第28回 平成10年9月25日
アーバンしもつけ
秋高し土偶の乳首小豆ほど
秋蝶や棒高跳びの棒しなる
木曽路かな茶屋名物の栗おこは
籠に盛る水引草や婚約す
堀江良人
それぞれに穂の向き違へ水引草
菜園の中に逸れて秋桜
田の中の墓を囲ひて曼珠沙華
竜胆の花に染まりし那須の原
三澤郁子
水引や父祖より継げる蔵屋敷
穂芒の波をさらひて風離る
植込みの中音たてて秋雀
破れ蛇籠水漬きて秋の流れかな
とこゐ憲巳
石踏みて上がる露天湯水引草
雲のなき空の深さの秋の沼
霧の中抜け船頭の唄ひ出す
小魚の音無く跳ねて露しとど
間のびした乳牛の声初嵐
出動の電話のベルや秋出水
容赦なき雨に名残の一葉かな
水引の折れたる先に残す紅
へんみともこ
秋袷背に縫ひ取りの飾り紋
つゆ草の蕊雨粒をたくはへて
ちちろ虫夜警の明り掠めけり
吊橋の賑はひ抜けて水引草
池田孝明
秋の日の射して添寝を終りけり
クレヨンの孫の絵手紙敬老日
薄日射し添の髪に秋の風
川村清二
こほろぎの音色枕に夜もすがら
合掌の屋根の支へる天高し
秋の日に黄金波打つ稲田かな
可憐かな水引の花畦に咲き
塩加減母に任せて栗ごはん
店番の手持ち無沙汰や秋祭り
大風やさらりと高き水引草
塩味のまさる姑のおはぎかな
永松邦文
那須岳の風に抗ひ秋の蝶
天高し少し温めの露天風呂
水害の町遅咲きの吾亦紅
水引の花揺らめいて山やさし
田中鴻
水引の花を供へて猫の墓
仏壇に水引の花活けてあり
知らぬ間に花の出てきて曼珠沙華
畦道をしつかと塞ぎ彼岸花