宗匠の一言
吾亦紅売地に倒る区画札 美代子 「売り地札埋もれし区画」が原句ですが吾亦紅に埋もれたという風に仲々読めないのでは 蝦夷富士の裾野男爵薯の花 敬子 「蝦夷富士や男爵薯の花盛り」より、見渡す限りの薯の花が見えませんか 遷都論消えて那須野の夕蜩 昭雄 「遷都無くなるや・・」という表現は、遷都が現実のものだったように響きますが 柿色の益子の壺や吾亦紅 大垣 「野のままに益子の壺に」では、野のままが吾亦紅にかかると読むのは難しい、上句は益子の壺に使う 蜩や隠し湯の湯を溢れしむ 敬子 「一人隠し湯溢れしむ」でしたが、隠し湯というのは湯より、温泉場、そして一人はある程度分かる 蜩や夫の代にて閉づ老舗 美代子 「老舗廃す夫背の弛む」挨拶句でご苦労さんと言うとき、そう表現したら、万感の思いは伝わらない、紋切り型の挨拶となります 晩学の指もて洗ふ端渓硯 一構 ◎ 吾亦紅無人売り場に両替機 一構 ○「無人売り場にコインかな」では、台に大根など並べて金を入れていく無人売り場とは分からない、かえってポルノビデオを売っていたりする自販機コーナーのイメージの方が面白い 県境の山路の橋や吾亦紅 信子 ○県境俳句は仲々難しいのですよ、これはよくできた 拍子木の一打の高く祭果つ 信子 ○締めの一打としていたのですが、それでは締めで終わると重なりますので工夫したいところ 国宝の塔にかなかなしぐれかな 郁子 ○ちょっと寂しいけどすなおに景が浮かびます、かなかなかなも悪くありません 蜩や廃校囲む杉木立 登美子 ○廃校取り巻く」の中8は解消しておくべきです 送り火や将棋の駒の墓灯す 鴻 ○墓のあり」あり、無し、などいわずともあるのが俳句です、墓がどうかをもっと語るべし 手付かずの絣一反竹の春 清子 ◎母の箪笥の整理をしていたら、まだ反物のままの絣が出てきた、どんな思いでしまっていたのかなど・・ 敗戦日天水桶に蓮育つ 比呂 赤き蓮とかしたほうが良いカモネ 襲ひ来る闇にごろ寝の街残暑 清子 あっという間に分からなくなる時事句ですが、当然のように前書きが必要です 風鈴を揺らせる風に日の匂ひ 幸一 風に日の匂ひ」はまあ、よくありますモンね 地模様の宝尽しや秋袷 ともこ きれいですけど、秋袷と宝尽くしがどう響くか、ちょっと弱い 背負籠のまとふ夕陽や吾亦紅 敬子 背負い籠の夕陽まとひてとだらだら続けずに、切れを入れて対照させること 土用干し父の残しし剣道着 敬子 父を偲びし」ではベタ付きですね、でも、もうこの年代になったとき亡くなった父、母をあからさまに表現してもいかがなものでしょうか 畦道の葉裏透かして夕蛍 幸一 月並みです 蜩の渓に鳴き満ち竿納み 幸一 鳴き満ちる蜩背なに」では鳴き満ちていない、背中から鳴いているのです ひぐらしの声のつながる那須郡 郁子 那須野でなく、郡としたのががよいですね 廃線の枕木の間の吾亦紅 郁子 廃線の駅そのままに」ではイメージが収斂しない 人の出を見張りて路地の吾亦紅 憲巳 犯人(ホシ)だったのですが、ちょっと吾亦紅の擬人化と言い特殊でした 片蔭やピエタのごとく子と坐して 比呂 ピエタの形に石に坐すが、イエスを抱くマリアに見えるか? 蜩の鳴き継ぎ那須野雨上がる 昭雄 蜩と雨上がり、配合が月並みなのですが、那須野の雨が蜩の声の広がりとともに上がって行く 夕映えの光集めて吾亦紅 幸一 吾亦紅の赤をこんな風に見たわけですね、まずまずでしょう ============ 宗匠の一言これで終り == |