142回原宿句会
平成13年4月5日

   


  美穂子
掌に捨蚕の嵩の軽さかな
茶摘女の指にリズムの休符無く
漆黒のピアノの纏ふ花の冷え
山吹の黄の陣取りし無人駅
散り急ぐ母の忌日の夕桜

  千恵子
折鶴の影置く膳や春の宿
おひつ干す庭に山吹明りかな
お蚕を飼ひて昼なほ眠き村
布繩に色のいろいろ茶摘籠

  武甲
逃げ足の早き聴衆花の雨
溶岩に埋もれし砂漠島桜
山吹の髄を知りたる子の眼
息抜きて富士山を見る茶摘かな

  翠月
春寒や黒き船体潮すべる
お喋りのまま姉妹の茶摘かな
部屋中に葉を食む音や蚕棚
慰めを言ひつつ婆の捨蚕焼く

  正
山門を出でて坊主も茶摘唄
茜屋てふ珈琲屋に待つ春時雨
桜咲く丘の牧場に駒放つ
子を生さぬ女一人や蚕飼ふ

  白美
ここにまで高層アパート茶摘なほ
吊したる木偶の後も山桜
山吹や煎餅裏の狐色

  箏円
山吹にとらへられたり杣の道
山吹の叢より起ちし翅あるもの
さはさはと湛ふ息吹きや春蚕棚

  和博
山吹に踏石とられ道泥濘る
夕日影首をもたげし蚕かな

  明
山吹に道塞がれて廻り道