夜かな
独楽の紐巻き余りしは掌に巻いて
受験校四つと決めて草石蚕噛む
玉ノ井へ寄ろか止さうか福詣

  健次
発熱にこれ幸ひと寝正月
どんど焼き選んで燃やすかざりかな
七福神詣でのあとの向島
色白き指にすくはる水の餅
つるりんと寒の朝や道凍る