第９９回原宿句会
平成９年９月２７・８日（身延山と雨畑硯）

　 　

秋の山梨吟行 甲府リゾートホテル泊

東人 風乾く盆地に釣瓶落としかな 露けしや城に蛸石振袖石 瓶詰めの漢方薬草秋灯 片鱗に脂の匂ひの新松子 堰落ちてしばらく澱む秋の水 　 千恵子 近道は墓抜ける道曼珠沙華 杉の実のよく落ちる日や墓乾く 諡に読めぬ一字や紫苑咲く みそ萩やシートで覆ふ朽水車 乳鋲も武田の菱や初紅葉 　 利孟 天高し四方を固めて甲斐の山 信玄の墓所の石組水澄めり 前山の畑のありかの鳥威し 迷い込む辻木犀の香を溜めて 足でこねワインの葡萄仕込まるる 　 白美 風一字書かれし幟秋暑し 実ざくろや眼は金箔の不動尊 爽やかや欄間に雲と武田菱 影もまたアラベスク柄彼岸花 秋深しグラスの縁の飾り塩

紫芳 秋の蚊の一日旅する我が書斎 ままならぬ句会その後の秋時雨 寝入りばな鳴きはじめたりちちろ虫 忙中閑色気食気の秋深し 稲藁も人手借りれば礼儀よし 　 杜子 ふくいくと松茸飯の噴かれをり 秋風に顔をさらして露天の湯 山畑に光を散らし鳥威し 爽やかや琉球ワインをいただいて 金木犀屋根の瓦に武田菱 　 南朱 廃屋のカンナ燃え立つ澎湖島 晩秋の富士にそえたる稲穂かな 稲刈りや農夫の上のとんぼかな 茘枝のかいどうを行く福建路 濁流の緑映えたり武夷山路 　 一正 すがりたき思ひはつきぬ墓参り 鉢巻の汗まみれなり応援歌 富士川に秋風くねる散歩道 富士川に高瀬舟引く豊の秋 落ち鮎に枯葉ちりぬる秋の風

秀芳 長き夜の頭をひねる俳句かな 総身に汗の飛び散る祭かな 晴れた日に小道歩いて栗拾い 名月の濡れて隠れてススキの穂 　 元一郎 食べ過ぎといふ診断やちちろ鳴く 稔り田や蔵のにぎはふ日のまぢか