兼題 春月 桜草 雁風呂 席題 春炬燵 |
東 人 春月や海へせり出す能舞台 焚き口の藻塩の匂ひ雁供養 丈揃ふまでを咲き継ぎ桜草 遠近の眼鏡の合はず春炬燵 風に黒髪を引かれて春の宵 千 恵 子 焚き口で聞く湯加減や雁供養 産近き牛の瞳や春の月 鼻にくる煎じ薬や春炬燵 雛に留守託して三日の湯治かな 引越の子の膝にある桜草 利 孟 雁供養さめて味濃き煮ころがし あれこれと見合ひの写真春炬燵 啓蟄や床屋軒なみ定休日 バルーンに吹き込む炎桜草 春月をうかがひジェットコースター 法 弘 春炬燵このごろ妻の太り肉 雁風呂や風にちぎるるよされ節 くしやくしやに泣いてゆがんで春の月 桜草や意中の人とは違ふ人 春うれひ腕を組んでは回しては |
希 覯 子 書架にある縦書の医書春炬燵 雁風呂と聞きて泊りの客となる 雁供養ホ句の徒として参じけり 花時計文字盤なべて桜草 名にし負ふ開かずの踏切春の月 香 里 桜草転入届け出しにけり 新築の庭のかたすみ桜草 祖父母とは方言にて春炬燵 キヨスクでのど飴もとめ春の月 正 追分の流るる浜辺雁供養 風光る日は外に出よ乳母車 影法師やがて重なり春の月 文楽の頭振はす春炬燵 逞しく生きる姉妹桜草 笙 決めかねてゆるむ歩みに春の月 雁風呂や細き煙の絶えもせず 一鍬の盛る土揃ふ春田打 春炬燵緩くともして鳥を聴く 這うてゆく吾子のめあての桜草 |
白 美 目覚めても明るき部屋の春炬燵 春の月ビルは矩形に蒼みたる 上下ある本のかたわら桜草 干鱈をさきて語らふ幼き日 雁風呂や北をめがけて水鉄砲 萩 宏 特捜の検事部屋にも春の月 父さんの便り懐かし雁の風呂 押し倒し女の背に桜草 陸奥の古墳蘇生し春の月 健 一 雁風呂や束の間悲し海の音 足のみを入れうたた寝の春炬燵 宵雨の背戸に色濃し桜草 春寒し行き交ふ船の遠汽笛 春の月上りて雲をまとひ行き 義 紀 足先の触れて恥づかし春炬燵 啓蟄や銀座地下街徘徊し 親潮のうねり大きく雁供養 春の月肩寄せ歩む二人かな 長椅子に眠れる猫や桜草 |