第326回四天句会
平成28年10月13日

   
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兼題 稲妻 今年米 温め酒
   秋の暮れ
席題 星月夜




  利孟
鉄瓶の鳴りのひそやか温め酒
吾が星は西へ傾き星月夜
秋の暮通過列車のまた往きて
研ぎ汁の真白き濁り今年米
体育の日や真二つに薪割れて
残業の灯の煌煌と稲光

  武甲
焼き味噌の焦げた木べらや温め酒
炊きたてに生みたて玉子今年米
星月夜社史編さんの執務室
逆さ富士風が崩して秋の暮
稲妻や天空に浮く山の城

  雨竜
白寿てふ猪口一杯の温め酒
秋の暮飛鳥の寺の蓮華文
稲光二見浦に夫婦岩
新米とシール大きく積み上げて
星月夜鎌倉道を駆せゆけば

  あやの
千本の鳥居に釣瓶落しかな
稲妻や石膏像にさす血の気
天日干してふ自家用の今年米
返信に無事の一言星月夜
秋の暮伏見稲荷の人の波
妻偲ぶ問はず語りと温め酒

  恵一
海臨む古代劇場星月夜
ナウマン象ひねもす追ひて秋の暮
稲妻や雲の連なるエーゲ海
新米だぞと雀に撒けり一つかみ
帰郷して父と飲みをり温め酒

  義春
腹の児が蹴ると一言稻びかり
曼珠沙華広野に百万本の赤
悪友の快癒のたより温め酒
お供への湯気の新米阿弥陀仏
うしみつの灯のなき街や星月夜
坪庭の褪せた一輪秋の暮

  比呂志
新米の羽釜にガスの水加減
穏やかに胃の腑に落ちて温め酒
庭園の空気艶めき秋の暮
稲妻や電気放たれ停電す

  翠江
艶香り口一杯に今年米
星月夜銀糸を紡ぐ波頭
稲妻にへそ取られんと五円玉
縁側で誰ぞ偲か温め酒
独坐して思ひあふるる秋の暮