第9回 原宿句会
平成3年7月27・8日 成東合宿・於戸恒邸
第一句会
18時締め切り 嘱目5句以上10句
東人 紅零す檜扇水仙丈伸びて 鰯雲砂に插されしカーミラー 砂蹴れば浜白みゆく土用かな 日照雨止む鉄砲百合の地に這ひて 泳ぐ子の股間を窄め戻りけり 瓜揉みを食べて楽しき上総かな 白粉花を垣根造りに浜通り 夕凪や人消えてゐる監視台 満ち潮や一度で濡れぬ夏の砂 隣家の会話飛び込む草いきれ 利孟 農薬の警戒旗や萱の花 白鷺のあふられ流れ芋嵐 尻ばかり白き子駆けて夏の海 夕暮れを待ちてかなぶん動かざる 成東の潮騒の庵松宵草 待宵草外乗の馬草を食む 昼顔の群れ渋滞の列続く 夏の百舌松食い虫の防砂林 白美 砂に寝て風の音聞く夏の果て はまなすや男四十で砂遊び 姥百合を標に山路降り進む 待宵草海鳴りを背に小蜂飛ぶ 鬼百合やバス乗り継ぎて祖父の家 京子 風紋の浜にはためく紅きもの そこべにの色ねぶたげに風渡る文 新盆の亡妻守る人の声ひくく 小坊主の剃りあと青し沙羅の寺 青田道朱を点じたるアヤメグサ 祇園会のコンチキ部屋に忍び入り |
白美 天空に花火舞い散り海光る 蚊遣継ぎ吾子の上掛引き直す 泡だけと麦酒欲しがるニキビ面 遠雷や強き心の罪糺す 東人 潮騒の浜明りして遠花火 乾杯のまだ始まらぬ麦酒かな 遠雷や真に迫れぬ声の模写 子の点ける埃のなかの蚊遣りかな 京子 蚊いぶしの香りほのかに母の家 雷と海鳴りカノン九十九里 星一つさやけく明かし遠き雷 駅毎にビアガーデンに灯のはいる 利孟 雷鳴の遅れ火柱走りたり 擬古文の活字見ずらし蚊遣り燃ゆ 異人らに娘の自慢ビール注ぐ 杖一閃「喚声前へ」雷起こる |
東人 凪ぐ浜の夏の終りや馬蹄跡 かさかさと海の砂掘る蜘蛛の脚 我が貌を睨み逸れゆく秋茜 ひとり来て土用太郎の海寒し 朝凪や馬蹄の跡の忘れ潮 峯雲や渚に佇ちし監視員 凌霄花や高校生の夜の会話 利孟 黒揚羽通ふ道あり砂防林 遊泳の浜貝採りの貝掻ける 夏波の引きてたちまち貝もぐる フィリピノの水着新し寄り添へる 天空の揚羽は陸へ驀地に 昨日より高く飛ぶなり秋茜 白美 天道虫吾れの腕にて空みあぐ 竹帚軒先に掛け炎天下 青赤の飾りキラキラ花火屑 砂浜の白く磨かれ夏の潮 猫じゃらし髪に二挿し雨を待つ 京子 朝焼けや薄紅ひの月抱きて 朝曇り浜の遠みに影二つ 短夜を語り明かせし四畳半 朝曇り雲居の涯は海に入る 油蝉身をつくしてや夏深し 旱道かいづかいぶき緑濃く 隣家の屋根樹々越しの遠花火 |
東人 聟殿のそろりと寝入る竹婦人 何事も起きぬ花瓶の鳥兜 洋館の開かずの窓や合歓の花 昼顔や浜のをとこは風を知り 白美 風止んで漁師足投げ午睡かな 洋館の少女笑いてラムネ飲む 夢めざめひとり寝淋し竹婦人 鳥立てど何事もなし蓮の花 京子 何事もお任せどっくり夏料理 洋館の旧い冷房かん高く 古すだれ漏れくる風もなまぬるく 熱帯夜肌に涼しき竹婦人 利孟 石造り床涼しくて竹婦人 白南風の源の島なる黒つぐみ 何事もなく風抜ける端居かな 凌霄の花洋館の白き壁 |