森利孟栃木県へ栄転祝賀句会 兼題 避暑 かき氷 熱帯魚 席題 蝉 |
東 人 パンドラの箱ひらくごと蝉のこゑ 少年は風に手を振り避暑の駅 ストローでつくる峰谷かき氷 鰭立てて花の盛りの熱帯魚 利 孟 避暑小屋を開け玄関の点検表 空蝉や手足動かぬ手術台 浮き沈みして瓶詰めの熱帯魚 かき屑の透き積りたる氷水 梅 艸 手枕や午睡一刻釈迦の避暑 静謐に夜あらしめて熱帯魚 アクリルの千尋の海や熱帯魚 氷水いちごの赤の赤きかな 希 覯 子 空蝉や踏み出す構へそのままに 避暑の宿生ひ立ち惹かる誓子傳 水槽を叩き闘魚に物を言ふ 凹凸の容器に馴染む削氷 |
英 樹 避暑に来て買い出し班と決まりけり 乗り物の図鑑小脇に氷水 餌少し控へ目にして熱帯魚 根元まで舌赤く染め氷水 京 子 避暑の宿ジャズセッションの遠音かな 蝉時雨五線の向うに鳴き止まず 熱帯魚群れつ離れつ尾はゆらり 夏氷白きを惜しみかき落とす 法 弘 避暑地発サナトリウム行きのバス 情夫来ぬ夜は熱帯魚に指噛ます 氷水不幸めかして嘘一つ 蝉の穴真言立川流髑髏 千 恵 子 匙を刺す場所の思案や氷水 寝呆け蝉一声鳴いて落ちにけり 闇に浮く水槽グッピー青光る どの窓も開け放たれて避暑の宿 |
白 美 避暑客の指這ふ駅の時刻表 バルコニー伸ばす背中に蝉時雨 氷水天辺掻きし錫の匙 白光に身を沈めたる熱帯魚 美 子 蝉の樹に隣合はせの寝覚めかな 大皿に山と書きたる避暑の客 氷水啜り整ふ後頭部 切っ先の鋭き動き熱帯魚 渡 海 初蝉の風の間に間にひそかなる 粗粒の数だけ光りかき氷 狭かれど天敵はなし熱帯魚 一年の荒れをあらため避暑の家 浄 避暑期去り鎖引き摺る迷ひ犬 氷水一匙舐めて笑み溢る 熱帯魚暑さ寒さを知らんかな |
萩 宏 物言はぬぬけ殻つつむ蝉しぐれ 主居て空気生き生き夏館 デパートの屋上賑す熱帯魚 氷水額にあてて反省す |