第78回 平成14年12月15日


比呂
木枯に子を呼ぶ声の転げゆく
流木の巧みに組まれ浜焚火
口下手の竿師年期の膝毛布
織りかけの機に布掛け煤払ひ

ともこ
息白し路地を自在に一輪車
煤逃げといひて重たき背なの孫
青空につんつん尖る冬芽かな
膝掛に木屑を散らし木地師かな
針外し冬の支度の花時計

良人
見習ひの僧の帽子や煤払ひ
初雪のしきり人無き官庁街
観劇の膝にマフラー二つ折り
マフラーを二重に巻いて待つ電車
雪深き湯宿はしごの群雀


一構
雪霏霏と土鍋の香り家に満つ
窓に風巻き男体山に冬の虹
降る雪や犬を狂はす野生の血
三日目の味よくしみるおでんかな

芳子
寒菊や夫の聞きゐる二胡の曲
膝掛けのぬくみ娘と分け合ひて
煤払すべて差配の父の声
人混みの熱気押し寄せ酉の市

栄機
膝掛けや受付嬢の細き脚
声を掛け母の遺影の煤拭ふ
小春日やマラソンランナー溶けてゆく
熱燗や遠く汽笛の音しみる



アルバムを孫の持ち出す煤払ひ
煤払ひまづは箒に柄を接いで
赤白に更紗山茶花庭埋む
針仕事してゐる母の膝毛布

幸一
初雪やなほ静かなる秘湯の宿
煤箒片手で支へ取る電話
新聞紙膝掛けにして朝の市
彷徨へる猫の鳴き声霙降る

昭雄
陽の温み残りし毛布畳けり
煤払済み自転車に油注す
踏台の八面六臂煤払ひ




郁子
膝掛けを我が物顔にペルシャ猫
観音堂の戸を皆はづし煤おとし
掃くほどに散るを急ぎて大銀杏

清子
微動だにせぬ衛兵に冬の靄
湯気満つる夜市の屋台牡丹鍋
職退きし夫の出番の煤払ひ

敬子
膝掛けを取り店番の客迎ふ
いろはより習ふパソコン年の暮
明王の震へる剣煤払ひ

登美子
自転車のギクシャクと鳴く冬の朝
売られ行く牛に師走の大西日
赤青の大きな格子膝毛布

信子
初雪をのせ南天のしなふかな
一条の朝日仏間に深雪晴
膝掛けのまま残業の椅子寄せる


ミヨ
神殿の太鼓の一打冷え走る
煤籠りまづ神棚を家に入れ
長屋門ばかりが残りならい風

利孟
菜を山と積みてオンマの冬支度
神棚を灯して終る煤拭ひ
パソコンに問はるるID膝毛布